<21世紀枠候補紹介>大分舞鶴 進学校が野球も上位常連に 進化の背景 選抜高校野球
1月28日に出場32校が決定する第94回選抜高校野球大会。「21世紀枠」の全国9地区の候補校を担当記者が紹介します。最終回は大分舞鶴。大分県内屈指の進学校が野球でも上位常連校に進化した転機に迫りました。 【プロの世界へ】21センバツを彩った選手たち ◇朝5時半から予習して登校 県内屈指の進学校である大分舞鶴は宿題の多さも有名で、選手の一日はめまぐるしい。三塁手の田中洸太郎(2年)は宿題を終える頃には日が変わる。だが、それだけでは勉強量が足りず、朝5時半から予習して学校に向かう。「大変だけど、充実している」。同様の日々を送った2020年度卒業の野球部の先輩は、22人のうち13人が九州大などの国公立大、2人が早大に進んだ。 文武両道を地で行くが、甲子園は未経験。だが、21年は近づいた。春の大分大会で30年ぶりに優勝し、夏も準優勝。代が替わった秋も準優勝で春秋連続で九州大会に出場し、すっかり県上位の常連校となった。 転機は20年8月の河室聖司監督(57)の就任だった。歴代監督にOBが多い中、大分上野丘高出身の指導者が伝統にメスを入れた。大分舞鶴では強豪校に対抗するため、1日約2時間の平日の練習時間をパワー強化ではなく技術の向上に集中してきた。ただ、河室監督は他校の指導者時代に「良い選手はいるが、終盤に疲れで(プレーの精度が)落ちて勝ちきれない」と見ていた。大分舞鶴の指導者になると、思い切って体力作りに時間を割いた。 トレーナーを週1回呼び、主に冬にやっていた体力トレーニングを年間通じて行うようにした。大分県栄養士会の指導で選手個々の食事メニューも見直し、体重がチーム平均で5キロ以上増えた。 ◇勝負弱さが消え、粘りが代名詞に その効果はてきめんで、試合後半のここぞの場面で適時打が出るようになった。21年秋の九州大会1回戦では準優勝した大島(鹿児島)に再試合で敗れたものの、最初の試合は九回に追いついて引き分けに持ち込んだ。入学時から体重が10キロ増えた3番打者の都甲陽希(はるき、2年)は「打球の飛距離と速度が上がった」。要所での勝負弱さが消え、逆に「粘り」が代名詞となった。 技術練習も効率化を進め、3班に分かれて分単位でメニューをこなす。三塁側のファウルゾーンで高い防球ネットに向けてフリー打撃並みに強振する練習と、グラウンドでの実戦形式の練習を並行して行うなど工夫を凝らす。 過去の取り組みを改善しながら、年間を通しての体力強化という新たな挑戦もした。躍進の裏には文武両道を貫きながら、グラウンドで進化した姿があった。頭脳も野球の技術も肉体も鍛え上げ、夢舞台への初切符が届くのを待つ。【吉見裕都】 ◇大分舞鶴 1951年創立。大分市内にあり、2020年度卒業生は7割強の225人が東大などの国公立大に合格した。1951年創部の野球部は20年以上、土日などに地域の清掃活動を続けている。