【法案版】「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~「成果に応じた新たな賃金制度」との誤報も列挙!
前回、法案要綱で全文チェックしました。
・「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~繰り返される「成果に応じて賃金を支払う新たな制度」という誤報
反対の電子署名運動もやってるのでそちらもよろしく。
さて、今回は法案で全文チェックやります!
まず、その前提にメディアの報道を調べると、たくさんありました。
適当に列挙します。
「誤報」の数々を見てみよう!
・NHK
政府は3日の閣議で、高度な専門的知識があり、年収が一定以上の人を対象に、働いた時間ではなく成果で報酬を決める、新たな労働制度の創設を盛り込んだ、労働基準法の改正案を決定しました。
・ライブドアニュース
働いた時間ではなく、成果で年収が決まるいわゆる「残業代ゼロ」制度の導入を柱とする労働基準法の改正案が3日、閣議決定された。
・FNN
労働時間ではなく仕事の成果で評価する、いわゆる「残業代ゼロ制度」を含む労働基準法改正案を、政府は3日の閣議で決定した。
・時事通信
政府は3日、働いた時間ではなく成果に応じて賃金を支払う新しい労働時間制度「ホワイトカラー・エグゼンプション(高度プロフェッショナル制度)」の導入を柱とする労働基準法改正案を閣議決定した。
・テレビ東京
政府はきょう、専門職として働き、高い収入を得ている人を労働時間の規制から外す、新しい制度の導入を盛り込んだ労働基準法の改正案を閣議決定しました。制度の対象者は年収1,075万円以上で研究開発やアナリストなどの専門職が想定されています。制度が適用された人は賃金が労働時間ではなく成果に応じて決まるため残業代が支払われなくなります。
テレ東・・、出だしはよかったんですが・・・。おしい。
・テレビ朝日
労働基準法の改正案の目玉「残業代ゼロ制度」が閣議決定されました。働く人にとっては、働いた「時間」ではなく、「成果」に対して賃金が支払われるというメリットがあります。
テレ朝は、書いてないものが労働者のメリットだと・・・。
まぁ、つまり労働者のメリットはないという報道というのであれば、そのとおりですが・・・。
・産経新聞
政府は3日の閣議で、労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を決める新たな労働制度「高度プロフェッショナル制度」(ホワイトカラーエグゼンプション)の導入を柱とした労働基準法改正案を決定した。
・日本経済新聞
労働基準法改正案は働く時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)を新設する。
・読売新聞
政府は3日午前の閣議で、働いた時間ではなく、成果に応じて賃金を決める「脱時間給(高度プロフェッショナル)制度」の創設を柱とする労働基準法改正案を決定した。
このように、どのメディアもほとんどが「成果に応じて賃金を決める」と報じていますね。
ちゃんと報道していたのは、
・しんぶん赤旗
「働いた時間ではなく、成果で賃金を払う」(安倍首相)といいながら一切規定がなく、労働時間規制の撤廃と残業代の支払い免除だけが明記されました。
赤旗が一番正確ですね。まぁ、他の報道機関と違って、立場を鮮明にできる強みでしょうか。
・朝日新聞
政府は3日、労働基準法など労働関連法の改正案を閣議決定した。長時間働いても残業代や深夜手当が支払われなくなる制度の新設が柱だ。
・毎日新聞
高収入で専門的な仕事に就く人を労働時間規制から除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」(残業代ゼロ制度)を盛り込んだ労働基準法改正案を政府が閣議決定した3日、法改正に反対する弁護士らが集会を開いた。
朝日と毎日の上記記事も「成果」うんぬんは書いてませんね。
そう考えると、他の記事の異常性が浮かび上がります。
では、全文チェックだ!【法案版】
この労基法の41条の2(5頁)が新しい制度です。
なぜか「高度プロフェッショナル制度」という制度名は消えていますが、これです。
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、
まずはこの委員会の設置が必要となる、と書いてあります。
当該委員会が委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項について決議をし、かつ、使用者が、当該決議を行政官庁に届け出た場合において、
委員会が以下に掲げる8項目について決議して、それを行政官庁=労基署に届け出る、と書いてあります。
第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であって書面等の方法によりその同意を得た者を当該事業場における第1号に掲げる業務に就かせたときは、
対象労働者の同意が必要であることや対象業務のことが書いてあります。
この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第3号及び第4号に規定する措置を使用者が講じていない場合は、この限りではない。
ここでは残業代が発生しないことや、休憩や休日の規定が適用されないということが書いてあります。
ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし
ここからは委員会が決議する8項目が列挙されます。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)
ここでは対象業務について書いてあります。
「その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」という記載がありますが、成果に応じて報酬が支払われるとは書いていません。
二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
対象労働者について書いてあります。
これにはイとロの2つあり、両方に該当する必要があります。
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
仕事内容が明確であること、という意味ですね。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
これがいわゆる年収要件です。
平均年収の3倍というところは法律に書かれますが、あとは省令に委ねられます。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(次号ロ及び第五号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
時間外労働時間を「健康管理時間」と変なネーミングにした上で、それを使用者が把握すること、ということが書いてあります。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
これがいわゆる健康確保措置というやつです。
次の3つから1つを選択すればいいということになります。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。
これの1つを取ればいいだけなんですが、これについては次の記事を見てください。
1日24時間働くのと、1年360日働くのと、どっちがいい?~残業代ゼロ制度の笑えない「健康確保措置」
ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし
五 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること
有給休暇を取らせましょうとか、健康診断などを受けさせましょう、というようなことが書いてあります。
六 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
苦情処理の機関を作りましょう、と書いてあります。
七 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
同意しないからといって、不利益に扱ったらダメよ、と書いてあります。
八 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
省令で定めたことも委員会で決議するんだよ、と書いてあります。
ここまで成果に応じた報酬が払われるという記載なし
前項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第四号及び第五号に規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。
これは2項です。
1項の第4号と第5号については労基署に実施状況を報告しなさいよ、と書いてあります。
第三十八条の四第二項、第三項及び第五項の規定は、第一項の委員会について準用する。
これは3項です。
引用されている条文は企画型裁量労働制のものです。
これらの規定を準用するよ、と書いてあります。
内容としては以上です。。。。