■国会でプールの飛び込み事故がとりあげられる

高校の水泳授業における「飛び込み」指導で、重大事故が相次いでいることを受けて、松野文部科学大臣は昨日、衆議院の文部科学委員会において、指導の是非について検討を開始すると表明した。学習指導要領においては、小中学校では飛び込みは指導されないことになっているが、高校では現在も段階的に指導することが認められている

松野博一文部科学大臣が、民進党の初鹿明博委員からの質問を受けて、回答した。初鹿氏は、今年7月に東京都立の高校で、水泳授業中の飛び込み指導により生徒がプール底に頭部を打ちつけて首を骨折した事案(『東京新聞』9/27「弁護士ドットコムNEWS」9/30)や過去32年間で障害事例172件(うち154件が頭頸部の外傷によるもの)という事故の実態(拙稿「浅いプールで飛び込み練習 重大事故多発」9/28)に言及し、「学習指導要領では、小中で禁止されているのだから、高校でも禁止すべき」であり、文部科学省において即座に「検討を始めていただきたい」と訴えた。

■文科大臣「教育委員会や有識者から意見を聴取する」

1983-2014年度の水泳授業時の頭頸部外傷による学年別障害事故数(筆者調べ)
1983-2014年度の水泳授業時の頭頸部外傷による学年別障害事故数(筆者調べ)

初鹿氏の「(高校での禁止について)検討を始めていただきたい」との提案を受けて松野文部科学大臣は、「毎年4月頃に発出している水泳等の事故防止に関する通知により、注意を喚起するなど、事故防止を徹底して参りたい」旨を答弁した。

そこで初鹿氏は改めて、「学習指導要領を改訂して、高校の授業で禁止をするということについてはいかがですか。検討を始めてもらいたい」と問い直し、大臣から次のような答弁を引き出した。

高等学校の学習指導要領の改訂につきましては、平成29年度末の告示に向けて現在検討が進められております。高等学校の体育の水泳指導における飛び込みの取り扱いについては、今後、各高等学校の実施状況や課題について教育委員会から聴取をするとともに、水泳指導の有識者の意見も伺いながら、検討して参ります

出典:衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリ

文部科学大臣が、今後、禁止を含めて飛び込みの取り扱いを検討すると回答したことの意味は大きい。具体的な検討作業の進展が期待される。

■銅メダリスト源純夏氏「高校で飛び込み練習は不要」

初心者に多い事故パタン ※文部科学省『水泳指導の手引(三訂版)』(2014年)
初心者に多い事故パタン ※文部科学省『水泳指導の手引(三訂版)』(2014年)

学校のプールは、溺水防止のために、水深が浅くつくられている。そして、事故の多くは、水深が1.1m~1.3mで起きている。浅いプールでは、姿勢が崩れて急な角度で入水すれば、容易に頭を打ちつけてしまう。飛び込み事故は、プールの構造上の問題と言える。

日本水泳連盟のプール公認規則によると、競泳競技会用のプールとしては、国際大会用で水深3m以上、国内大会用(全国大会)で水深2m以上が推奨されている。2000年のシドニー五輪の水泳女子で銅メダルを獲得した源純夏氏は、東京新聞の取材を受けて、「私でも1mちょっとの水深には怖くて飛び込まない」と述べ、高校の授業で「飛び込み練習は不要」と主張している(『東京新聞』11/15)。

■安全な環境が確保されてからの飛び込み指導

障害事故は減少したものの、2000年以降も一定数起き続けている(筆者調べ)
障害事故は減少したものの、2000年以降も一定数起き続けている(筆者調べ)

厳密に言うと、水深がしっかりと確保されていれば、水泳の授業であれ部活動であれ、飛び込みを禁止する必要はない。だから、仮にどうしても高校の水泳授業で飛び込みを指導する必要があると考えるならば、水深が十分なプール施設で授業をおこなうという選択肢は残されている。

ただし、いずれにしても暢気に議論をしている余裕はない。毎年プールの授業で、重度障害の事故が起きているからには、来年度の水泳の季節までには何らかの答えを出すべきである。数名の生徒の重大な犠牲と引き換えに、飛び込み指導を続けることは、もはや許されない。