阿部顕嵐プロデュースの東洋空想世界「blue egoist」公開ゲネプロ・囲み取材レポート
「7ORDER」のメンバーとして、また俳優として舞台「桃源暗鬼」やドラマ「スメルズ ライク グリーン スピリット」など幅広い活動を展開している阿部顕嵐。阿部が初めてプロデュースを手がけた舞台が、東洋空想世界「blue egoist」。自身も出演し、七海ひろき、立石俊樹、福澤侑、高橋怜也、後藤大の粒選りキャスト、さらに脚本の小沢道成、演出の松崎史也、音楽の和田俊輔、衣裳の中原幸子、振付のREX(福澤侑、Daiki、皇希)をはじめとする手練れのクリエイティブチームと共に描き出したのは、今を生きる私たちの胸に刺さるダークファンタジーだ。11月17日の初日に先立って行われた公開ゲネプロと囲み取材の模様をお伝えしよう。 【全ての写真】東洋空想世界「blue egoist」公開ゲネプロ
パペットと共に6人それぞれが輝く舞台
囲み取材で、阿部は「観終わった後にもう一度、時計の針を戻して観てみたいなと思えるような作品」と語った。七海ひろきも、「ストーリー、演出、そしてこの6人のパフォーマンス、せりふや歌、すべてにいろいろなメッセージが込められている」とする。 さらに「一人ひとりが役で挑戦することが多い。稽古を通してブラッシュアップされてきたものをようやくお客様に見せられることが幸せ」(立石俊樹)、「人によって観終わった後に感じるもの、思うことが違う舞台。いろいろな気持ちを感じてほしい」(福澤侑)、「ものすごいパワーを出せる6人。そのパワーをお客様にすべてぶつけて、全力でパフォーマンスしていきたい」(高橋怜也)、「演じることは、舞台上ですべての物に命を宿さなければならない仕事。今回初めて使うパペットを通して新たな自分たちの表現ができる」(後藤大)とそれぞれに思いを語る。 演出の松崎も「演劇の新しい価値を創る、劇場でしか観られないものはこういうものだ、ということが出発点。それをこの、華があって自我があって今を旬として生きる俳優6人と、ユニークな作品を創ってきた最先端の技術をもつスタッフたちと、“今創った演劇がこれです”と確信をもって言える」等と発言。観終わってみれば「確かに」とうなずくしかない作品だった。 舞台は、彼ら「blue egoist」が初めて人前で行うパフォーマンスで幕を開ける。彼らのパワーが十二分に発揮されたスタイリッシュなナンバーで、劇場を一気に「blue egoist」の世界観に染め上げる様は圧倒的だ。そして少しずつ、彼らが何者なのか明かされていく。 吸血鬼(七海)、狼男(阿部)……タイトルで「東洋空想世界」と銘打っているのに西洋的だなと思いきや、白狐(後藤)が登場。「ちゃんと東洋だったか」等と思わされること自体、既に作品の思惑にのせられているのかもしれない。孤独を抱える彼らが出会い、さらに烏(福澤)、鬼の子(立石)、蜘蛛(高橋)と共に“行き場をなくした者が集まる森”で暮らし始める。烏が行っていた動画配信をきっかけに彼らのパフォーマンスが注目を集めたところで、冒頭、そして衝撃的な場面へと至る。おそらく多くの人が感じているだろうそこはかとない恐ろしさにさらされるようすは、まさに現代社会の風刺、批判だ。 彼ら自身の言葉通り、キャストはそれぞれの魅力とスキルを最大限に発揮している。阿部はダイナミックな身体表現と共にギターの弾き語りも。一番葛藤を露わにする役どころに説得力をもたせていたのは、彼のワイルドさと繊細さの両面をもった個性と確かな演技力ゆえだろう。七海は男性陣の中で男性役を演じながら、しなやかで華やかな存在感がきらめきを放った。マントを羽織った姿もとてつもなく魅力的である一方、吸血鬼の性格的には時に微笑ましかったり、時にややイラっとさせられたりと、見どころも多かった。後藤のアーティスティックなセンスが生きたパフォーマンス、福澤が見せる頭脳派メガネキャラとキレのよい動きによる幅広さ、高橋のコミカルなやりとりや身体・糸等の小道具を駆使した蜘蛛としての動きの数々と、ステージ上で躍動する彼らは6人だけとは感じられないような濃密さだ。そしてストーリー上でキーマンとなっていた立石は、淡々としたなかに次第に感情の動きが見えてくる様に惹き込まれる。艶やかなファルセットも相まって、憂いに満ちた様は哀しく、しかし美しい。 そして、やるせなさや切なさを経て、ほのかに光があるかのような幕切れ。狼男たちの行く末に、物語に映し出された私たちの姿に、激しく心が揺さぶられる寓話がそこにあった。 公演は11月17日(日)~12月1日(日) THEATER MILANO-Zaにて。その後大阪公演あり。 取材・文:金井まゆみ 写真:(C)「blue egoist」製作委員会 <公演情報> 東洋空想世界(オリエンタルファンタジー)「blue egoist」 東京公演:2024年11月17日(日)~12月1日(日) THEATER MILANO-Za 大阪公演:2024年12月6日(金)~12月8日(日) オリックス劇場