工藤会市民襲撃事件 福岡高裁「1審判決は証拠の評価を誤り不合理な認定をした」 1事件を無罪認定しトップ野村被告に無期懲役 野村被告・田上被告は上告
市民を標的にした4つの襲撃事件に関与したとして1審で死刑判決を受けた特定危険指定暴力団「工藤会」トップ・野村悟被告(77)に対し、福岡高裁は12日、1審判決を破棄し無期懲役の判決を言い渡しました。元漁協組合長射殺事件について、「組織の意思決定のあり方は不明」で「証拠もない」として、野村被告の関与を否定し無罪としています。 【写真で見る】1審判決を破棄し、トップに無期懲役の判決 これまでの事件、判決の流れ
1998年~2014年におきた4事件
起訴状によりますと、特定危険指定暴力団「工藤会」のトップで総裁の野村悟被告(77)とナンバー2で会長の田上不美夫被告(67)は、元漁協組合長射殺(1998年)、福岡県警元警部銃撃(2012年)、看護師刺傷(2013年)、歯科医師刺傷(2014年)の4事件に関与したとして殺人などの罪に問われています。
1審は野村被告に死刑判決
2019年10月に始まった1審の福岡地裁では「配下の組員が勝手にやったこと」として、2人は全面的に無罪を主張。しかし、福岡地裁は4事件すべてについて「野村被告が首謀者、あるいは指示命令があった」と認定し、野村被告に死刑、田上被告に無期懲役の判決を言い渡しました。
福岡高裁 1審判決を破棄
一方、12日の控訴審判決で、福岡高裁は、1審判決を破棄し、野村被告に無期懲役の判決を言い渡しました。1審と2審で判断が分かれたのは、4事件のうち、元漁協組合長射殺事件をめぐる野村被告の関与です。 福岡高裁の市川太志裁判長は、「野村被告の共謀を認定した元組合長事件は、論理則経験則に照らして是認することはできず、一審判決の破棄は免れない」として野村被告の関与を否定、無罪を言い渡しました。何が判断を分けたのでしょうか。
元漁協組合長射殺事件 1審判決の認定
元漁協組合長射殺事件について、1審判決は、 (1)犯行が工藤連合などによる組織的な犯行である (2)被害者一族の利権に関心を抱き、利権交際要求を成功させるため犯行を行う大きな動機があった (3)工藤連合と親密な交際をしていた被害者を殺害するという決断を野村被告の配下の組員が独断で行うことは考えがたい などとして、「本件犯行に野村被告と田上被告の関与がなかったとは到底考えられず、関与していない旨を述べる両名の供述は信用できない」として野村被告と田上被告の共謀を認定していました。