「出版不況」は本当か?

先日、2014年の出版市場についての発表がありました。相変わらず書籍・雑誌とも低落傾向は収まらず、前年比4.5%減の1兆6065億円という結果となりました。これは、統計調査を始めた1950年以降、最大の落ち込み幅ということです。具体的には、書籍は前年比4.8%減の6億4461万冊/同4・0%減の7544億円、雑誌は同6.4%減の16億5088万冊/同5・0%減の8520億円という数字になっています。

こうした状況を各紙は以下のように伝えています。

朝日新聞「雑誌、売れない…前年比大幅減 書籍ともども増税に泣く」

東京新聞「出版販売最大の4.5%減 14年書籍・雑誌 10年連続前年割れ」

読売新聞「書籍・雑誌販売額ピークの6割『好転兆しない』」

日経新聞「出版販売4.5%減、14年 過去最大の落ち込み幅」

産経新聞「出版物販売額、10年連続で減 消費増税で過去最大の落ち込みに」

このデータをまとめた業界団体の出版科学研究所は、この要因を消費税増税やインターネットの普及にあると発表しています。まぁそうでしょうね。また、日経新聞のみ「活字離れ」が要因だと書いていますが、これほどスマートフォンが普及してネットで文章を読んでいる時代にそうは言い切れないでしょう。

なお、各記事で触れられているのが、女性ファッション誌の不調です。なかでもギャル雑誌の休刊が騒がれているようですが、こうしたことについては昨年末に私も書きました。ギャル誌だけでなく赤文字雑誌も厳しいことは、そのときにお伝えしたとおりです。

「ギャルはこのまま終わるのか?――相次ぐギャル雑誌の休刊とギャルの激減」

赤文字4誌の出版部数推移
赤文字4誌の出版部数推移
山本美月が表紙の『CanCam』2015年2月号
山本美月が表紙の『CanCam』2015年2月号

ファッション誌の低調はおそらくスマートフォンによるものなのですが、なかでも個人的に注目しているのは写真型SNS・Instagram(インスタグラム)の影響です。2000年代のファッション誌はモデルの人気によって好調を維持してきた側面が強いのですが、この機能がネットに移行しているのです。2000年代後半はブログ、そして一昨年あたりからはInstagramに移ってきているように感じます。たとえば、水原希子さんローラさん梨花さん長谷川潤さん等々、人気モデルが続々とInstagramを利用して自己発信しています。コメント欄はあるものの、写真ベースなので荒れにくいために有名人も使いやすいツールだと思います。今後は、『CanCam』専属の山本美月さんがどのタイミングで使いはじめるかが注目でしょうか。

電子出版との関係

出版科学研究所のデータは、紙の出版物を扱ったものなのでそこに電子出版は含まれません。これを勘案する必要があるでしょう。それを踏まえたうえで注目すべきは、朝日新聞社デジタル本部の林智彦さんの以下の記事でしょうか。

『THE PAGE』 林智彦「売り上げも書店数も減少続く 「出版不況」の現状は?」

電子書籍市場は、まずまず順調に伸びてきています。電車のなかでKindleなどのタブレット端末で本を読んでいるひとを見かけるのも、珍しいことではなくなりました。私も昨年Kindleを購入してから、それまで以上にマンガを購入するようになりました。読みなおすことが少なく何巻も続くマンガにとって、電子出版は非常に適していると感じます。

朝日新聞社の林さんは、マンガの電子出版についても興味深い記事を寄せています。マンガ市場の四分の一を電子書籍が占めるほどに成長してきているのです。

『CNET Japan』 林智彦「ついにキャズム超え--コミック市場の4分の1は、すでに電子書籍になっていた」

なお、昨年の出版市場データでも、マンガに限れば前年比1%増と発表されています。雑誌は売れておらず電子雑誌では無料化の流れも見受けられますが、それでも紙だけでも伸ばしているのです。もちろんマンガも出版点数(商品数)がピーク時の倍近くまで増えたという状況もありますが(つまり一点あたりの売上は落ちている)、経年的に見てもそれほどひどい状況には思えません。

また、とくにマンガは映像化やグッズ販売によって、出版社はひとつのコンテンツをいかにマルチユースするかということにもとても意識的かつ積極的です。DOWANGOと合併したKADOKAWAも売上の三分の一以上が非出版事業であるように、出版社は徐々にコンテンツ制作のプロダクションになりつつあります。

出版販売の減少を踏まえて「出版不況」などと言われたりすることも多いですが、現在は簡単にそうとは言い切れない状況なのです。