「選手たちが選手を選ぶ…その人の人生にも関わってくる」注目を集める堀越の“主体性”。主将、監督が意義と覚悟を示す【選手権】
「何度も繰り返しているので、違和感はほぼない」
[高校選手権1回戦]堀越(東京A)2-0 今治東(愛媛)/12月29日/駒沢 堀越は12月29日、選手権の初戦で今治東と対戦。相手が退場者を出した後半に森奏と伊藤蒼太がゴールを奪い、2-0の快勝を収めた。 【厳選ショット】森奏と伊藤蒼太の得点で見事勝利!史上初のベスト4に向け好スタート!|選手権1回戦 堀越2-0今治東 29大会ぶりに出場した3年前の8強を超えるべく、幸先の良いスタートを切った堀越は、佐藤実監督のもと、選手主体のボトムアップ方式を導入。実際、この日もキャプテンの中村健太が、選手交代やハーフタイムの指示を送る姿が記者席から見えた。 試合後、佐藤監督に注目を集めている取り組みについて尋ねると、「ずっとやっていることなので、全国大会だから、都大会だからっていうのはない」と力強く断言。その意義を改めて語ってくれた。 「選手が肌感で感じているものをピッチで表現することは、もうずっとやっているので、違和感はありません。足をつっていればすぐに代えちゃいますし。それが(中心選手の)髙谷(遼太)だろうと仲谷(俊)だろうと、もう使えないと思ったらすぐ代えますし、当然、自分(中村)も代わるので、そこは切るカードが早い。全然引っ張らないので」 指揮官はまた「ベンチから見ている指導者の判断よりも早い?」という問いに、こう答えた。 「基本的にそこはもう分業して、最初のところで打ち合わせをしているので。何分経ったらこっちとか、ちょっとこっちが上手くいかなかったらこっちとかのシミュレーションを何度も何度も繰り返しているので、代わることに対して違和感はほぼないですね」
「近所の人たちとよく散歩に行くんですよ」
では一方で、ピッチ上の監督を担う中村は、どう感じているのか。「このチームでキャプテンをやるのはすごく大変だと思うが?」という投げかけに「そうです、だいぶ大変でした」と伝え、特に困難を極めた当初の苦労を振り返った。 「選手たちが選手を選ぶ...その人の人生にも関わってくるだろうし、そこの責任だったり覚悟はもう常に...。キャプテンを始めたこの1年は責任と覚悟で、押しつぶされるっていうか、最初はもう全然できなくて。うちがレッドをもらったり想定外のことが起きて、結構あたふたしていました。試合を重ねていくとかなり、こういう流れだからこういう選手を入れたほうがいいとか、逆にそのまま伸ばしたほうがいいとかっていうのは、感覚で慣れてきました」 ハーフタイムもベンチに座らず、ホワイトボードの横に立つ様子を見て、解説の元日本代表FW巻誠一郎氏は「ちゃんと休めたんですかね?」と口にした。 ただ、タイムアップの瞬間までノンストップで走り続けたタフネスは、「休めてます。止まっていれば休めるので。あとは水を飲んでいれば、結構休めるので大丈夫です」と報道陣の笑いを誘う。そしてそのうえで、日常の部分にも触れ、気分転換を兼ねて散歩を続けていると明かした。 「近所の人たちとよく散歩に行くんですよ。その人たちに意見を求めるっていうか、結構話を聞いてもらって。自分1人では解決できないことを言って、スッキリして帰るみたいな。サッカーをやっている子たちが多いので、聞かれたり自分が言ったりして、気分転換やストレス発散を手伝ってもらっています。部活終わりでほぼ毎日行っています。たまにラーメンとか、疲れている時は温泉に行ったり。温泉ではもう本当に何も考えてないです。疲れを落とすことだけを考えて」 指示を待つのではなく、自ら考え、答えを導き出す――。頼れるキャプテンを中心に、主体性を地でいく堀越が、大舞台で旋風を巻き起こすか。 取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)