ゴッホの名画「星月夜」は科学的な理論に従っていた（海外）
ゴッホの作品「星月夜」は、自然界の流体を説明する数学的理論に従っているようだ。 ゴッホの死後数十年経ってから生まれた方程式を彼が理解していたはずはない。 【全画像をみる】ゴッホの名画「星月夜」は科学的な理論に従っていた 研究者たちは、ゴッホの描いた絵の中の渦巻きが、雲や水、その他の自然物に見られるパターンに一致することを発見した。 フィンセント・ファン・ゴッホ（Vincent van Gogh）が最も象徴的な作品の1つである「星月夜（The Starry Night）」を描いた際、彼は記憶、観察、そしておそらく数学と自然に対する直感をこの作品に織り交ぜている。 学術誌「Physics of Fluids（流体物理学）」に掲載された最近の研究によると、この絵画の夜空に描かれたうねるような色の帯は、渦巻く流体の複雑な流れを説明する数学的理論に非常に近いという。 「ゴッホは自分が描いている絵の根底にある数学的なものを完全には理解していなかったかもしれないが、それでも彼はキャンバスにそれを表現することに成功している」と、研究の主執筆者である黄永祥はBusiness Insiderにメールで語っている。 「その時代を代表する画家の一人であるゴッホは、幾度となく空の動きを注意深く観察していたと我々は考えている」と黄氏は述べた。 「その結果、彼がこの有名な絵画を描いた際、その流れのパターンは数学的な法則に正確に従ったものになった」
ゴッホの筆遣いには物理学が見られる
「『星月夜』に関する問題は、そこに描かれている星空の流れが現実を映し出しているかどうかだ」と黄氏は言う。それを解明するために、黄らは「星月夜」の高解像度の画像から14の渦巻きを調べた。 研究者たちは、渦巻の大きさと渦巻の間の距離から、それがコルモゴロフ（Kolmogorov）の乱流理論に驚くほど一致していると判断した。 ゴッホが「星月夜」を描いてから52年後の1941年、数学者のアンドレイ・ニコラエヴィッチ・コルモゴロフ（Andrei Nikolaevich Kolmogorov）は、激しく動く流体の運動エネルギーが、大きな渦、つまり円形の流れから、小さな渦へと流れる仕組みを説明する公式を提唱した。 「乱流は日常生活で頻繁に起こる現象だ」と黄氏は言う。川の流れ、蛇口から水が出る様子、雲の動きなどから、我々は乱流が実際に起こる場面を見ることができる。 水の渦は無秩序のように見えるかもしれないが、それはパターンに従っており、コルモゴロフが発見したような数学的方程式によって説明することができる。 もちろん、ゴッホが生きていた時代にはこの方程式は存在しなかったため、彼はこの方程式を使っていない。だが、「星月夜」がこれほど正確に乱気流を表現しているという事実は、この画家の自然に対する鋭い観察力の証となるものだ。 この傑作の中の彼の筆跡さえも、乱流が流体を混ぜる様子を説明する「バチェラー・スケール（Batchelor scale）」と呼ばれる乱流に関する別の法則に合致しているようだという。 研究者たちは、ゴッホが筆で描いた小さな渦が、流体の中で粒子同士が渦を巻いていると予想されるパターンに従っていることを発見した。
ゴッホは少なくとも一つの乱流の要素を捉えていた
ゴッホが「星月夜」を描いたのは、1889年に自分の左耳を切断した後、自ら望んで南フランスの精神病院に入院して療養しているときだった。
Jenny McGrath
