【世界的大規模戦争へ危機感薄い米国】最大の敵は“無関心”、米国の専門家が危機を指摘した必読の報告書
まず、米国が現在直面しているのは、第二次世界大戦以降最も深刻な脅威であるとの認識が明示されている。そして米国がすぐにでも複数地域で、対等または対等に近い敵との戦争に巻き込まれる可能性があり、「敗北する」可能性もある。 この最後の一節には痺れる。米国自身が敗北の可能性を認めるのは珍しい。 そもそも22年の国防戦略策定時点では、ウクライナ戦争も、ガザ紛争も、中比対立の激化も、そして、不安定の弧(中ロ露ラン北朝鮮の連携)も発生していなかったのであり、既に最新の国防戦略が時代遅れになっているのは明らかだ。その意味でこの委員会報告はそれを補完する時宜を得たものだ。 その様な状況を反映して、この報告は、現在の国防省の調達等の方式を大きく変え、国のあらゆる力を総動員した「総力戦」的な対応を提言する。国防省のみならず、政府部内の国務省、財務省、商務省他と協調した対応を提唱しているのは、我が国の国家安全保障戦略とも共通している。
抜本的に変えるべき産業基盤
一番重要な軍の大きさと対処目的設定については、「複数戦対処軍構築」を提案している。米軍と同盟国との協力で米本土防衛と、インド太平洋、欧州、中東の同時並行的脅威に対応できる軍事態勢を目指すとしている。 この点は、若干勇気づけられるが、米国の産業基盤は今日必要な機材、技術、砲弾の需要に対応するに余りに不十分であり、敵が「戦時体制」で動く一方で米国が「官僚的」対応をするのは、早急に抜本的に変える必要があるとしている。 そして、国防費の抜本的増額とそれには増税が不可避なことに明確に言及しているのは、やはり米国らしい。危機感共有のために、是非、報告書要旨をお読みいただきたい。
岡崎研究所