[黒田福美さん]骨髄浮腫症候群 「珍しい病気にかかったのだから、多くの人と共有したい」と病気公表
一病息災
有名人に、病気や心身の不調に向き合った経験を聞く「一病息災」。今回は、俳優の黒田福美(くろだふくみ)さん(68)です。 【図解】「いつのまにか骨折」とは?
医師から手渡された英語の論文に病名…救われた思い
ライフワークの訪韓中、左足の膝関節の痛みに襲われた。「また例の病気か?」と頭をよぎった。これまでは違和感を覚えてから悪化するまでに時間を要したが、この時は、急きょ現地で松葉づえを用意しなければならないほど急速に悪化した。 帰国後すぐに杏林大病院で検査を受けると、以前に診てもらった市村正一さんとは別の医師から、「骨壊死(えし)」と言われた。「違うと思います。いずれ回復します」。こう返せるほど自分でも対処法がわかってきた。実際、時間がたつにつれて症状は治まっていった。 2021年に、右のかかとの踵骨(しょうこつ)と、右足首の距骨(きょこつ)に症状が表れた。診てもらうため、訪ねた市村さんが切り出した。「君に連絡したいと思っていたんだ。君の場合、これじゃないかと思うんだよ」 そう言って手渡された英語の論文には、「骨髄浮腫症候群」と記されていた。 日常生活に支障が出るほどの痛みが下肢に生じ、数か月で治まる。症状が表れる場所は移動することが多く、多様な症状から骨壊死などと診断されることがよくある。原因は分かっていない――。自分にあてはまった。 「病名がわからず、一人で病気に立ち向かっている時は、ずいぶんと心細かった」 市村さんとの出会いで、世の中に自分と同じ病気が論文で発表されていると知り、ほっとするとともに、救われた思いがした。
発症を繰り返すうち、自分なりに工夫して生活を送る方法を身につけていった。痛みの激しい時期は、室内でも松葉づえを使う。痛みのピークを過ぎた頃から、手押し車で、体を支えながら少しずつ痛みのある脚に体重をかけることを意識する。日常生活がままならない時には、ヘルパーを活用し、買い物やゴミ捨てなどを手伝ってもらった。 長引く関節の痛みには、理学療法士が状態にあったリハビリを提案してくれた。足首の動きを滑らかにし、体のバランスを整え、萎縮(いしゅく)した筋肉を回復させる運動も組み合わせる。精神面の支えにもなり、普通に歩けるようになった。 2021年、杏林大病院整形外科医の市村正一さんを通じて、「骨髄浮腫症候群」の可能性があることを知った。根本的な治療法ではないが、骨の萎縮を防ぐ薬を4週間に1度、服用する。それからは、再発していない。「せっかく珍しい病気にかかったのだから、医師をはじめ、より多くの人と共有したい」。初めて本紙で病気を公表した。 「この病気は、よく似た骨壊死と間違われることがある。痛みが自然と良くなるケースもあるので、医師が人工骨との置換手術を勧める時は、十分に経過をみてほしい」と自らの経験を基に助言する。今後は、SNSなどで、積極的に発信していくつもりだ。(余門知里)