■人身事故の原因は「歩きスマホ」?

先日ネット上に拡散した「事故の原因は歩きスマホ」について、産経新聞から取材を受けました。

新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)は「自分が怖いとか、有益だと感じているものには思い込みも入りやすく、『ほらね』と飛びつき、何かを言いたくもなる」と指摘。

「立ち話のようなネット利用ではなく、少し慎重に情報を扱わないと、今後も重大な人権侵害やパニックを引き起こす恐れがある」と話している。

出典:なぜ?ネットに誤情報拡散 人身事故の原因は「歩きスマホ」 産経新聞 6月27日

■流言・デマが広がる条件

流言とは自然に広がる不確かなうわさ、デマとは誰かが意図的に広げる作り話ですが、区別しないで使われることもありますね。

  1. 重要であること。命や財産、政治、いつも使っているネットのツールやお店のことなど、その人にとって重要なことであるほど、流言やデマは発生しやすくなります。
  2. あいまいさ。はっきり分かってれば良いのですが、良く分からないことに流言やデマが発生しやすくなります。今、起きたばかりで、正式な発表も大手マスコミの報道もない状態も、あいまいな状態です。
  3. 不安。人々の不安が高いほど、流言やデマは発生し、広がっていきます。

■人は、自分の心に合った情報を集める

なぜ災害発生時には、わざわざ怖い話が広がるのでしょうか。それは、人間が自分の心と現実を一致させようとするからです。「人は怖いと感じている時には、怖がってよい「事実」が欲しくなります」(人は世界を見たいように見ている:嘘を信じる、デマを流す「原因帰属理論」「認知的不協和理論」の心理学:Yahooニュース個人有料)。

誰かを憎めば、その人の悪い情報が欲しくなります。誰かが好きなら、良い情報が欲しくなります。人は、自分の考えにあった情報を探し出します。どんな情報も、自分の心に合うように解釈してしまいます。

「歩きスマホは危ない」と思っている人は、「歩きスマホで死亡事故」という情報に素早くアクセスします。近頃の若者のマナーはなってないと不快に思っている人は、「江戸しぐさ」の話に飛びつきます。

■流言、デマが広がる心理

  1. 情報欲求の高まり。人は、いつも情報を欲しがります。新しい情報を欲しがります。不安が高まった時や、状況が大きく変わった時は、なおさらです。
  2. 伝達欲求の高まり。人は自分が知った新しい情報を人に伝えたいと思います。おしゃべりは楽しいですし、新しく役立つ情報なら、その人のためにもなります。新しい情報を持って伝える人は、人から高く評価されやすくなります。
  3. 不安感情の正当化。帰宅途中に交通事故など目撃すれば、興奮して家族に話すでしょう。情報を伝えたいと思いますし、話すことで自分の恐怖や不安が下がります。
  4. 興奮状態によるチェック不足。感動であれ、驚きであれ、強い感情がわくと、冷静に真偽をチェックできなくなります。

■インターネットで流言、デマが広がる理由

ネット以前であれば、口コミでゆるやかに広がりました。ネットが誕生しても、最初はみんながホームページを持っていたわけではありません。またサイト更新は、ちょっと面倒です。手間がかかるということは、時間がかかって冷静になり、チェックもしやすくなるということです。

ブログが登場して、更新は楽になり、ユーザーも増えました。でも、タイトルを考えるだけでも、一手間はかかります。1行、2行の新しいページもあまりないでしょう。

ツイッターは、タイトルもいらず、1行でも十分です。気軽に投稿できます。さらに、いつも持ち歩くスマホなら、ちょっと知った情報をいつでもすぐに投稿できます。

インターネットは、世界に開かれた場です。ところが、インターネットはとても個人的な場に感じます。まるで友達とおしゃべりするようにツイートし、リツイートし、誤った情報でもみるみる拡散していくのです。

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