バイデン氏、NATO首脳会議で同盟の意義を強調 健康不安説渦巻くなか
北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が9日、米ワシントンで開幕した。ジョー・バイデン米大統領は、加盟各国の指導者らを力強い演説で迎えた。秋の大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領の挑戦を退けられると、同盟国や国内支持者らを安心させる狙いをうかがわせた。 開幕にあたってバイデン氏は、ロシアとウクライナの戦争という「極めて重要な瞬間」に直面しているNATOは「かつてないほど強力だ」と、短いながらも強い口調で宣言した。 また、「独裁者らが世界の秩序をひっくり返した」とし、ウクライナへの軍事支援の拡大を表明した。 ウクライナに対しては、苦境にある防空態勢の強化のため、アメリカ、ドイツ、イタリア、オランダ、ルーマニアの各国が地対空迎撃ミサイル「パトリオット」などを無償供与する。 バイデン氏は演説で、「ウクライナが自由で独立した国であり続けることで戦争は終わる」、「ロシアは勝利しない。ウクライナが勝利する」と、モニターの原稿を読み上げた。 この日の約13分間の演説は、先月のトランプ前大統領との討論会でのたどたどしい口調とは明らかに異なり、発言が明瞭だった。 演説の終盤、バイデン氏はNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長をステージに上げ、アメリカで最高の栄誉とされる大統領自由勲章を授けた。 ■スターマー英首相が初出席 今回の首脳会議にはNATO加盟32カ国の首脳が出席している。 その1人がイギリスのキア・スターマー新首相だ。スターマー氏はワシントンに向けて出発する前に、「NATOに対する労働党の強く揺るぎない支持を再確認」できてうれしいと述べた。 また、首脳会議の目的について、「同盟国と団結し、さらなるウクライナ支援の方法を実際的に議論し、ロシアが世界のどこで侵略をしようとも私たちはそれに立ち向かうという非常に明確なメッセージをプーチン(ロシア大統領)に送るものだ」とした。 スターマー氏は10日に、バイデン氏や議会の与野党指導者らと会談の予定。 ■他国外交官らもバイデン氏の今後に懐疑的 こうしたなか、米民主党議員らは私的な会合をもち、バイデン氏が党を率いることについて協議した。AP通信が議員らの話として伝えたところでは、会合は「悲しい」ムードが漂っていたという。 9日には、マイキー・シェリル下院議員(ニュージャージー州)が、バイデン氏に対して選挙戦からの撤退を公に求める7人目の下院議員となった。シェリル氏は「リスクがあまりに大きい」と述べた。 バイデン氏の今後については、訪米中の外交官らも懐疑的な見方を示していると報じられている。 匿名の特使はロイター通信に、「討論会の後、彼が復活するとは思えない」、「彼があと4年アメリカとNATOのかじ取りをするとは想像できない」と話した。 バイデン氏のチームは、81歳のバイデン氏が大統領の仕事をこなせるだけの活力を保っていることを示そうとしている。 ホワイトハウスは、ロシアが2年前にウクライナを侵攻して以降、NATOがフィンランドとスウェーデンの加盟によって拡大したことについて、バイデン氏のリーダーシップによるものだとしている。 一方、78歳のトランプ前大統領は9日夕、フロリダ州の自身のゴルフクラブでの選挙集会で、NATO加盟国を批判した。 トランプ前大統領は従来から、国内総生産(GDP)の少なくとも2%を防衛費に充てるという合意目標を達成できていないとして、NATO加盟国を繰り返し非難してきた。ただ、ロシアがウクライナに侵攻して以来、この目標を達成する国は増えている。 前大統領はこの日の集会で、支持者らに向かい、それらの国々が「数千億ドル」多く拠出するようになったのは、もっと拠出しなければ「あなたの国をロシアから守ってやらない」と自分が大統領時代に警告したからだと主張した。 前大統領は今年2月にも、集会で同様の発言をした。それを受けてNATOのストルテンベルグ事務総長は、「私たちの安全保障のすべてを損なう」と批判した。 他方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ワシントンの別の場所で開催されたイベントに出席。全世界が米大統領選がある「11月を待っている」とし、米有権者にウクライナの側に立つよう求めた。 ゼレンスキー氏は11日にバイデン氏と会談する予定となっている。 (英語記事 Biden forcefully defends Nato as he hosts summit leaders)
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