もと阪神タイガースの選手たちが出場した『第41回 社会人野球日本選手権大会』の様子を4回に分けてお送りしています。10月30日に開幕した大会も、4日の第2試合から2回戦に入りました。もと阪神の4選手が所属するチームは、揃って初戦で敗退してしまって寂しい限り。でもチーム自体が初出場だった藤井宏政選手をはじめ、野原将志選手、穴田真規選手、阪口哲也選手の4人ともが、初体験の社会人日本選手権で次への可能性をつかんだことでしょう。悔しさとともに。

なお大会初日に登場したカナフレックスと三菱重工長崎の試合結果などは、こちらからでもご覧いただけます。

<〈その1〉カナフレックス・藤井宏政選手の巻>

<〈その2〉三菱重工長崎・野原将志選手の巻>

最後に意地を見せた箕島打線

きょうは和歌山箕島球友会・穴田真規選手(22)の巻です。4選手が所属する中で唯一のクラブチームながら、9月に行われた『第40回 全日本クラブ野球選手権大会』で優勝して、2大会ぶりに出場権を獲得。これまでクラブ選手権を制して2度、最終予選を勝ち抜いて1度出ており、これが4度目となります。が、まだ一度も初戦を突破していません。今回も残念ながら初勝利はかなわずに終わりました。

先発した寺岡投手。「力不足です」と無念の降板。
先発した寺岡投手。「力不足です」と無念の降板。

相手はNTT東日本で、先発したのが今ドラフトで広島から2位指名を受けた横山弘樹投手(23)。穴田選手は「どうにもならん、っていう感じではなかった」と言いますが、それだけに6回2安打0点に抑えられたのは不本意だったでしょう。こちらのエース・寺岡投手が6点を失って4回途中降板という異例の事態もあり、苦しい試合となっています。

いつも箕島球友会の試合を見守る横断幕。
いつも箕島球友会の試合を見守る横断幕。
おなじみオレンジのスティックバルーンがいっぱい。あ、穴田選手のお父さんも。
おなじみオレンジのスティックバルーンがいっぱい。あ、穴田選手のお父さんも。

しかし、後半に強い箕島!クラブ選手権の予選や本大会で終盤の逆転勝ちが何度もあったように、京セラドームでもスタンドを沸かせてくれました。いったん火がついたらノリノリですからね。この日は有田市役所の皆さんが応援団を務めてくださり、箕島高校のブラスバンド演奏で大盛り上がり!NTT東日本と応援カラーが同じオレンジだったものの、負けていなかったですよ。

選手のご家族や、選手が勤務するマツゲンの皆さん、大阪産業大学の学生さんらが席を埋め、また前日が試合だったカナフレックスの藤井宏政選手もチームメイトと一緒に観戦しました。応援に来てくれた滋賀学園の試合を、今度は “お返し応援” で皇子山球場へ行った帰りだったそうです。

カナフレックスの3人も観戦に。右から藤井選手、桑江選手、深瀬選手です。
カナフレックスの3人も観戦に。右から藤井選手、桑江選手、深瀬選手です。

写真を撮る際に深瀬選手が「試合を見ている様子でお願いします」というので、最初はそんな雰囲気だったのに、2枚目は藤井選手がご覧のように思いきりカメラ目線でニヤニヤ。まあ深瀬選手も桑江選手も、これはポーズですからね。なお、この時はまだ知らなかったのですが、深瀬選手は今季限りで現役を引退するとのこと。寂しくなります。いろいろとありがとうございました。

では和歌山箕島球友会の試合結果です。穴田選手は一生懸命走って、4打数1安打1打点と貢献しています。

《第41回 社会人野球日本選手権大会》

10月31日 第3試合 1回戦 (京セラ)

NTT東日本-和歌山箕島球友会

箕島 000 000 230 = 5

NTT 020 401 03X =10

◆バッテリー

【箕島】●寺岡(3回2/3)-桐原(3回1/3)-高橋道(1回) / 水田

【NTT】○横山(6回)-森山(2/3回)-沼田(1/3回)-末永(2回) / 上田

◆本塁打 喜納ソロ、上田ソロ(NTT)

◆三塁打 北道(NTT)

◆二塁打 西口(箕島) 越前、矢島(NTT)

◆スターティングメンバ―

【箕島球友会】 【NTT東日本】

1]右:平井    1]遊:福田

2]二:高橋孝   2]二:下川

3]左:山下    3]左:北道

4]指:林     4]指:鈴木

5]一:岸     5]三:喜納

6]三:穴田    6]右:越前

7]捕:水田    7]一:梶岡

8]遊:西口    8]捕:上田

9]中:浦川    9]中:目黒

試合経過

箕島の先発・寺岡は2回、先頭に死球を与えて1死後に中前打と犠打で2死二、三塁とし、9番・目黒の中前タイムリー。先に2点を失いました。4回にも先頭の喜納にライトへホームランを打たれ、越前の左翼線二塁打と次の二ゴロで1死三塁として上田に左前タイムリーを浴びてもう1点。さらに目黒の右前打と、2死後に下川にも中前打され満塁。続く北道に左前の2点タイムリー。

7回、2死から岸選手が死球。反撃のきっかけとなります。
7回、2死から岸選手が死球。反撃のきっかけとなります。
続く穴田選手が右前打!水田選手の四球で満塁となり
続く穴田選手が右前打!水田選手の四球で満塁となり
西口選手の二塁打で生還した穴田選手(左)と岸選手(右)。
西口選手の二塁打で生還した穴田選手(左)と岸選手(右)。
ようやく主役の西口選手の写真が。でも背中…。岸選手とエルボータッチ。
ようやく主役の西口選手の写真が。でも背中…。岸選手とエルボータッチ。

ここで寺岡は降板。代わった桐原があとを締めたものの、この回は打者9人に6安打を許して6対0とリードを広げられます。5回は四球を連発した桐原ですが、水田のあと塁阻止や連続三振で無失点。しかし6回はヒットと盗塁などで2死二塁として、北道に中越えのタイムリー三塁打。これで7対0となりました。ちなみに今大会の規約で、決勝戦以外は7回で10点差ならコールドゲームが成立します。

それだけは意地でも避けたい箕島打線。とはいえNTT東日本の先発・横山の抑え込まれ、1回と2回が三者凡退。3回は中前打した水田を西口が送って、2死後に平井の右前打で三塁へ、ところが平井は狭殺…。4回はまた三者凡退で、5回は先頭の岸が四球を選び、穴田は初球を打って右飛、水田の三振で岸が盗塁を決めますが得点にはつながらず。6回は三者凡退と、横山に対して散発2安打6三振で無得点でした。

でも7対0となった直後の7回、ようやく反撃開始です。投手は2人目の森山。2死を取られたあと岸は死球で出て、穴田が右前打!水田は四球を選んで満塁となり、続く西口が左翼線へタイムリー二塁打!岸と穴田が生還して2点を返しました。まだ5点差ですが、戻ってきた2人も、迎えるベンチもスタンドも、逆転したかのような騒ぎ。ここで森山は降板。代わった沼田に後続を断たれるも、一度乗せたら怖い箕島の勢いは続きます。

8回1死満塁で穴田選手はファーストゴロ、結果的に2点が入っています。
8回1死満塁で穴田選手はファーストゴロ、結果的に2点が入っています。
この回も3点返して7対5、ベンチは大騒ぎ!
この回も3点返して7対5、ベンチは大騒ぎ!

7回裏は桐原が三者凡退に斬って取り、迎えた8回は先頭の平井が四球と盗塁、高橋孝も四球を選んで、続く山下の左前打で無死満塁!4番・林の四球で押し出し、7対3となり投手交代です。NTT東日本4人目の末永に対し、岸は空振り三振で1死満塁と変わり、次の穴田が一ゴロ。二塁封殺の間に三塁から高橋孝が生還!さらに併殺を狙ったショートの送球エラーで、二塁走者も還り、なんと7対5と2点差に迫りました。

しかし…その裏、桐原は先頭・上田にレフトへのホームランを浴びてしまい、次に四球を与えたところで降板。代わった高橋道は2死後にヒットを許して一、二塁となり、途中出場の矢島に左越えタイムリー二塁打を浴びて3人還しました。この回3点を追加され10対5とまた差は広がり、9回も先頭の西口はショート内野安打で出たものの、あとが続かず試合終了です。

「来年もっと強くなる」と監督

まず和歌山箕島球友会・西川忠宏監督(54)。「悔しい思いをみんなが持っていたので、それは来季につながるでしょう。寺岡も、打たれはしましたが自信ついたと思いますよ。変化球は打たれても真っすぐで打ち取れていた。そこで変化球を投げて打たれたという点はバッテリーの反省ですけどね」と振り返り、また「ミスしたらあかんところでミスが出た。西武ドーム(クラブ野球選手権)ではなかったミスですよ」と、これは少し意外だったという表情でした。

さらに「まずエース級を打たないと。2番手、3番手ではあかんのですよ。技術より精神的なもの。すべていい経験になった。あと1本ほしいところで、その1本は出ませんでしたが、負ける時はこんなもんです。来年また一から出直して、ここで勝てるチームを作ってきます。次は東京ドーム(都市対抗)の出て、ここでも勝てるように」と続けます。そして「そういうチームになってきた」とも。

なるほど、勝てるチームにもう近づいていると思っていいんですね?「いろんな意味で次につながる。来年もっと強くなりますよ」。それは楽しみです。昨年、10人以上の選手がチームを去り大きく変わった今シーズンでした。「去年より戦力が落ちることは覚悟していた。だから勝負は来年と言っていたのが、ここに来られたんですもんね」と西川監督。そう思うと今オフは入れ替わりも少なそうで、ますます期待が膨らみます!

クラブ選手権の借りを返した西口選手

タイムリー二塁打の写真が撮れなくてすみません!でも試合後にいい笑顔の西口選手。
タイムリー二塁打の写真が撮れなくてすみません!でも試合後にいい笑顔の西口選手。

7回にチームを乗せる2点タイムリー二塁打を放った西口稔基選手(24)は「クラブ選手権がノーヒットやったんで、ここで何とか打とうと思っていたんですよ。クラブ選手権?12打数0安打でした」と苦笑い。初球ストライクで、打ったのは2球目。「インコースの真っすぐ。好きな、大好きなとこへ来たので」と本当に嬉しそうな顔になりました。「その前の5回は(2死二塁の)チャンスで打てなかった。7回もみんながチャンスを作ってくれたから、結果を出そうと思って出て二塁打。よかったです!」

さらに8回は四球や相手エラーも絡んで3点追加しましたね。ところが「7対5まで追い上げた時、ここを0点に抑えて次に、と思ったら3点取られた」と西口選手が言うように、トドメを刺された感じです。「でも三菱重工長崎との練習試合(10月26日)も3対3の引き分けだったし、来年は今持っている実力を出せば力負けするチームじゃないと思います。食らいついていけば企業相手でも」と力強い言葉。

それにしても箕島の打線は面白いですね。クラブ選手権もそうですが、勝っても負けても終わったらグッタリしました(笑)。「乗ったらすごいと思います。ことし1年間、そういうのが出せてよかった」。はい、こちらもそんな試合がたくさん見られて、疲れたけど印象深いシーズンでした。ありがとうございます。

穴田選手「流れは絶対変わると思った」

試合後のベンチ裏で待っていて、穴田選手の姿が見えたので声をかけたら、なんと私以外にも取材する方がいらっしゃいました。って失礼ですね。なので最初の方は少し “よそいき” な言い回しをしていますが、途中からはいつも通りマンツーマンで、いつも通りの受け答えです。ご安心?ください。

タイムリーは西口選手ですが、ドヤ顔の穴田選手。まあヒットなので、よしとしますか。
タイムリーは西口選手ですが、ドヤ顔の穴田選手。まあヒットなので、よしとしますか。

7対0と差を広げられても、諦めていなかった?「もちろんです!流れは絶対変わると思いました。ピッチャーが交代して。先頭が出たら一気に乗っていけると思った。そういうチームなんで」。7回の穴田選手のヒットでチャンスが広がりました。「岸が出てくれたことが大きいです」。8回には併殺崩れで1点、相手のエラーでもう1点。「あそこ抜けて欲しかった!内野が前なら抜けていたのに。ゲッツー体制だったんで」。点差もあったし、前進守備ではなかったのが残念でしたね。

(ここからマンツーマン)

京セラドームは「高校の入場行進以来」という穴田選手。そういえば大阪府の大会は京セラドームで開会式をするんですね。「はい、入場行進だけ」と繰り返しますけど、それはつまり開会式ってことですよね。「試合をするのは初めて」だそうです。阪神のファームがウエスタン公式戦で何度か使っていましたが、穴田選手らの時代にはなかったのでしょう。感想は?「う~ん…広いなあ、くらい」

結果は10対5と大差で敗れましたが、穴田選手をはじめ笑顔のナイン。
結果は10対5と大差で敗れましたが、穴田選手をはじめ笑顔のナイン。

初めての日本選手権は?「勝ちたかった!」。2点差まで詰め寄ったのにね。「勝たなあかん。意味がない」。日本選手権での1勝を目標にしていただけに、やっぱり悔しいようです。母校・箕面東の長谷監督も来られていたみたいで、勝つところを見せたかったでしょうね。

ちょうど通りかかった寺岡投手を見ながら「せっかく岩本のグラブをあげたのに」と言います。穴田選手が岩本投手からもらって、あげたの?「そうです。きょうもそれで投げてましたよ」。あら、それは気づかなくてすみません。

ここで仕事できた?「できんかった」。そうですか。「5回のライトフライ、当てただけやったんですよ。もし振っていたら絶対いってた。ライトにギャーンって!いってた。絶対!」。久々に聞いた気がします、ギャーンって。これぞ穴田真規だと思わず吹きました。ライトへギャーンと飛んでいく打球、来年は見せてください。

悔しい思いの寺岡投手と岸選手

穴田選手(右)と寺岡投手。この2人を含め、同級生軍団で来年リベンジです!
穴田選手(右)と寺岡投手。この2人を含め、同級生軍団で来年リベンジです!

新入団ながら、この日本選手権まで好投してきたエース・寺岡大輝投手(22)は「力不足です」と目を伏せます。「向こうの打線、1番から9番まで変わらない感じでした」。確かに、打席に立った11人のうち10人がヒットを打っていますからね。「あんなに打たれるとは思わなかった…」。私も思いませんでしたよ。4回で代わるなんて。ただし終盤の打線には寺岡投手も「意地が見られたし、全然諦めていなかった。すごいなと思いました」と感激した様子です。

ズームしすぎました…。穴田選手(右)と岸選手の同級生ヒップタッチ。
ズームしすぎました…。穴田選手(右)と岸選手の同級生ヒップタッチ。

次に、7回に2死を取られてから死球で出塁した岸翔太選手(23)。どこに当たったの?「右手首です。メッチャ痛かったですよ」。でもそこから反撃開始でしたもんね。穴田選手もヒットで続いたわけで。「だけど8回のノーアウト満塁が…。あそこで打ちたかった。あー、勝ちたかった!」と悔しがります。そして「勝てたと思います!」と。スタンドの我々も、もしかしたら…と興奮しましたよ。

なお、西川監督にそう言ったら「いや、私は勝てるとは思ってなかったですよ」という返事が。やはり監督は冷静です。でも本当に終盤で盛り上げてくれますねえ。それが最初から出れば楽なんでしょうけど。来年の和歌山箕島球友会が、穴田選手がどんな戦いをしてくれるか楽しみです。

※この2日後に試合をしたパナソニック・阪口哲也選手の記事はこちらです。

<阪口哲也選手編>