投資歴30年以上のベテラン投資家が戦略を語る「アクティビスト投資家に追随しポジションを構築する」
「イベント・ドリブン」という言葉をご存知だろうか。M&A(合併・買収)や業務提携、リストラなど、企業の経営や財務に大きな影響を及ぼすイベントが起こった際の市場価格の変動を、投資のチャンスと捉える投資戦略のことである。今回取り上げるのは、そんなイベント・ドリブン戦略を駆使し、30年以上の投資経験を持つ羽根英樹氏(X:@hidekihane)。Xでの情報発信のほかに、投資セミナーの講演にも多数出演するベテラン投資家だ。 みんかぶマガジン短期連載「一流投資家が語る、イベント・ドリブン投資戦略の極意」第2回は、羽根氏の投資戦略について話を伺った。
アクティビスト投資家に追随しポジション構築せよ
――ここからは、羽根さんの投資戦略についてお聞きしていきたいと思います。 イベント・ドリブン戦略にもさまざまな形態がありますが、現在特に注力しているのはTOB (株式公開買い付け)関連の戦略です。主にTOBが実施される「タイミング」や「条件」などが重要になってきます。 昨今の動向を見ると、TOBの実施が困難なケースも見受けられますが、ベネフィット・ワン(2412)のように、一度TOBを実施した後、新たにTOBが発表される事例もあります。 さらに、アクティビスト投資家(※企業経営に積極的に関与し、企業価値の向上を目指す投資家)が大量に株式を購入し、大量保有報告書を提出するケースもあります。 これにより、TOBの成立が難しくなり、結果としてアクティビスト投資家と企業側の間で価格交渉が行われ、公開買付価格の上昇につながることがあるんです。最近はこの状況を利用し、アクティビスト投資家に追随する形でポジションを構築して、株価の上昇を狙う戦略を取ることが増えていますね。
「親子上場の解消」は投資チャンス
――そのほか、どんなイベントを見られていますか? 「親子上場の解消」を狙ったTOBにも注目しています。東京証券取引所の基準によると、流通株式の時価総額や流通株式の比率が市場基準を下回る企業は、上場廃止になるリスクがあるとのことです。 そうした中、親子上場の解消を目指すTOBに注目し、戦略を立てています。これは特定のTOB銘柄をターゲットにするのではなく、広範囲にわたって探っていく方法なので、ほかの投資方法でいえば、バリュー投資に近いアプローチと言えます。 TOB関連の取引は、短期的な利益を追求するケースと、より長期的な視野で企業価値を評価するケースがあります。特に親子上場の解消のような場合、将来にわたるシナジー効果を期待し、チャンスとみて、現在の株価が割高であっても投資することがあります。そしてこうした取引においては、PBRなどの財務指標や株主構成が重要な判断材料となってきます。 ただ、PBRが非常に低い場合、アクティビスト投資家が介入しやすくなります。それこそ、村上ファンドのようなプレイヤーからの横槍が入る可能性は高くなります。加えて、株主構成はTOBが成立するかどうかを左右する決定的な要因となりますので、よく注目しておいてください。大株主からの支持がなければ、TOBを成立させにくくなりますからね。
TOB関連の取引にあたっての注意
――そのほか、注意深く見ている要素はありますか? オーナー企業の場合、発行株式のほとんどを同族企業が握っていることも少なくないので、株主構成を細かく分析する必要があります。 したがってTOB関連の取引にあたっては、数値指標や株主構成など、多岐にわたる要素を総合的に考慮しながら、短期的な収益だけではなく長期的な視野も持った取引を心がけています。
羽根英樹
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