タクシーで吐いたらシートの「弁償代」を請求されました。支払うべきでしょうか?
タクシーで乗客が吐いてシートを汚してしまうと、その車両は営業を続けられなくなり、営業所に戻って清掃をしなければなりません。その際に発生する清掃や消毒の費用などを請求された場合、乗客は支払う義務が生じるのでしょうか。 今回は、タクシーで乗客が吐いてしまった場合に、乗務員はどのように対応するのかについて調べてみました。飲み会などでタクシーを利用する際の参考にしてみてください。
タクシーのシートを汚した場合は弁償しなければならない?
飲み会の帰りや病院への行き帰りなどで、タクシーを利用することがあるでしょう。いずれの場合も、乗車中に具合が悪くなって、車内で吐いてしまうことがあるようです。 車内での嘔吐(おうと)でシートが汚れてしまうと、タクシーは営業所へ帰って車内の清掃をしなければなりません。その間は営業の機会を失い、乗務員やタクシー会社に損失を与えることになります。 嘔吐など乗客の都合により、車内を清掃しなければ営業ができない場合は、法律上「刑法261条の器物損壊罪」に該当する恐れがあるのです。 「前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」 出典:デジタル庁 e-Gov法令検索 刑法 第二百六十一条(器物損壊等) これを見ると、車内で吐いたため損害に対する費用が請求された場合、法律上は弁償しなければならない可能性があることが分かります。
実際に清掃や消毒の費用が請求されることはあるのか?
乗客が吐いてシートを汚してしまった場合の対応は、タクシー会社や乗務員によって異なるようです。 例えば一般社団法人盛岡地区タクシー協会では、損害の費用を請求する可能性について次のように述べています。 「お客様のご都合により、車内を清掃しなければタクシーとして運行できない状態であった場合は、運賃とは別に費用のお支払いをお願いします。詳しくは、タクシー乗務員にご相談ください。」 出典:一般社団法人盛岡地区タクシー協会「タクシーQ&A タクシーの中で嘔吐するなどして、車内を汚してしまった場合は?」 また同地区を所在地とするふるさと交通は、損害費用の請求について以下のように説明しています。 「タクシー乗車中に嘔吐、またはその他の理由にて、お客様が車内を汚してしまった場合、【クリーニング代】を請求する場合があります。 タクシーは基本的には酔客であっても乗車をお断りできないのです。また、お酒に酔われているお客様を乗せて嘔吐されることや、その他の理由で車内を汚されることは想定しておりません。ですから、そのような理由で車内を汚してしまった場合は、清掃等の営業的損害として【クリーニング代(10,000円)】をご請求する場合がございます。何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。」 出典:株式会社ふるさと交通 タクシー ※クリーニング代の請求について 一方で、乗客に損害費用を請求しなかった事例もあるようです。例えば、公益財団法人大阪タクシーセンターは、以下の感謝事例を掲載しています。 「子供の体の具合が悪く、病院までタクシーを利用しましたが、車内で子供が嘔吐してしまい、汚してしまったのですが、運転者さんは、とても親切に対応してくれました。診察を急いでいたので、その場でお詫びも出来なかったのですが、運転者さんには本当に感謝しております。」 出典:公益財団法人大阪タクシーセンター 指導業務課[業務係] 感謝・苦情事例