生物多様性が日本経済21兆円を直撃? ── 名古屋議定書をめぐる諸問題
遡及性については、各国の合意がとれておらず、独自に遡及性を適用する国が出てこないとも限りません。先進国は、自国に不利に働くこの「遡及性の適用」を否定していますが、アフリカ諸国は「大航海時代(15~17世紀)にまでさかのぼって利益配分が欲しい」と主張を展開。これに危機感を募らせた日本製薬工業会や日本種苗協会などの産業界が10月2日、望月義夫環境大臣らに「日本政府はこの遡及性の適用を確実に否定できるのか? そうでなければ批准しないで欲しい」と要請したのでした。 議定書が発効すると、参加国はフィリピンのように国がガイドラインを示すようになってくるのではないかと見られています。もし各国がフィリピンと同じ2%という率を採用すると、21兆円の2%、つまり約4000億円が途上国に「生物の多様性保全」のために支払われることになります。 「それはそれで良いことではないか?」という意見もあるでしょう。しかし、名古屋議定書は配分されたお金の使途を厳密には定めず、「奨励する」という表現を使っています。つまり、生物保護のために使われるという保証がないという問題も抱えているのです。