ドラスティックな業務効率化

業務効率化、生産性向上、時短……。日本の企業は今、かつてないほど長時間労働の文化をモディフィケーションしろ、と政府からも世間からもプレッシャーをかけられています。「残業代ゼロ法案」と揶揄される労働基準法改正案の存在もあり、「時間ではなく成果で評価する」という動きも加速中。つまり、着目するのは「時間」ではなく「成果」である。これが昨今の潮流です。

企業の現場に入り、「目標の絶対達成」をスローガンにコンサルティングする私は、個々人が持つ「目標」達成に向けた行動以外、ほとんど意味がないと割り切るべきだと考えています。これぐらい大胆でイノベーティブな仕事のやり方をしない限り、毎日21時、22時まで仕事をしている人が、定時の18時ぐらいまでに仕事を終えることなどできません。「残業ありき」で仕事の計画を立てている限り、30分や1時間程度の残業削減はできても、ワークライフバランスを実現するなどといった劇的な変化を日本企業にもたらすことなどできないのです。

企業には「中期経営計画」や単年度の「事業計画」など、経営計画が存在し、その計画実現のために、部署ごとに目標が割り振られます。そしてその目標を達成させるために、個々人の目標が配分されます。もちろんこれは理想であり、現実とは多少異なるかもしれませんが、基本の流れはこうだ、という認識が不可欠です。頭の中に、目先の仕事の「上位概念」を意識する習慣を持つようにしましょう。つまり、その仕事の意義や目的です。

何のためにこの仕事を自分はするのか? 本当にこの仕事は、会社の付加価値アップに寄与するのか? 顧客満足や社員満足に貢献するのか? の問いかけを続けるのです。上司が勝手に創造した作業を何も考えずにこなす「従僕」になってはいけません。”使用人根性”の人が業務効率化など成し遂げられる時代ではないし、奉公人タイプの人が上司よりも早く帰宅していい風土を持ちえないのです。日本の企業は。

ドラスティックに仕事の生産性を上げるために絶対必要なのは、前述した”使用人根性”を捨てることです。仕事を進めるうえで、主導権を握ること。そして主導権を握るためには「時間単位」で仕事をするのではなく、徹底して「成果単位」に意識を変えることです。時間管理術や生産性アップの書籍には、「資料作成のコツ」「メールの書き方」「会議の手順」「タスク管理」……など、細々としたことが書かれていますが、すべて小手先のテクニック。前述した「使用人」のための仕事術です。「時間単位」で物事をとらえるのはやめましょう。

そもそもその資料を作る必要がないのであれば、資料作成を短くするコツを習得しても意味がありません。やるだけ職場の雰囲気を悪くするような会議なら、その会議の時間を短縮しても焼け石に水。仕事のやり方に革命を起こすことはできません。

以下にポイントを整理します。

■ 仕事の「やり方」ではなく「あり方」を考える

■ ノイズをシャットアウトして淡々と仕事をこなす

■ 時間外にプライベートの予定をすべて入れる

仕事の「やり方」ではなく「あり方」を考える

まず、組織の、自分自身が出すべき成果は何かを正しく捉えます。その成果、目標を達成させるための行動計画、プランを書き出します。いわゆる「PDCA」の「P」の部分です。これが不明瞭であるなら上司や経営者に尋ねましょう。最初のボタンをかけ違えると、その後すべての作業がおかしくなります。仕事の「やり方」を考える前に、「あり方」を問うのです。

仕事のプランは、ほとんどの場合、タスクではなくプロジェクトになります。したがって「タスクマネジメント」ではなく「プロジェクトマネジメント」の発想で仕事を処理していきます。時間単位、タスク単位で物事を見つめていると、仕事の全体観がわからなくなります。先述したとおり、目先の仕事の目的は何か、何のためにこの仕事は”ある”のか? という「上位概念」がわからないまま作業することになってしまいます。

ですから、このときに使用すべきツールは、週間や月間のスケジュール帳などではなく、プロジェクト管理用のリーフレット。システム手帳などに専用リフィルを入れて使用したいですね。

1ヶ月単位で仕事を考えたとき、自分自身の出すべき「成果」から逆算して、行動プランを立てます。そして、時間や人などの資源配分をするための時間はどれぐらい必要かを考えます。この時間は、短くて1時間。長くても4時間。つまり「半日」で終わると考えてもよいでしょう。

ノイズをシャットアウトして淡々と仕事をこなす

仕事を進めるにあたって、きわめて重要なのは、ノイズキャンセリングです。「この仕事は何のためにやっているのか?」「本当にこんなことやって意味があるんだろうか?」などといった思考ノイズは、生産性をアップするうえでの天敵です。自分自身で主体的にプランニングできていないから「やらされ感」などを覚えるのです。最初のボタンのかけ違い、です。どんなに途中で「違うかも」「遠回りかも」と考えても、よほどのことがない限り自分がプランニングした仕事を淡々とこなしましょう。F1レーサーと同じように、ピットインするまでは全力疾走するのです。

仕事の効率を悪くするノイズもすべてシャットアウトです。他者から声を掛けられそうな空間にいるなら、その空間から距離をおくのも手です。距離をおくことができないなら、この時間は集中させてと周囲に断りを入れておきましょう。パソコンのネットワークは必ず遮断しましょう。一定の作業が終わるまで、携帯電話やスマホの電源も切るのです。ネットに繋いだままで主導権を握った仕事ができるほど、現代は甘くないのです。

時間外にプライベートの予定をすべて入れる

ドラスティックに業務効率化するために絶対に不可欠なのは、初心に戻ることです。頭をリセットすること。パソコンでたとえるなら、出荷時の状態に戻すことです。これまでの延長線上で考えている限り「ドラスティック」などとは言えません。他者から強烈な批判を食らうぐらいのことをしないと、革命とかイノベーションを起こせないのです。

そういう意味からすると、仕事の「あり方」を考え、月初に1ヶ月の仕事のプランニングをするときも、毎回「頭の再起動」をしましょう。毎月必ず仕事の「あり方」を自問自答するのです。そうすることで、強制的に頭を整理させることができます。周囲に振り回されかけていた自分を取り戻すことができます。

ちなみに、いつも「残業ありき」で仕事をしている人は、この発想もリセットさせます。残業、休日出勤など、いわゆる時間外労働はすべて計画外にするのです。

時間外労働は、野球の「延長戦」です。したがって、毎日残業する人、しょっちゅう休日出勤をしている人は、9回裏で決着をつけずに、いつも延長戦に入ることを見越して試合をしているような選手なのです。このような発想でゲームをしていれば「試合に勝つ気はないんだろう」と言われても仕方がありません。本当に仕事の成果を出す気であるなら、延長戦――時間外労働を見越した計画など立てられないはずです。

この決意を不動のものにするため、平日の夜は資格の学校へ行くとか、英会話のスクールへ行くとか、友人との食事、家族との外食、子どもを風呂に入れる、宿題を見る……などのプランを入れておきます。これも1ヶ月がスタートする前にやっておきます。前述した「長くても4時間(半日)」内で終わる作業でしょう。

とはいえ、もちろん日々、自分がプランニングした以外の仕事が舞い込んでくることがあります。計画外の仕事に振り回されそうになることもあるはずです。しかし、このときも必ず、仕事の「あり方」を問いましょう。その仕事の意義は? 目的は? 「その仕事をやるべきかどうか」ではなく「その仕事があるべきかどうか」を考えるのです。”使用人根性”から脱却できるかどうかが問われます。「うまいこと使われる人」になってしまうと、上司が思いつきで依頼してきた仕事に終始振り回されます。

計画外の仕事が舞い込んできたとき、基本姿勢として、よほど緊急の場合を除き、すぐには対応しないことです。自分が月初に作ったプランを優先します。そして週のはじめ(月曜日)まで待ち、月初に立てたプランを再考するのです。このとき、自分の出したい成果が手に入りつつあるかも見直します。目標に近づいていないのであるなら、プランを改善します。これらの作業は短くて「20分」程度。長くて「1時間」でしょう。

月初に4時間かけてプランニングし、各週の頭に1時間かけてプランの見直しをし、後はノイズキャンセルして淡々とプラン通りに仕事を処理する。こうすると、1ヶ月の仕事の「あり方」「やり方」は長くても7時間以内に終わるため、本記事のタイトルを『1ヶ月の仕事を1日で終わらせる技術』としました。

主導権を握るために「譲歩の返報性」を利用する

最後に、主導権を握って仕事をするコツについて。

最も重要なことは主導権を握って仕事をすることです。繰り返しますが、誰かに主導権を握られたままでイノベーションなど起こせるはずがありません。とはいえ、仕事には想定外のことはつきものです。自分のプラン通りに仕事が進まなくなるようなシーンに直面することもあるでしょう。

そのときの姿勢として、必ずやってもらいたいのが「いったん断る」ことです。目的もはっきりしない、本当に職場のためになるかどうかもわからない仕事を上司からごり押しで「やれ」と言われた場合、どうせやらなくちゃいけないだろうと思っていても、いったん断ります。強い難色を示すのです。もちろん「イヤだからイヤ」「気が進まないから無理」という理不尽な断り文句は通りません。

「私はこの成果を出すために、キッチリ月初に計画を立てています。もちろん計画外のことはすべてやらないというわけではありませんが、この作業は私が与えられたミッションとは異なる気がします」

このように言えば理屈が通っています。理屈が通らないことを「理不尽」と呼ぶので、誰が理不尽なことを言っているのか、ここで明確になります。それに何より、「こいつには、テキトーに仕事をお願いすることはできないな」「面倒くさい奴だな」と上司に思わせる効果も発揮します。

相手がそれで折れてくれればいいですが、たいていの場合、「そこを何とか頼むよ」「今回だけは私の顔に免じてゴメン」などと言ってごり押ししてくることでしょう。それでも断ると、相手との信頼関係に傷をつけてしまいますから、少し演技でもして「かしこまりました。何とかします」と苦渋の決断をしてください。「本当はムリだけど、何とかします」というニュアンスをこめるのです。

こうすることで「返報性の原理」が働きます。「譲歩の返報性」です。こちらが譲歩したわけですから、先方は少し後ろめたい気持ちになります。

「なんだか悪いね。無理を言ってしまったようで」

「いえいえ、そんなことはありません。今回は……。そうですね。何とか調整をつけるようにします」

「堅物」「わからず屋」というレッテルを張られると、他者から協力を得られなくなり職場で孤立してしまいます。したがって、あまり引きずらずに、折れるときはすぐに折れます。柔軟性があるところを示すのです。「使用人」っぽく扱われることを防ぐことができます。

1ヶ月の仕事をきっちり遂行するのに、考えるための時間は長くてトータル「7時間」。だいたい1日の仕事量です。あとは、この「7時間」で考えたプランどおりに淡々と仕事を処理していく。こうすることでドラスティックに仕事の生産性をアップすることができます。主導権を握り、ストレスフリーな仕事をこなして、ワークライフバランスを実現させましょう。