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騒がず近づかない静かな競馬観戦~東京シティ競馬が観客を入れての競馬再開へ【#コロナとどう暮らす

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
誰も観客がいない大井競馬場(提供:東京シティ競馬)

TCK、9月から指定席の一部の一般販売再開

 東京シティ競馬(以下、TCK)の愛称で知られる大井競馬場(東京都品川区)では、9月から指定席の一部の一般販売を再開する。

 8月20日11時からTCKオンランチケット(http://tck-ticket.pia.jp/)を通じて東京都在住の方のみを対象とし、購入できるのは1人2枚まで。座席は"密"を避けるため、前後左右1席ずつ空間を空けての利用となる。

 東京都での新型コロナウイルスの猛威はまだ陰りを見せたとは言い難いが、その中での実施となる。

 TCKでは指定席の有料販売の前段階として、8月からテスト的に40歳以上が加入条件の有料会員制クラブ「TCK ELDER CLUB」のメンバーを招待している。具体的な感染対策とはどのようなものなのだろうか?筆者はTCKに赴き、その様子を取材した。

大井競馬場のいたるところに大声禁止の案内がはられていた(筆者撮影)
大井競馬場のいたるところに大声禁止の案内がはられていた(筆者撮影)

 

誰も大声をあげず、静寂に包まれた観客スタンド

 取材日は観客を入れた競馬を再開した初日だった。TCKでは現在、観客スタンドが3つあるが、そのうちのL-WINGと呼ばれる棟の一部だけに客を入れ、残る施設には外部からの入場が一切できないように封鎖されていた。

 TCKはナイター競馬が行われることが多く、本来は会社帰りにお酒を飲みながら競馬も楽しめるのが売りなのだが、テスト期間中は場内の酒類の販売は禁止。いつもならビールを販売していたカウンターではネオンだけが物悲しく光っていた。

競馬場内は飲酒自粛のため、バースタンドはネオンは光るが休業中だ(筆者撮影)
競馬場内は飲酒自粛のため、バースタンドはネオンは光るが休業中だ(筆者撮影)

 感染予防対策は入念に行われていた。飲食物も持ち込みもできない。人がむやみに交錯しないよう、導線の案内が徹底されていた。指定席は2席並んで配列されているが、その片側には一直線にビニールテープが貼られており片方からしか出入りできないようになっていた。

 マークシートはもちろん、馬券を購入するときに使うペン類が台の上にきれいに並べられていた。そして、誰かが触ったペンを消毒するための係員も相当数いた。

並んだ2席の片側にテープがはられ導線が徹底されていた(筆者撮影)
並んだ2席の片側にテープがはられ導線が徹底されていた(筆者撮影)
マークシートもペンもみな
マークシートもペンもみな"消毒済み"(筆者撮影)

 場内はとにかく静かだ。いつもなら何かと騒がしいところなので場内放送の音が少々大きいくらいでちょうどいいのだが、この日の競馬場はまるで上映間際の映画館のように静かだった。

 パドックへ近寄ることもできず、映像を通じてかスタンドからガラス越しに見るように制限されていた。お客さんがあらわれた馬たちを評価しあう声もない。それどころか、レースが始まって馬がゴールを駆け抜ける瞬間も、掛け声ひとつなくスタンド内は静寂に満ちていた。

パドックは規制されて近づくことができない(筆者撮影)
パドックは規制されて近づくことができない(筆者撮影)

 TCKによれば、この日の入場観客数は204名とのこと。帰りがけに屋外に開放されている1階の観客席に寄ったが、こちらは若干ではあるがレースの攻防に声を出す人が確認できた。まぁ、それでも"騒がしい"には程遠く、ジョッキーたちが馬を叩くムチの音の音が響いていたのが印象的だった。

屋外の1階席の座席も
屋外の1階席の座席も"密"を避けるための案内が貼られていた(筆者撮影)

少しずつだが、有観客競馬へ踏み出している

 2020年は本来、TCKにとって70周年という記念すべき年であった。たくさんのイベントが計画されていたし、近年恒例のイルミネーションも実施予定だった。しかし、このコロナ禍ですべてのイベントは中止された。また、TCKにはパーティールームやグループ席で食事を楽しみながら競馬を観戦できるダイヤモンドターン等の娯楽施設もあるが、これらも再開する情報は入ってきていない。

 今のところ日本では新型コロナウイルスの影響で競馬開催が中止にはなっていない。中央競馬も、TCKの属する地方競馬も馬券の売上はインターネット発売により大崩れせずに堅調な数字を叩き出しており順調な推移をみせている。

 中央競馬は新潟競馬での観客動員を発表後、約1週間で取りやめている。その後、観客を入れる発表はない。このようなTCKの取り組みが中央競馬の観客入場再開のヒントになるといいのだが…。

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 前年比100%超を記録した日もある川崎競馬も観客を入れての競馬を再開させようとしている。少しずつだが、新しいかたちでの競馬観戦再開へと踏み出し始めている。

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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