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相模原障害者殺傷事件・植松聖被告の衝撃的な獄中自筆漫画

篠田博之月刊『創』編集長
植松聖被告が獄中で描いた漫画の一部(筆者撮影)

 相模原障害者殺傷事件・植松聖被告から昨年に続いて青い表紙の獄中ノートが送られてきた。今回のには、彼が描いた漫画が描かれていた。一昨年、障害者19人を殺害したその動機を自分なりに漫画に描こうと考えたようだ。漫画は相当のページ数にわたるのだが、そこから半分くらいのカットを割愛して14ページにまとめ、2月7日発売の月刊『創』3月号に原画のまま掲載した。この記事の冒頭に掲げたのは、その中の1コマだ。

 

植松被告の青い獄中ノート
植松被告の青い獄中ノート

 彼のイラストについては『創』だけでなく新聞やテレビでも紹介されたが、ストーリー漫画は初めてだ。衝撃的なのはそのことではなく、この漫画を読むと、あの事件及び植松被告についてのイメージがいささか変わる。その意味では、植松被告ないし彼の犯行を理解するには貴重な素材と言えよう。

犯行直後に投稿したツイッター
犯行直後に投稿したツイッター

 植松被告は犯行直後にツイッターに「世界が平和になりますように」という投稿を行っているのだが、あの凄惨な事件と世界平和がどう結びつくのかほとんど人が不可解だとしか思わなかったろう。しかし、今回の漫画を読むと、彼の優生思想と言われているものは、今まで思われていたものとは少し違うように見える。障害者への認識だけでなく、人間社会そのものへのある種の虚無が漂っているようにも見えるからだ。

 ここに掲げた1カットだけでは意味はわからないと思うので、ぜひ発売中の『創』をご覧いただきたい。相模原事件は発生からもう1年半。私が植松被告と密に接触するようになって半年だが、いまだにあの犯行についてはわからないことが多い。事件は急速に風化しつつあるのだが、衝撃的な事件だけに風化させてはいけないと思う。

画像

 もうひとつここに植松被告が描いた獄中の食卓のイラストを掲げた。『創』には同じ構図で色のついていないものを掲載したが、これはその後本人が彩色したものだ。実は植松被告は色をつけるのを嫌がっていた。彼の今の生活は、薄く力のない生活で、色のないイラストこそ、その現実のイメージに近いというのだ。彼のイメージする獄中生活がどんなものなのか知るためにも興味深い指摘だが、この彩色したものは『創』3月号の校了後に届いたものだ。せっかくなので、ここに掲げることにする。ただ、こうして見てみると、確かに色のないほうがリアルに見えるから不思議なものだ。

 植松被告は、間もなく弁護側が申請した精神科医による精神鑑定にかけられる。昨年9月号から『創』には彼の手記や手紙を連載してきた。彼についてはいろいろなことがわかってきたのだが、あの犯行は結局、病気によるものなのか、そうではないのか。その一番根本的な部分についてさえ、明確な答えは出されていない。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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