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国連専門家:「特定秘密保護法案は透明性を脅かすものである」ジュネーブ(2013年11月21日)

伊藤和子弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

「特定秘密保護法案は透明性を脅かすものである」

国連人権理事会が選任した二人の特別報告者が、日本国政府が国会に提出した特定秘密保護法案に関し、強い懸念を表明した。

深刻な懸念を表明したのは、国連「表現の自由に関する特別報告者」フランク・ラ・ルー氏と「健康への権利に関する特別報告者」アナンド・グローバー氏。

彼らは日本も理事国を務める国連の人権に関する機関・国連人権理事会から選任された強い権限を有する独立専門家だ。

透明性は民主主義ガバナンスの基本である。情報を秘密と特定する根拠として、法案は極めて広範囲で曖昧のようである。その上、内部告発者、そして秘密を報道するジャーナリストにさえ重大な脅威をはらんでいる

と、表現の自由に関する特別報告者のフランク・ラ・ルー氏は指摘した。

さらに

公共問題に関する情報を秘密にすることが正当であるのは、その情報が公開すされることで重大かつ実証可能な危険性があり、なおかつ、その危険性が情報を公開することによる公益性を上回る場合だけである。例外的に、情報が機密にされる必要があると当局が認めた場合でも、独立機関の審査が不可欠である。

という。フランク・ラ・ルー氏は公益目的で内部告発する公務員、公益のために活動するジャーナリストが法的な処罰や制裁を受けてはならないとさらに強調した。

グローバー氏は福島原発事故の経験から、

特に災害においては、市民が継続的かつ迅速に情報を提供されることは必要不可欠だ。それによって、市民が健康に関して正確な判断が下せるからだ

と指摘した。グローバー氏は、2012年11月に福島原発事故後の対応に関連して日本に事実調査ミッションを実施しており、スピーディ情報がいち早く、必要としている住民に届けられず、何週間も秘匿されたことをよく知っている。この出来事は、日本政府、特に官僚が、都合の悪い情報を秘匿するためには、国民の命や健康などこれっぽっちの痛みも感じずに犠牲にするのだ、という教訓を私たちに残した。そしてその反省もないまま、秘密保護法案を政府は通そうとしているのだ。

国連特別報告者の正式文書は国連のウェブサイトに掲載されている。

http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=14017&LangID=E

既に藤田さん&高橋さんという、世界的に活躍する人権分野のエキスパートの方々の訳で日本語になっている。

http://freedexjapan.wordpress.com/

国連専門家が日本が審議している法案についてこのようなかたちで意見表明をするのは極めて異例だ。

国際的な基準から見て、日本の秘密保護法制がいかに問題か、クリアされていない問題が多いか、是非知ってほしい。

こうした人権の専門家の声を一切無視して、法案の制定に突き進むなら、世界が日本の人権状況について懸念を深めていくだろう。軍国主義が台頭した、第二次大戦前の日本に戻っていくのか、と憂慮する海外の識者も少なくない。

政治家、メディア、そして市民が、このまま人権上大きな問題をはらむ法案を、深刻な懸念に目をつぶったまま通してしまうのか、改めて私たちの姿勢が問われていると思う。

弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。米国留学後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウを立ち上げ、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。

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