自分だけの武器を磨くぶいすぽっ!のオンリーワン 兎咲ミミ&空澄セナの“個性”に迫る
現在のVTuberシーンにおいて、バーチャルタレントの活躍する分野は日々拡がっている。そのなかで年々支持を強めているのがBrave groupが手がけるVirtual eSports Project「ぶいすぽっ!」である。 【画像】キュートなビッグリボンがチャームポイントの兎咲ミミ 業界においてさまざまな趣向のプロジェクトが存在するなかで、「ぶいすぽっ!」が特色としているのは、eスポーツに特化した事務所であること。とくにFPSジャンルを得意とするメンバーが多く、なかには各タイトルにおける認定ランクで上位に食い込む者もいるほどだ。 現在所属するメンバー20人は昼夜問わずゲーム配信をおこない、プロジェクト内外で催される大型大会や企画へ参加するなど、ここ数年ですこしずつ存在感を示してきた。配信を通じて印象的なシーンを生み出してきたことで、コラボ商品や商品広告にも起用されるようになっており、所属タレントが様々な形で活躍する場面が増えてきている。 現在の運営体制となってから約4年ほど、シーンをリードする「ホロライブ」「にじさんじ」にも劣らない「ぶいすぽっ!」の魅力が広く知られつつある。今回はそんな「ぶいすぽっ!」メンバーから、兎咲ミミと空澄セナの2人について書いていこう。 ■穏やかで丁寧な口調の兎咲ミミ じつは“意外な趣味”も 兎咲(とさき)ミミは2020年7月2日にSNSに初投稿、4日に初配信をおこなってデビューを果たした。薄い紫色のロングヘアー、すこし赤みがかった瞳、うさ耳を意識した頭のビッグリボンがチャームポイントだ。普段は丁寧な口調で話し、物静かな印象を受ける。 本人も冷静に振る舞うことを心がけているのか、賑やかし役が多いぶいすぽっ!メンバーのなかでもツッコミ役・まとめ役となることが多い。 その冷静さは画面に映し出された彼女の顔にあらわれており、FPSで打ち合いをしていても、雑談をしていても、顔・表情・視線の動きも最低限で留まっている時間が長く、あまりにも表情が変わらないことに「静止画みたい」とコメントされ、同期・橘ひなのが思わず同意することがあったほど。 活動を始めてしばらくは、人見知りということもあり初対面の人に会うと緊張してしまって話しづらそうにすることも多かった兎咲ミミ。ここ最近数多く開催されているコミュニティ大会・ストリーマーサーバーへの参加を経て成長し、「完全初対面で四苦八苦する」ような場面はほとんど訪れていない。 友人や同僚らとのコラボも多く、人との関わりを苦手とするわけではなく「穏やかながらにワイワイと楽しみたい」、そんな感覚で活動をしているのが伝わってくる。 デビューしてしばらくが経って以降は、ぶいすぽっ!メンバーに対して言葉少なに鋭く・端的に刺していくようなツッコミが多くなり、徐々にファンの間で「兎咲ミミは意外と口が悪い」という認識が広まっていった。 「あたしは性格が悪い」という自己評価を何度もしていた彼女だが、今では舌鋒鋭くツッコんだり悪態をつく彼女を楽しみにしているファンも多かろう。 「意外性」といえば、彼女の趣味についても記しておこう。それはデビューからしばらくが経ったころ、ゲームや企業とのコラボ配信を通じて知られるようになった。 2022年5月31日におこなわれた『ゆけむり温泉郷』の配信で、兎咲ミミはゲーム内にパチンコ台があることに気づくと、区画すべてをパチンコ台で埋めようとしたことがあった。このときはまだ「ネタとしてやってるのだろう」とファンに思われていたが、「事務所でポストカードを書いている時に、部屋が静かになるのがイヤだったので、運営さんと『スロパチステーション』の映像を流していた」と話したり、ストリーマーサーバーに参加した際に『スロパチステーション』に出演しているれんじろうと出会うと、「スロパチステーション見てます」と言い残して去っていったりと、ギャンブル好きな一面がすこしずつ知られるようになったのだ。 これが決定的になったのが、2023年8月19日に行なわれた『777town.net』とのコラボ配信だった。橘ひなの、八雲べにとともに配信に参加した兎咲だが、専門用語をスラスラと口にして解説を挟むなど、他2人に比べて明らかに知識豊富な姿を見せたのだ。 「エヴァを愛し、エヴァに愛されたい女、兎咲ミミです」 「ケータイのホーム画面、カヲルくんなんだよね。」 「(リーチ中)エヴァいてくれ……いてくれ……いないんだよね、知ってた。いつもの」 ふだんの配信ではテンション低めで落ち着いている兎咲だが、ゲームをプレイしている際にテンション高くなると特徴的なハイトーンを出して騒ぐことがある。この日のパチンコ配信では終始テンションが高く、「碇シンジのモノマネをする橘ひなののモノマネをします」と急にモノマネを披露するなど、上機嫌な姿を見せてくれていた。 そのあと11月には2度目となる『777town.net』とのコラボ配信がされているのだが、これは兎咲の希望もあって実現したものだ。ぶいすぽっ!運営スタッフは彼女のイメージに関わるためパチンコ・パチスロを趣味にしていることを明かすのに難色を示していた。しかし、当の兎咲本人が「パチンコの案件配信がしたい」と運営を逆説得、「案件配信もしたのだから、もう隠さなくていいですよね?」となったという。 こうしてほかのストリーマーやVTuberからもパチンコ・パチスロの話題を振られることが多くなった兎咲。「パチスロ 革命機ヴァルヴレイヴ(好きな機種は?と渋谷ハルに問われ即答)」「好きなものしか打たない」「演出を見るのが好きなの」など、こだわりや好きなポイントを明かしている。 プライベートでも如月れん、英リサとともにパチンコに行ったと話しており、節度のあるパチンコ・パチスロライフを送っているようだ。 ■「大会にはいつか出てみたい」から数年 初出場で初優勝の実力 兎咲ミミはデビュー経緯について「デビュー前からVTuberを見ていて、たまたま見つけたオーディション募集を見て応募・合格した」と語っており、ぶいすぽっ!の前身であるLupinus Virtual Gamesの配信を見ていたことにも触れている。当時まだ4人だけだったメンバーのなかで特に好きだったのが一ノ瀬うるはであり、デビュー当初は一ノ瀬を前にするとガチガチに緊張してしまっていたことを後に明かしている。 徐々に距離感が近づいた現在では、一ノ瀬も兎咲が自身の“ぽたく”(一ノ瀬うるはファンのファンネーム)であることを把握しており、兎咲が自分のファンであることをいいことに甘えることもしばしばある。 こうして経緯を振り返ると、「ファンが推しと出会うために努力した話」として読まれそうだが、決してそのような流れでオーディションを受けたわけではないだろう。過去の配信ではこんな発言を残している。 「あまりにも好き好きって言い過ぎると迷惑になるんじゃないかって思って、あまり言わないようにしていた」 「マジのガチで好きだから、配信上とか本人に直接面と向かって言ったりはしない」 「お前らと一緒にすんな(「ガチ恋か?」というコメントに対して)」 このように、彼女の中でも慎重かつ一線をひいた上での関係性を保っているようだ。 いまでは兎咲ミミはLupinus Virtual Gamesの4人、胡桃のあに続く6人目のメンバーとして、総勢21人となっている現在のぶいすぽっ!メンバーのなかでも先輩ポジションにいる。悪ふざけの多いメンバーをたしなめる立ち位置につきながら、長年活動を共にしてきたメンバーの良き友人として、その存在感を放っている。 ぶいすぽっ!といえば『Apex Legends』『VAROLANT』などのFPSゲームを得意とするメンバーが多い。これはぶいすぽっ!の前身であるLupinus Virtual Gamesが『PUBG: BATTLEGROUNDS』をメインに据えて配信していたことが影響しており、いまでもFPSゲームを毎日のように配信し、各作品を使ったさまざまな大会や企画への参加、宣伝・広告関係の仕事を受けることが多い。 例に漏れず、兎咲ミミもFPSタイトルをプレイすることが多かったわけだが、彼女は活動初期にとある目標を立てていた。 「ぶいすぽっ!メンバーととても仲良くなれたので、これからはもっと他のVTuberの方と仲良くなりたいし、友達を作りたい」 「『Apex Legends』『VAROLANT』の大会に出れるようになりたい。経験というものをしてみたいですね」 この言葉は、2022年最初の配信のなかで「今年の目標」として語った言葉だ。じつは彼女、2021年夏に開催された『VTuber最協決定戦』発表時にツイートをするなど意欲はあったようだが、2022年に入るまでFPSゲームの大会や企画にほとんど参加していなかったのだ。 2022年1月にこのように話してから2024年にかけての2年間で、彼女はいくつかの大会に出場、優勝も経験することになったのだが、特筆すべき大会といえば、やはり4月15日に開催された『VTuber最協決定戦 Ver.APEX LEGENDS Season5』であろう。 先に書いたように、彼女にとっては念願だった『VTuber最協決定戦』への初出場となったわけだが、ぶいすぽっ!の先輩・胡桃のあ、にじさんじの元一期生・樋口楓という関西育ち2人とチーム「めーぷるなっつばにーだよ」として出場したのだ。 この大会では、開催1ヶ月近く前から出場選手が独自のカスタムマッチを立てて練習する流れが生まれており、3人は例年よりも長い期間にわたって練習をし、次第に仲を深めていくことになった。 チームを牽引していく胡桃のあを樋口楓と兎咲の2人がサポートしていく陣容となり、コーチにストリーマー・みこだよを加えた4人で、使用レジェンド・立ち回りを何度も変えながら日々研鑽を積んでいくことになった。 日によっては別チームのメンバーが加わりながら、関係性・距離感を掴んでいった3人は本番で躍動。大会史上初の2戦連続チャンピオンを奪取するなど主役として君臨し、みごと優勝を果たしてみせた。 チームメンバーたちの活躍もさることながら、兎咲の成長ぶりがすさまじかったことも記しておきたい。練習を重ねるごとに遠距離武器の当て感が徐々に増していき、接敵した相手をその当て感・エイムで幾度も驚かせたり、徐々に状況判断の精度が良くなったことで、チームメンバーたちからサブIGLとして全幅の信頼を置かれるようになった。 「出場してみたい!」と口にしてから2年後、ようやく訪れた初出場のチャンスで、練習期間中に驚異的に実力を伸ばして最高の栄誉を得ることができたのだ。 結果的に、2023年は彼女の活動史上もっとも多くのコミュニティ大会・企画に出場した年となった。それでも、やはりこの優勝の思い出は色濃く残ったようで、2023年末に1年を振り返った際には、「めーぷるなっつばにーだよ」について「今年一番輝いていた時期」だとハッキリ口にしている。 2023年は『Apex Legends』『VAROLANT』の大会に出場し優勝。ストリーマーサーバーではぶいすぽっ!以外のVTuberやストリーマーとも交流を深めるなど、充実した1年となった。またこの年の配信回数は371回を数え(!)、ぶいすぽっ!指折りの長時間配信者としてさまざまな配信をしていったことがその充実ぶりを支えたのは言うまでもない。 兎咲は「2023年を一文字でたとえるなら?」という問いに「運」をあげていたのだが、2024年はどのように例えるだろうか。2024年後半戦の活動にも注目していきたい。