和久井病院跡地とみられる場所に散在していた薬品の瓶を手にする調査チームの渡邉豊治医師（十和田市立中央病院）＝10日（調査チーム提供）

　太平洋戦争末期の激戦地・パラオで、戦争遺跡の調査を行っている青森県の市民有志調査チームが10月、パラオ本島で「和久井病院」と呼ばれた陸軍野戦病院の跡地を発見した。資料によると、少なくとも青森出身の兵士3人が和久井病院で亡くなっている。和久井病院の部隊（第123兵站＝へいたん＝部隊）に所属していた県人もいた。近くに埋葬されている可能性が高いため今後、調査チームが埋葬地の確認作業に入る。メンバーは「病院の規模や役割を明らかにし、戦争の記録として後世に残したい」と話している。 　調査を行ったのは、十和田市立中央病院と県立中央病院の医師・看護師、通訳、長年パラオの遺骨収集作業を支援してきた横浜愼一さん（62）＝十和田市＝の6人。10月7日から14日までの日程で調査した。 　和久井病院は、陸軍第123兵站部隊（通称・和久井部隊）の病院で、負傷した兵士の治療を行っていた。名称は、軍医の名前にちなんでつけられた。 　太平洋戦争当初は、パラオの南側コロール島に病院があったが、米軍の空襲が始まると、北側の本島のジャングル内に移動した。 　戦後、所在地が分からず“幻の病院”とされていた。横浜さんらのチームが、現地の人への聞き取りや資料を基に調査したところ10月10日、本島の中心部の密林地帯に、薬品の瓶が大量に散在している場所を発見。範囲は3.6メートル×2.7メートルにも及び、瓶に入った薬品が独特のにおいを放っていた。 　戦時中、和久井病院で内科の看護助手として働いていた仲井間千代さん（97）＝東京都＝に、横浜さんが帰国後に確認したところ、薬品の瓶が散在している場所が和久井病院の薬剤部があった場所だと分かった。 　仲井間さんは23日、東奥日報の取材に「密林地帯に薬品が残っていることや近くに川が流れていることから、今回の発見場所は和久井病院跡地で間違いない」と語った。薬剤部の近くには、部隊の寮や病棟があり、病棟から徒歩数分のところに死亡した兵士を埋葬した場所があった－とも証言した。 　横浜さんらの調査チームは、12月に再度、パラオに向かい、埋葬地の確認作業を行うとともに、厚生労働省や日本戦没者遺骨収集推進協会にも調査結果を報告する。埋葬地が確認された場合、遺骨収集が実施される可能性もある。 　青森県護国神社（弘前市）の資料によると、パラオ本島で死亡した青森県出身者は計28人。このうち3人が和久井病院で死亡。3人が和久井部隊に所属し、パラオで亡くなっている。 　和久井病院は密林の中に丸太を並べ、毛布をひいただけの簡素な病院で看護師の不足から、女学生を募集し看護部隊を編成した。病棟には多くの重傷の兵士が回され、最期を迎えたとされる。 　横浜さんは「幻の病院と言われた和久井病院の場所が特定されたのは、意義深い。病院を知る人は高齢になっており、当時の病院の役割や規模を知る上でも調査を早く進めなければならない」と述べた。仲井間さんは「お国のために死んでいった人のためにも遺骨収集を進めてほしい」と語った。