センバツ高校野球 いざ、夢舞台で審判を 3試合で塁審予定 桑名の後藤祐太朗さん /三重
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で18日に開幕する第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)で、東海地区から派遣審判委員に選ばれた、桑名市の会社員、後藤祐太朗さん(37)が夢の舞台に立つ。ワクワクする気持ちと責任という重圧を感じながら「気持ちのこもったジャッジをしたい」と意気込む。【下村恵美】 ◇声援に負けない「大きな声で」 小学3年から野球を始め、5~6年生の頃、テレビで見たプロ野球の試合で、大きな身ぶりでプレーを裁く審判にかっこよさを覚えた。中学でも野球を続け、県立いなべ総合学園高校(いなべ市)に進学。部員が塁審を務める練習試合で、公式審判員と出会った。試合のたびに審判の知識が増えることが楽しかった。外野フライは、しっかり捕球できたかを確認する、盗塁に対するポジションの取り方を覚えるうちに「審判をやりたい」との思いが膨らんだ。 卒業後、地元の企業に就職。県高校野球連盟の審判講習会に参加してアマチュア野球公認審判員の資格を取得し、県高野連の審判部に入部した。1年目、土日の休みは全て高校野球の試合で審判を務めた。当時は審判員が少なかったこともあり、1日2~3試合、年間で計145試合をこなした。 今でも思い出す練習試合がある。判定に納得がいかない選手の様子を見て、自分の判定が正しかったのか、思い悩んだ。先輩の審判員に「休ませてほしい」と弱音を吐いた。そのときに返ってきたのは「審判で悩みがなかったら、おかしい」。今も心に刻まれている言葉だ。 判定に自信が持てるよう、試合で経験を積んだ。より正確な判定に求められるのは「止まって見る」の基本動作。球審ではボールを最後までしっかり見ること、塁審では常に次の展開を予測したポジショニングを考えること。30歳を過ぎたころ、試合後に監督から「いい審判だった」とうれしい言葉をかけられた。 しかし、2019年に秋季東海地区大会で決勝の球審を初めて担当することになった。試合前には自分でも分かるくらいガチガチに。その姿を見た先輩の審判に「緊張した姿を見せるな」と注意された。他の審判や選手に不安が伝われば、いい試合はできない、審判の気丈な姿勢が試合を引っ張っていくという心構えを改めて学んだ。 派遣審判委員は東海地区から1人だけ選ばれる。県高野連によると、三重から選出できる機会は7年に1度。自身も派遣審判委員の経験がある審判部長の堤長功さん(57)は「限られた人だけに与えられた夢の舞台」だという。後藤さんを推薦した理由は「生徒に負けないキビキビした動き、メリハリあるジャッジができる」からだ。 大会では「ほかの審判員と交流できるのが楽しみ」だと笑う。開幕に先立ち、16日から2週間の休暇をとって甲子園に入った。日ごろから審判活動に協力的な会社や同僚にも感謝しつつ、計3試合の塁審を務める予定だ。今大会は19年の夏以来、3年半ぶりに声出し応援が解禁される。観客席からの大声援に負けないよう「大きな声を出してジャッジしたい。甲子園での経験や魅力を後輩に伝えるため、少しでも多くのことを学びたい」と夢の大舞台を心待ちにしている。 〔三重版〕