「うつくしま、ふくしま」

「旅すればふるさと ほっとするふくしま」。観光キャンペーンの言葉通り、ふくしまの美しい風景は、日本の心のふるさとです。でも、「原子力災害は、美しいふくしまを一変させました。さらに、風評被害は、地域の活力を奪い、私たちの心までも深く傷つけました。」(3.11ふくしま復興の誓い2012「ふくしま宣言」より)。

東日本大震災のあと、訪問した岩手や宮城の方々からは、「また来て下さい」と誘われました。「ご家族で」「きれいにかたづいたら」「季節の良いときに」「今度祭りがあるから」と。けれど、福島県で聞いた言葉は、

「みんなで来てくださいとは言いにくい。でも、来てくれたら嬉しい」

震災後、多くの学校の若者たちが東北の被災地にボランティアとして入りました。大型観光バスで続々と被災地入りした学校も、いくつもあります。すばらしいことです。でも、ある学校の関係者から聞きました。「福島県には、連れて行きにくい」。

福島県を訪問したある人は、「今回、私の娘は怖くて連れてこられませんでした。ワハハ。」と笑ったそうです。悪気はないのは分かりますが、その言葉を聞いていた人にも娘がいて、福島県内に住んでいることを、彼は知らなかったのでしょう。

私の家族は、2011年8月に福島県で開催された「第35回全国高等学校総合文化祭」に参加しました。大変楽しい時間を過ごしたようです。福島県のみなさん、その節は大変お世話になりました。ありがとうございました。

「福島県民の私たちは、見えない敵と戦っている」

見えない敵とは、放射線のことでしょうか。それとも、私たちの心のことでしょうか。もちろん、危険には近づくべきではありません。放射線を正しく怖がる必要はあります。君子危うきに近づかず。けれど、偏見で人々を傷つけるのは、最悪です。

除染情報プラザ(福島市)
除染情報プラザ(福島市)
除染除去物(土や草など)を収納する袋(除染情報プラザ)
除染除去物(土や草など)を収納する袋(除染情報プラザ)
除去物収納袋とは
除去物収納袋とは
飯舘村のおいしい飯舘牛を食べられる日はいつになるのだろう
飯舘村のおいしい飯舘牛を食べられる日はいつになるのだろう

ただ問題は、偏見を持っている人は、自分の意見を偏見だと気づかないことです。その人にとっては、隠された真実や、ある種の統計的結果や、科学的事実と感じているのです。私自身も含めて、私たちは偏見から自由になることはできません。

放射線や原発に対しては、様々なご意見があるでしょう。それぞれのご意見は尊重したいと思います。でも、今傷ついている福島県への愛を表現できない人には、どのような意見であれ、その意見を述べる資格はないと、私は思うのです。

福島県内で全国から人が集まる野外イベントが開催された際には、主催者側に「人殺し」との電話もかかってきたと聞きました。反対意見は良いと思うのですが、なぜこんな表現になってしまうのでしょうか。これに類する表現は、2011年に終わったわけではありません。今も、時折聞かれることです。

原発事故が発生したとき、もしもその地域と、住民の命と生活と心を守ることができないとすれば、その一点をもって、人類はまだ原子力を使えるほど進歩していなかったことになるでしょう。私たち日本社会全体のあり方が、問われていると思います。

どんな大きな出来事も、いずれ記憶は薄れます。地元の人にとっては昨日のような出来事でも、他地域の人にとっては、忘れかけた出来事にもなりかねません。「みんなの記憶に鮮明に残っている間に、ふくしまの復興を進めたい。でも、もしかしたら間に合わないかもしれない」。苦悩の表情で、ある福島県民は話してくれました。

放射能ジョーク

ジョークや漫才、コメディーやコント。その中には、病気ジョーク、病院コメディー、交通事故や沈没、爆発コント、もっとひどいお葬式コントもあります。もちろん、家族を亡くした直後や、大事故直後に見る気にはならないでしょうが、普段は笑いながら見ています。社会は、病気や事故や死をユーモアで表現することを許しています。

けれど、放射能ジョーク、原発事故コントは許されません。それは、なぜでしょうか。

私たちは、普段あまり意識していなくても、病気も事故も葬式も、誰もが経験することだと感じ取っています。どの人にとっても、どの家庭にも訪れる悲劇です。

けれど、地域内の原発事故は、原発のない地域では起こりえません。完全に他人事として笑い話にされるとき、そこにユーモアの精神は認められません。だから放射能ジョークは許してはいけないのだと、私は思うのです(もちろん、広島、長崎の経験も影響してるでしょうが)。

「笑う者と共に笑い、泣くもとと共に泣きたい」と願っています。

避難と迷い

福島県外への自主避難も続いています。避難してもしなくても、避難先から帰郷してもしなくても、様々な思いが交錯します。「自然災害は人を団結させるが、原発災害は人を分断する」(飯舘村の菅野典雄村長)。みんなが苦しみながら、ぎりぎりの判断をしています。

避難される方は、家族親戚、隣人知人を残して、避難します。避難することで、負い目を感じる人もいるでしょう。避難しないことで、負い目を感じることもあるでしょう。避難してもしなくても、誰かがひどいことを言うかもしれません。

避難先から戻るのも、大きな決断です。経済的問題もあります。商売の問題や、子どもの進路の問題もあります。避難先で、就職、進学するのか、ふるさとに戻るのか。

帰郷するときには、避難先で知り合った同郷の人々と別れることになります。その人達とは、異なる決断をしたことになります。一つのことを決めるたびに、心の負担が生まれます。

福島県からは、当地新潟に多くの方々が避難してきています。隣県であり、同じ東電の原発(柏崎刈羽原発)を持つ県であり、震災直後、県知事が「何人でも受け入れる」と表明したからでしょう。

子ども達からの励ましの言葉(鶴ヶ城公園)
子ども達からの励ましの言葉(鶴ヶ城公園)

各地の学校に子ども達も入学しています。2年前には、すばらしい希望に満ちた言葉がたくさん聞かれました。「ボクが、ふくしまを復興させるぞ!」。

でも、2年たった今、元気な言葉が少なくなっているような気がします。避難先の学校に進学を決めた子達もいます。ふくしまの復興は、残念ながら順調とは言えません。子どもに責任があるのではなく、子どもに希望を与えられない大人の責任です。

みんなちがってみんないい

避難に関して、様々な決断をする人がいます。また、受けた被害の大きさや、受け取る保証金の額も人それぞれです。

南相馬市役所の横断幕
南相馬市役所の横断幕

福島県内のある演劇関係者から聞きました。「私たちは「みんな違ってみんないい」(金子みすゞ)と言ってきた。今こそ、その精神を実践するときだ」。福島県内の色んな人から聞きました。

「自分は責任上どんなことがあっても一番最後まで避難しない。でも避難を決めた人は偉いと思うし、応援する」。

「福島から日本を変えるんだ。福島の心意気を見せてやる」。

「白虎隊のように、大河ドラマの新島八重のように、福島県民は不器用だけど、一度決めたらまっすぐ進むんだ」。

2011年には、福島県で作られた花火が、愛知県で打ち上げ中止になりました。翌年2012年9月、 福島県産の花火が、一年越しに、愛知の空に花開きました。こんな当たり前のことに、一年もかかってしまいました。でも一年の間に、双方の町で交流が深まりました。この一年は無駄ではなかったのです。

よみがえれわたしたちの海

震災から半年後、福島県いわき市小名浜にある「アクアマリンふくしま」を訪問しました。ようやく再開できたアクアマリンには、がれきで作ったモニュメント「がれき座」が力強く立ち、そして青空をバックに元気いっぱいはためいていた旗には、「よみがえれ!私たちの海」とありました。

よみがえれ私たちの海とは、どこの海でしょうか。福島県外の私たちは、どう考えたら良いでしょうか。よみがえれ、いわきの海。よみがえれ、ふくしまの海。いえ、よみがえれ東北の海。そして、よみがえれ、わたしたち日本の海。

HHK大河ドラマ「八重の桜」で盛り上がる福島県には、大勢の観光客が訪問し始めています。

「前を向き、そして明日へ」(3.11ふくしま復興の誓い2012)。ふくしまにも誰にも、孤独な戦いをさせたくありません。私たちみんなで、ふくしまへ。私たちみんなで、日本全体の問題として、考え続けていきたいと思います。 アイ ラブ ふくしま

関連:「朝日新聞で暗号!?:その真意は何か? バベル状態の原発問題に今必要なこと」(Yahoo!ニュース碓井)

よみがえれ!私たちの海(アクアマリンふくしま
よみがえれ!私たちの海(アクアマリンふくしま

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3.11ふくしま復興の誓い2013「ふくしまから はじめよう」

ふくしま親学チャンネル ほっとハグ

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