住民10人未満の離島3島巡り買い物支援 山口県岩国市のコンビニ経営岩田さん「選ぶ楽しさ届けたい」
山口県岩国市でコンビニ3店を営む岩田健吾さん(39)が、離島で暮らす人たちの買い物支援を続けている。「商品だけでなく、選ぶ楽しさを届けたい」と2週間に1度、市内や周辺の島を小型船で巡って「店開き」する。高齢化が進む住民の生活を支え、交流も育んできた活動は間もなく3年を迎える。 離島はここ(地図) 7月中旬。同市の由宇港を出発した2トンの船が約12キロ離れた黒島に到着した。商品が入った箱やクーラーボックスを船内から波止場に下ろす。弁当、野菜、飲み物、洗剤などの日用品…。「いやあ、今日も暑いですね」。並べ終えた岩田さんが大粒の汗を拭った。 到着を待ちわびていた住民たちが商品を次々とかごに入れる。「いつも当てにしとるんよ」と宮本敬子さん(86)。お気に入りのパンやバナナなどを買い、いっぱいになった手押し車を押して帰路についた。 休む間もなく船は約7キロ北東の端島に移動した。「買い物もだけど、みんなで話をするのが楽しみ」と亀田敬子さん(65)。約1時間の営業を終えると、岩田さんの船はさらに約11キロ西へ。住民のニーズを聞き取って3月から経路に加えた、周防大島町の前島だ。岩村義明さん(76)は「大島や柳井から買った物を持って帰るのは大変。ありがたいよ」と笑顔で船を迎えた。 黒島、端島、前島はいずれも住民が10人に満たず、商店はない。岩田さんは、離島の高齢者は島外への通院時などに買い物をせざるを得ず、重い荷物に苦労していることを知り、自ら船を購入して2021年9月に活動を始めた。 暑い日も寒い日も海を渡り、訪問は80回を超えた。積み下ろしの繰り返しで肘を痛めたり、故障した船を住民の船にけん引してもらったりしたこともある。 船の調達などの初期費用や修理、維持費は売り上げで賄えず、利益は度外視しているのが現状。それでも「みんな顔なじみ。待ってくれている人のため、できるだけ長く続けたい」と岩田さんは力を込める。「海縁隊 岩田屋」と記した旗を船に掲げ、島との縁、住民同士の縁をこれからもつないでいきたいと願う。 クラウドファンディングのサイト「キャンプファイヤー」で活動援助の寄付を今月28日まで募っている。
中国新聞社