ユニセフ(国連児童基金)は2016年6月7日に『Perils and Possibilities: Growing up online(リスクと可能性:インターネットとともに育つ)』という調査結果を発表した。

これは 世界25カ国の1万人以上の18歳の若者を対象にした意識調査の結果をまとめたもので、「つながる」世界において育つ若者たちが、 ネット上のリスクについてどう認識しているかを明らかにしている。 対象国はアルバニア、アルジェリア、ブラジル、ドミニカ共和国、エルサルバドル、ガーナ、グアテマラ、インド、インドネシア、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、マダガスカル、マレーシア、モンテネグロ、モロッコ、ナミビア、パラグアイ、フィリピン、セルビア、タイ、ウガンダ、英国、米国、ベトナム。日本は入ってない。

ユニセフが支援する病院の支援センターで、カウンセリングの順番を待つ17歳の少女と母親。少女はオンラインで出会った男性に連れ去られ性的虐待を受けた。(マダガスカル)(C) UNICEF_UN015559_Prinsloo
ユニセフが支援する病院の支援センターで、カウンセリングの順番を待つ17歳の少女と母親。少女はオンラインで出会った男性に連れ去られ性的虐待を受けた。(マダガスカル)(C) UNICEF_UN015559_Prinsloo

同調査によると「18歳の10人に8人が、子どもはネットを通じて性的搾取の被害に遭ったりだまされたりする危険があると認識しており、そして同年齢の10人に5人が友達がネット上でリスクのある行動をとっている」と考えていることが分かった。

回答した若者の90%近くがネット上のリスクを避けられると回答するなど、若者たちがネット上で身を守ることについて自信をもっている、という結果も出ている。そして、約10人に6人が、ネット上で人と知り合うことは、ある程度またはとても重要だと回答した。しかし、 相手が身分を偽っていた場合に確実に見抜けると答えたのは36%に留まった。

また女子の回答者の67%は「ネット上で性的な内容のコメントや要求があったら不安」だと答えたのに対し、男子ではその割合が47%だった。さらにオンラインで実際に危険な目にあった時に「親や先生に相談するという回答よりも、友達に相談する」という回答の割合が高かった一方、「友達がオンラインで危険な目にあった時にどのように助けるか確実に知っている」と答えたのは半数以下だった。

主要な調査結果

■「子どもはネットを通じて性的搾取の被害に遭ったりだまされたりする危険がある」と考える回答者の割合は、サハラ以南のアフリカとラテンアメリカでは約3分の2であったのに対し、中東・北アフリカでは3分の1だった。

■「友達がネット上でリスクのある行動をとっていると考える」と回答した割合は、サハラ以南のアフリカとラテンアメリカでは約3分の2であったのに対し、英国・米国では3分の1だった。

■英国・米国では94%が「ソーシャルメディア上で自分を守ることができる」と回答しネット上のリスクから身を守る自信を示した割合が最も高かった。

■「ネット上で人と知り合うことが大切だ」と回答した割合が最も多かったのがサハラ以南のアフリカ(79%)で米国・英国では63%が「そう思わない」と回答。

■中欧諸国では「ネット上で危険な目にあったとき友達に相談する」との回答が63%だったのに対し「親に相談する」が46%、「教師に相談する」が9%だった。

誰もがネットに接続できる時代

全世界でスマホは年間10億台以上販売される。それにともなって大量の安い中古スマホ端末も流通したり兄弟や親の古い端末をもらったりと、子供であっても誰もがスマホや携帯電話を所有できるようになった。さらに新興国ではプリペイドカードSIMが主流であるため簡単に購入できるし、カフェや学校、駅など子供が簡単に出入りできる場所では無料のWi-Fiも多く、誰もが簡単にネットに接続できる。日本や欧米の子供以上に新興国ではスマホが普及しているところも多い。

ソーシャルメディアにも簡単に登録できる。いかがわしいサイトにも簡単にアクセスできる。オンラインでは年齢制限なんて無視して登録することが可能である。さらに怪しいショートメッセージ(SMS)やメールも大量に送付されている。そのようなメッセージやソーシャルメディアでの呼びかけにひっかかってしまい「簡単にお小遣いが稼げる」とか「暇なら会いたい」「SNSの写真、かわいいね」といった言葉に騙されて、犯罪や暴力に巻き込まれるケースが世界中で後を絶たない。それは新興国の貧困層だけの問題ではなく、先進国の富裕層でも被害者が出ている。

(C) UNICEF/UN015561/Prinsloo (マダガスカル)
(C) UNICEF/UN015561/Prinsloo (マダガスカル)

ユニセフも各国政府に呼びかけ

ユニセフでは、オンラインの子どもの性的搾取をなくすことを目指す世界的な取り組みの「WePROTECTグローバル・アライアンス」とともに、司法、法執行機関、児童福祉・教育・保健の関係機関、情報通信技術業界、市民社会が協調して子どもたちをネット上の性的搾取から守るよう、各国政府に対して呼びかけている。

(C) UNICEF/UN018671/Zehbrauskas (エルサルバドル)
(C) UNICEF/UN018671/Zehbrauskas (エルサルバドル)

ユニセフの子どもの保護部門チーフのコーネリアス・ウイリアムズ氏は以下のようにコメントしている。

「インターネットや携帯電話は若者たちの情報アクセスに革命をもたらしました。しかし、今回の調査結果は若者にとってネットを介して性的搾取に遭うリスクがいかに現実なのかを示すものです。世界のネットユーザーの3人に1人が子どもです。今回の調査は、若者たちの見解という重要な情報を提供するものです。ユニセフは、若者たちの声をネット上の暴力・搾取・虐待の問題への対応に活かすとともに、子どもたちがインターネットと携帯電話がもたらすメリットを十分享受できるようにすることを目指しています。若者、政府、家族、そしてICT業界、地域社会が協力すれば、私たちはネット上の子どもの性的搾取に対処する最もよい方法を見出す可能性が高まるでしょう。それに、ネット上やあらゆる場所における子どもへの暴力をなくしていくことは、私たち一人ひとりに課された課題だという、力強いメッセージを発することにもなります」