岡山地裁、「研究不正告発で解雇」無効の仮決定~岡山大学事件続報

解雇無効
岡山大学医学部の研究者らに研究不正の疑いがあると指摘した同大学薬学部の教授が、「教員としての適性を欠く」として解雇されるという信じがたい事件については既にお伝えした。
この件については、この半年常に気にかけてきたが、ここにきて動きがあった。
岡山大の複数の博士論文について「データ改竄(かいざん)の疑いがある」との内部告発を行い、解雇された岡山大薬学部の元学部長と元副学部長が処分の無効を求めた仮処分申請で、岡山地裁(池上尚子裁判長)は6日、「解雇は無効」として、大学側に2人の給与の一部を支払うよう命じる決定をした。
出典:産経ニュース
これについて岡山地方裁判所は、論文が不正かどうか問う告発は公益性があるなどとした上で「解雇は社会通念上の相当性を欠いており、解雇権の乱用だ」と指摘し森山元教授と榎本元教授にそれぞれ給与を支払うよう命じる仮処分の決定を出しました。
一方で、地位の保全については、給与の仮払いが認められるので必要性がないとして却下しました。
出典:NHKニュース
詳細は、この問題を追っているサイエンスライターの片瀬久美子氏のブログに詳しいので、ぜひご覧いただきたい。
大学は争う構え
この決定に、大学は争う構えのようだ。
仮の地位が認められなかったことは正当ですが,仮払い請求が一部認められたことは誠に遺憾に思います。今後の不服申立手続きや地位確認訴訟において,引き続き本学の正当性を主張していきます。
研究不正を告発したことが、大学の名誉を害する行為であり、教員としての適性を欠くことになるというのは、岡山地裁ならずとも、理解しがたいことだ。
もしも、研究不正を告発する行為が、名誉を害する行為となるとの先例ができるならば、これが抑止力になり、今後研究不正を告発するという行為が行いにくくなってしまう。これでは日本が「研究不正大国」として不名誉な評判を得てしまうことにもつながりかねない。地位確認訴訟の動向を注視していきたい。
こうした事態が発生するのは、制度の不備が原因でもある。文部科学省や研究資金助成機関(ファンディングエージェーンシー)は、こうしたことがないよう、制度を改善してほしい。
苦しい状況におかれた森山先生たちの精神的な負担を思うと、心が痛む。一刻も早く研究現場に戻ることができることを心より願う。
現在、森山先生を支援する会が活動を行っている。この件に関心がある方はぜひホームページをご覧いただきたい。