社会人のクラブ野球選手権大会は6日、西武プリンスドームで2回戦(準々決勝)4試合が行われました。もと阪神タイガースの穴田真規選手が所属する、西近畿地区代表の和歌山箕島球友会は第3試合で、関東地区代表の全足利クラブと対戦。4年連続35回目の出場で10度の優勝を誇り、都市対抗野球の本大会にも出た強豪です。

しかし、予想通りの投手戦を制したのは和歌山箕島球友会!しかも果敢な守備で左肩を脱臼してしまった選手の犠飛で挙げた1点を守り切っての勝利でした。穴田選手もしっかりヒットを打ち、いい守備も披露。本大会に来て乗ってきたかもしれませんね。

と書いている時点で、7日の準決勝第2試合はサヨナラ勝ち!穴田選手もいい仕事をして(最終回、満塁で打てば間違いなくMVPという場面では凡退しましたが…)決勝に進んでいます。

では、きのう6日の試合結果をどうぞ。

《第40回 全日本クラブ野球選手権大会》

9月6日 2回戦 (西武プリンスドーム)

全足利クラブ-和歌山箕島球友会

足利 000 000 000 = 0

箕島 000 000 10X = 1 

◆バッテリー

【箕島】○寺岡 / 水田

【足利】●中田(6回2/3)-加治(1回1/3) / 吉原

箕島打撃 (打-安-点/振-球)

1]右:平井  ( 4-1-0 / 1-0 )

2]二:高橋孝 ( 4-1-0 / 0-0 )

3]左:山下  ( 3-1-1 / 1-0 )

〃左:野田  ( 0-0-0 / 0-0 )

4]指:林   ( 1-0-0 / 0-3 )

〃走指:岸田 ( 0-0-0 / 0-0 )

5]一:岸   ( 4-2-0 / 0-0 )

6]三:穴田  ( 4-1-0 / 1-0 )

7]捕:水田  ( 2-0-0 / 0-1 )

8]遊:西口  ( 4-0-0 / 0-0 )

9]中:浦川  ( 2-0-0 / 0-1 )

箕島投手 (安-振-球/失-自)

寺岡 9回 117球 ( 4-7-2 / 0-0 )

試合経過

1回2死満塁のチャンスに穴田選手は…見逃しの三振。
1回2死満塁のチャンスに穴田選手は…見逃しの三振。
何とも悔しそうな顔で戻ってきます。
何とも悔しそうな顔で戻ってきます。
4回表、2死一、三塁でファーストライナーをナイスキャッチ!岸選手。
4回表、2死一、三塁でファーストライナーをナイスキャッチ!岸選手。

箕島の先発・寺岡は1回、先頭の吉田情に中前打を許し、犠打と遊ゴロで2死三塁としますが無失点。2回は三者凡退。3回は2死からまた吉田情に中前打、ボークで二塁へ進めるも次を空振り三振で事なきを得ました。3回は連打と外野フライで2死二、三塁となり、7番・高橋二が強烈なライナー。これををファースト岸がナイスキャッチ!ピンチをしのいで、5回は三者凡退です。

一方の打線は1回、2死から山下が中前打、林は四球、岸が右前打で満塁の大チャンス!しかし穴田が2球見逃し、1つファウル、4球目で見逃し三振…3者残塁でした。3回にも高橋孝の右前打と盗塁、林の四球などで2死一、二塁としますが得点なし。4回は先頭の穴田が中前打して水田の犠打で二塁へ進むも後続を断たれ、5回は三者凡退。5回を終わって、ともに4安打ずつ。予想に違わぬ投手戦となりました。

5回を終わって、ともに4安打ずつで両チーム無得点でした。
5回を終わって、ともに4安打ずつで両チーム無得点でした。
寺岡投手は5回以降ノーヒットの好投!さすがです。
寺岡投手は5回以降ノーヒットの好投!さすがです。

6回は2三振と内野ゴロの三者凡退で斬って取った寺岡。その裏の箕島は1死から岸が右前打、続く穴田も右前打で一、三塁!と思ったら…何やら動きがあり、三塁の岸はベンチに戻されます。実は二塁を回ったところでちょっと止まりかけるような動きがあったのですが、どうやら二塁ベースの踏み忘れ(記録は9-6-4封殺)で、穴田はヒットではなく“ライトゴロ”となります。続く水田が四球を選ぶも得点ならず、ガックリと肩を落とす岸。しかし直後の7回に試合を左右する攻防があります!

7回表、先頭・吉田智の打球はレフトポール手前へのファウル。これを追った山下は、ポールの数メートル手前からフェンスが低くなっていて、そこに捕球した勢いのまま激突!しばらくして起き上がり、ベンチに戻ってきたものの、押さえた左肩はかなり痛そうです。それでも手当をして再びレフトへ。左肩の脱臼で、いったん“入れて”出ていったと試合後に聞きました。しかもその裏、打順が回るのです。

ファウルフライを捕ってフェンスに激突。左肩を脱臼したレフトの山下選手。
ファウルフライを捕ってフェンスに激突。左肩を脱臼したレフトの山下選手。
試合終了後、整列してスタンドにお礼。山下選手も笑顔です。
試合終了後、整列してスタンドにお礼。山下選手も笑顔です。

7回裏は浦川が四球、平井は遊内野安打、高橋孝のバントで三塁封殺となり1死一、二塁…。大きな溜め息に包まれたスタンドだったけれど、代わらずに打席へ向かう山下に大歓声。そして相手投手の暴投で1死二、三塁とチャンスがよみがえります!山下はスイングするのも辛そうだったのに、キッチリと左翼戦へ打ち上げて平井が生還!ようやく得点が、しかも箕島に、負傷した山下の犠飛で入りました。

あとは守りきるだけ。8回はともに三者凡退、そして9回もマウンドへ向かい、内野ゴロ2つで2死を取った寺岡ですが、ここでまさかの死球。しかし最後は中飛で無失点!見事に投げきって4安打完封勝利です。

「穴田はブンブン丸でいい」と西川監督

西川忠宏監督は、まず左肩を脱臼した山下選手について「もう無理やと思ったけど本人がいくっていうので。でも、それでチームが締まったのは確かです。しかも自分で(犠飛を)打って試合を決めましたからねえ」と感謝しながらも驚いた様子。「あの場面も、バント失敗したあと今度は送らずに、相手ミス(暴投)で二、三塁になった。きっと神様が山下に力を貸してくれたんだと思います」。そこでキッチリ打ち上げた山下選手も素晴らしい!

「相手のピッチャー、よかったですね。左が来たらあかんけど右ピッチャーやったら、うちは打つと思っていた。あと1本が出れば楽になるのに。穴田もよく振れていますね。それやったら初回に振れよ!と思いますけど(笑)。最後の見逃しは、1球目と2球目を振っていないせい。初球から振っていかないとね。ブンブン丸でいいんですって。そういう打順に置いてるんだから。6番に一発があると、相手も怖いはず」

長打が出ないと気にしていました。「そらそうですよ。振ってないもん」と西川監督。なるほど。「守備もキチッとしていますね。頑張ってくれてる」。1本はライトゴロになったものの、2試合続けてマルチという当たりです。なかなか見ないかも、と言ったら監督もまた「初めてかな」と笑っておられました。

残るは準決勝と決勝。「もっと楽に勝てると思ったのになあ」とは言われますが、2年前の優勝時はどうだっかと尋ねたら「こんな感じでしたよ。けっこう苦労しました。優勝する時って、こういうもの」と。とても頼もしい言葉です。

負傷しても下がらない執念で決勝打

6回の守備で左肩を脱臼しながら、その回を守り抜き、直後の攻撃では打席にも立って、決勝の犠飛を打った山下龍二選手。「脱臼しました。初めてです」。いったんベンチに戻って治療を?「はい、肩を入れてもらって。痛かったですねえ」。でもグラウンドに戻ってきた。びっくりしましたよ。

三角巾が痛々しい山下選手。試合後、病院へ向かいました。
三角巾が痛々しい山下選手。試合後、病院へ向かいました。

「最後まで出たかった。ここで代わったら後悔すると思って。そのあとのも代打を言われていたけど、行かせてください!と頼んだんです」。その執念が相手のバッテリーミスを呼び、外野フライでも1点という場面にしたんでしょうね。「打てて嬉しかったです!寺岡がすごいピッチングしてたから。(二、三塁になって)バットに当たったら点入る、と思っていました」

さらに「あすも出たい。やる方向で!」と病院へ向かった山下選手。すごい執念です。

エースがエースたるピッチング

すごいのは、前日にリリーフで3回以上を投げ、この日は予定通り先発して4安打完封勝利の寺岡大輝投手もでしょう。ちょうど通りかかった甲斐選手を見つけ「甲斐の応援のおかげで、いいピッチングができたと思います」という、定番のお遊びも入れながら「もともと投手戦になると言われていたので、0行進は最初から覚悟していました」と言います。最後、あと1人での死球は「あそこは、ちょっと緊張してた」と苦笑い。

完封勝利のバッテリー。水田選手(右)と寺岡投手。
完封勝利のバッテリー。水田選手(右)と寺岡投手。

試合を振り返ってのコメントは「わりと上出来やと思います。自分の中では。フォアボールも1個、9回のデッドボールとで2四死球だったし」。いやいや“わりと”どころではないですよ。4安打完封、しかも5回以降はノーヒットですからね。球数は117球。肩やヒジは大丈夫でしたか?「いや~6回くらいから痛かったです。でも毎度のことなんで慣れました(笑)。あすも準決勝と決勝の2試合、18イニング投げるくらいのつもりでいきます」

準決勝は休めますように。ところで準決勝や決勝も延長はタイブレーク方式なんですよね?「あれはもう二度としたくない」。当日は淡々と語っていたけど、やっぱり相当な心労だったのでしょう。

完封をリード・水田捕手

箕島の正捕手・水田信一郎選手にも聞いてみました。「ほんまにもう、寺岡のおかげですよ」と疲れきった表情での第一声。6回から肩は痛かったと言っていたけど、スピードは落ちていませんよね?「そうですね。ただ球速には出ないながらも、少し回転がおかしかったり微妙な感じにはなっていたんです。5回までは力で押して、6回から緩い球で打たせて取るというふうになりましたね。最初に体力を温存して点を取られて負けたら後悔するでしょう?だから最初は力勝負で、後半はかわしてと切り替えたりはします」

ものすごくいい当たりの打球を放つもショートライナー。悔しい水田選手。
ものすごくいい当たりの打球を放つもショートライナー。悔しい水田選手。

打つ方ではいい打球を飛ばしながら、ヒットにならない水田選手。8回にも強烈なライナーをショートが捕っちゃいましたもんねえ。「そうなんですよ。西武ドームに来ると、いい当たりを捕られる!調子マックスで来ても。なんなんや~ですよ。毎年毎年(笑)」

2試合ともなかなか苦しい展開でしたが、水田選手は「逆に、1点差だったからこそ最後まで集中力を保てたと思います」と振り返りました。ナイスリード!あと2つもお願いします。

勝ちたい!京セラに行きたい!

最後は、やはり穴田真規選手です。あえて1回の見逃し三振については触れずに話を聞きました。前日の試合後に平井選手から、一緒に練習した時のことを聞いたんですが、きょうも右方向へのヒット。効果大ですね。「ティーバッティングとかフリーバッティングで、大振りするんじゃなくて、ちゃんと芯で強い当たりを打つ練習をしろと言われました。左足を、つま先がピッチャー方向に向かないよう踏ん張って、体の左側面に壁を作る。でも右足はしっかり回して、両足を内に向けるように。そうすると壁ができてボールも見やすいし、ポイントも近くなる」

1点を争う試合に疲れた?穴田選手。でも「絶対勝つ!」と気合いを入れ直します。
1点を争う試合に疲れた?穴田選手。でも「絶対勝つ!」と気合いを入れ直します。

なるほど。それで2試合連続の2安打…あ、1本はライトゴロだけどヒットと言えばヒットですよね。「こんな続けて逆方向にヒットが出るってのは、あんまりなかったかも」。できている、という実感は?「ありますね」

ヒットが続けば、個人賞の可能性も出てきますよ。「いえ、勝ったらいいです。何でもいいんです。優勝できたら。優勝して京セラドームに行きたい!」。やはりそこですよね。もとチームメイトだった藤井宏政選手(カナフレックス)、阪口哲也選手(パナソニック)は出場を決めました。クラブチームが社会人日本選手権に出るには、ここでャンピオンになるしかありません。

【追記】日本選手権九州最終予選では、野原将志選手の所属する三菱重工長崎が順調に勝ち進み、きょう7日の準決勝でJR九州に6対4を退けました!あと1つで京セラドームです。