影から影へ移動していくユニークなゲーム『SCHiM』はゲームプレイと物語で「子供の頃の気持ち」を思い出させる作品だった。プレイ後には思わず「影だけ」を踏んで歩きたくなる
子供の頃、"影だけしか踏んではいけない”遊びや、道などにある白線、段差のみを踏んで移動する遊びをした経験があるだろう。 【この記事に関連するほかの画像を見る】 なんてことない街中で妄想を膨らませ、景色が輝いて見えはじめる。しかし、大人になってしまえば、そういった遊び、想像力は忘れてしまうものである。 そんな遊びや想像力を、思い出させてくれる作品が『SCHiM』というユニークなゲームだ。 『SCHiM』は「影だけしか踏んではいけない遊び」のように、影から影へと移動するシンプルなアクションゲーム。抑制された色と線で描かれる和やかな雰囲気が特徴で、そのユニークなゲーム性から発売前からXなどのSNSで話題を呼んでいた。 実際に本作をプレイして気付かされるのは、「影を伝って移動する」というユニークなアイデアが、触っていて楽しい直感的な操作、あらゆる影に移動できる自由度でゲーム化されていることだ。 これにより本作は、まさに「子供の頃の遊びや想像力」の魅力を、大人になったプレイヤーにも思い出させてくれるのだ。 本作をプレイした後は、思わず影や、横断歩道の白線だけを踏んで移動したくなるだろう。本記事では、そんな、「子供の頃の気持ちや想像力」を思い起こさせる『SCHiM』の魅力をプレイレポートとして紹介する。 文/fab 編集/りつこ ■「子供の頃に1度はやったことがある遊び」がビデオゲームになって帰ってきた 『SCHiM』は影から影へぴょんぴょん飛び跳ね移動する不思議な存在「スキム」として冒険するアクションゲームだ。プレイヤーはとある理由で持ち主から離れてしまった「スキム」を操作し、持ち主の元への帰還を目指していく。 読者の皆さんも、子供の頃に"影から影へ移動する遊び"を楽しんだ経験があるのではないだろうか。まさに本作は、そういった遊びのアイデアをビデオゲーム化したような作品となっている。 作中では影ならばなんでもジャンプして飛び込むことができ、街に存在するベンチの影や、動いてる人や車、動物の影にも飛び込むことが可能だ。 影から影に移動するアクションはかなり直感的に楽しめるため、筆者は気づけば、童心に帰ったようにスキムをぴょんぴょんと飛び跳ねさせていた。 また、本作では移動中に影の外へ飛び出てしまうと、少し前のチェックポイントまで戻されてしまう。しかし、戻されるまでに少しだけ猶予時間があり、一度だけなら影の外でもジャンプをすることができる。なので、いわゆる“ゴリ押し”のような緩さも兼ね備えている。 さらに、各ステージではタイムリミットのような概念は存在しないため、ゆったりとプレイすることが可能だ。 厳格に制限されていないゲームの仕様は、子供の頃の自由な遊びを彷彿とさせる。本作をプレイすれば、ノスタルジックな雰囲気を感じながら、リラックスした時間を堪能できるだろう。 ■“影を伝って移動する”ユニークなアイデアを「あらゆる影に移動できる」自由度でゲーム化。歯ごたえのあるパズル要素で「大人」もバッチリ楽しめる 前述のとおり、本作は影から影へぴょんぴょん飛び跳ねるというシンプルなゲームだ。しかし、作中では大人でも楽しめるような設計が施されており、「影から影へ飛び移る」というアイデアを丁寧にゲーム化している印象を覚えた。 たとえば、ゲーム内には影にジャンプする以外のアクションとして、「インタラクト」というシステムが存在する。ボタンを押すことでスキムが現在潜っている影にインタラクトをすることができ、影の本体に影響を与えられるというシステムだ。 道に生えている木の影にインタラクトすれば木が揺れるし、ベンチの影にインタラクトすれば、ベンチがガタガタと音を鳴らす。ベンチに座っている人がいれば、その人が驚いて声をあげるなど、対象に応じて反応が異なる。 この「インタラクト」システムは楽しい演出を生み出すだけでなく、パズル要素としてゲームの遊びごたえを高めている。というのも、ゲーム内には「インタラクト」システムを駆使しなければ攻略できないステージが存在するからだ。 信号機に「インタラクト」して車を通行可能にし、その車の影を伝って移動したり、フォークリフトに「インタラクト」してフォークの部分を伸ばし、影を延長させたりと、作中の“影”の使い方は多岐にわたる。 さらに、本作はステージごとに朝・昼・夜と時間によってフィールドの光の描写が変化する。作中では基本的に色数を抑えたアートワークが特徴で、ステージを進むとその色使いが変化し、雰囲気もガラッと変わる。 また、夜にはライトを点灯させて「自分で光と影を作り出す」ギミックが登場するなど、時間帯によって異なるアクションや攻略方法が求められる。こういった要素により、本作では一筋縄ではいかない、試行錯誤をするパズルゲームらしい楽しさも充分に味わえるだろう。 とはいえ、作中には目的地を示してくれるナビのような機能も搭載されており、広いステージなどで「どこに行けばよいのか分からなくなる」といった問題は起こらない。親切な設計になっているため、パズルや攻略の難度を恐れる必要は無いだろう。 本作は「インタラクト」システムや日時による攻略方法の変化により、「簡単すぎない絶妙なバランス」を獲得している。 こういった試みにより、影を伝って移動するという「子供の頃に楽しんだ遊び」を、子供だけでなく“大人”も改めて楽しむことができるのだ。童心に返るための丁寧な作り込みは、本作の大きな魅力のひとつと言えるだろう。 ■“子供”から“大人”へ。ゲームプレイと物語が「思い出させる」本作からのメッセージ そもそも「スキム」とは、ストアページによると、オランダ語で「精霊のようなもの」や「目の端に見えるチラチラしたようなもの」などを意味する。スキムたちはあらゆる影に存在していて、世界中のすべてのものが1つのスキムを持っているという。実際にゲーム本編では、自分以外のスキムが顔をのぞかせているシーンも確認することができる。 しかし、子供の頃にはスキムの存在が見えていても、大人になるにつれてその存在が見えなくなってしまうようだ。 本作では、キャラクター同士の会話やセリフが存在せず、全て身振り手振りのジェスチャーのような形式で表現される。 そういった表現で描かれる物語の冒頭では、プレイヤーが操作するスキムの持ち主である少年が、「スキム」の存在を認識している姿が描かれている。ところが、ゲームが進行し少年が大人になり、社会の波に揉まれることで「スキム」の存在を忘れてしまい、認識することができなくなってしまう。 物語の中では、学業に励む様子や友人や恋人との別れ、さらには失業など、少年の人生が描かれている。人間が成長する過程で訪れる苦難に直面する姿に、筆者はつい自分の姿を重ね、共感してしまった。 本作ではプレイヤーがスキムとなり、離れ離れになった持ち主の少年に戻るべく奮闘する。物語を踏まえてこの冒険に目を向けると、本作の冒険は、自分のことを忘れてしまった少年に「自分の存在を思い出させようとする」様を描いていると解釈できる。 そして、本作のゲームプレイは、「影を伝って移動する」という“子供の頃の遊びや想像力”を、大人になったプレイヤーでも味わえるようになっている。実際に筆者は大人になるにつれて忘れていた「スキム」的な想像力や遊びの楽しさを思い出させられた。 つまり、本作は物語とゲームプレイの双方で、プレイヤーに子供心や「子供の頃の想像力」を思い出させてくれるのだ。ゲームによるプレイヤーの体験と物語が噛み合った表現は、作中で描かれるテーマを力強く届けてくれることだろう。 スキムは無事に元の持ち主へと帰ることができるのか。物語の結末はぜひ本作をプレイして確かめてほしい。そして本作を介して、あの頃に見えていたかもしれない「スキム」が、今でも常に自分のことを見守ってくれていることを思い出して頂きたい。 アクションパズルゲーム『SCHiM - スキム -』はPLAYISMより7月18日(木)よりNintendo Switch、PS5、PC(Steam)で発売予定だ。
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