「ここ数年のテーマは“赦し”」水上恒司が振り返る、“悔しさ”も想像以上にあった2023年
「仕事ばかり」の日々も乗り越えられる理由
――いま、NKH朝の連続テレビ小説『ブギウギ』では、ヒロインが恋に落ちる相手役も演じています。気力体力ともにどのように維持しているのですか? 共演者、スタッフ含め、現場のみなさんの頑張ってくださる姿にチャージされて、あの人たちがいるから現場に行こうと頑張れています。それってすごい大きなことだと思います。 高額のギャランティや名前のある大きな作品も魅力的ですが、一緒に仕事をする人が駄目だったらやっぱり仕事ってできないと思うんですよ。「人が合わなくても作品が大きかったらやるよ」ということもあるかもしれませんが、でもそういうのって、次につながっていかないというか……。 次々と新しい作品が積み上がっては消えていく世界ですし、消えていかない良質な作品を作るために役者もスタッフも日々努力していますが、やっぱり「人」っていう部分がないと、なかなか仕事に行きたくなくなりますよね。……なんか、当たり前のことを言ってるだけですね、僕。すみません。 ――お仕事に対して真摯に真剣に向き合っておられるのですね。オフの日や、お仕事のことを考えない日もあるのでしょうか。 あまりないかなあ……。僕、まわりの役者の方々と同レベルというか、恥ずかしくないレベルに達するまで、準備が必要なタイプの人間なので、「もうしばらく仕事はありません」と言われないと、仕事を考えない日はないかもしれません。 でもそれがそんなつらくもないんですよね。ブラック企業にお勤めのかたが仕事のことをずっと考えるのはつらいかもしれませんが、僕は好きで、楽しく仕事ができている人間だと思うし、この仕事が僕の生活の一部にもなっているので、「仕事ばかり」と思われても、それがそんなにつらくはないです。
体に悪いものをひたすら食べたり(笑)
――水上さんは、作品によってまったく違う役を演じ分けています。切り替え方もお聞きしたいです。 気持ちの切り替えでいえば、単純に台本を変えることです。台本が変わるというのは、僕にとっては、右へ行くのか、それとも左へ行くのかくらいの違いなので、違う台本が来たら、その方向に向かって進んでいくだけです。 そもそも、役を演じるたびにその役を自分に近づけていたら、自分がわからなくなってしまうと思うんですけど、僕はどちらかというと、役の方に近づいていきたいと思っているタイプなので、あまり混乱することはないですね。 とはいえ、疲労が溜まってつらいことはありますし、「今日もすごいセリフ覚えたのに、明日も違う作品でこんなにセリフあるのか」ということもありますけど、それぞれやることが違うことをわかっていいて、かつ、何をやるかということを自分の中で明確にしておけば、切り替えが大変で困るということはないです。 ――ストイックに聞こえます。特にご自分への甘やかしやご褒美みたいなのは設けておられないのでしょうか。 いやいや、それは、ありますよ。インスタント食品とか、体に悪いものをひたすら食べたり(笑)。 実は今作の撮影中は、現場で出てくる弁当やお菓子、ケータリングを、一切食べなかったんです。11月に公開された『OUT』ではかなり体をつくりこんだので、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』に出るまでに減量が必要で、断食もしました。そしたら体がすごくクリーンになったので、体にいいものだけ食べようと思ったのと、戦時中の作品ということもあって、玄米だけ食べるとか、蒸かし芋だけ食べるとか、そういう単純なことをやってましたが、結構面白かったです。 ――2023年は水上恒司としての活躍が大きく広がりました。今年の振り返りと来年に向けての目標や展望を教えてください。 2023年は振り返ってみて、より1人では生きていけないなと実感した年であり、仕事量でも反響でも、いろんな意味で想像していた以上のことが起きた年だったと思います。 同時に自分の至らない部分に対する悔しさも想像以上にあって。でもそれは、別に今年に限らず、毎年思うことなので、今年が特別ではなく、いつもその前年以上に良い年にしていくために、日々、地味にコツコツやっていくしかないなって思います。そんなに多くは求めていません、僕の中で。 水上恒司(みずかみ・こうし) 1999年5月12日生まれ、福岡県出身。主な映画出演作は『弥生、三月-君を愛した30年-』(20/監督:遊川和彦)、『望み』(20/監督:堤幸彦)、『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』(20/監督:深川栄洋)、『新解釈・三国志』(20/監督:福田雄一)、『そして、バトンは渡された』(21/監督:前田哲)、『死刑にいたる病』(22/監督:白石和彌)、『OUT』(23/監督:品川ヒロシ)など。TVドラマ出演作に「中学聖日記」(18/TBS)、「MIU404」(20/TBS)、「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(21/NTV)、NHK大河ドラマ「青天を衝け」(21)、「真夏のシンデレラ」(23/CX)、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」(23)などがある
相澤洋美