「全然理解されてない」と書かれてしまいました(苦笑)

前回の続き。

大阪都否決で大阪市立大・大阪府立大はどうなる?

大阪都否決で大阪市立大・大阪府立大はどうなる?その2~大学統合事例・経済効果・地理条件から考える

米重克洋さんの記事を引用したところ、Twitterでコメントをいただきました。

引用されたが、大学に回すカネがあったら東京や他政令市に比べて劣る小・中学校の義務教育(これこそ基礎自治体の仕事)に回せ、というのが前稿から一貫した記事の趣旨なのに、全然理解されてない。誰も経済効率のために教育機会奪えとか言ってない。

出典:米重克洋Twitter

域外学生が多いのは他の国公立大も同じだというなら、尚更国や広域自治体がやればいいじゃないか。なぜ地元住民のニーズに応えるべき基礎自治体が域外住民のために大学をやらねばならないか、という問題提起に1ミクロンも答えていない。為にする論だと言わざるを得ない。

出典:米重克洋Twitter

改めて米重さんの記事を再読しますと、

ユーザーの過半を大きく超える割合で市外住民が使っているサービスはもはや「広域行政」の領域だが、こうしたものも市の財布から拠出して維持していることは、果たして「税の使い方」として合理的なのだろうか。

とあります。

その例として、大阪市営地下鉄と大阪市立大がやり玉に挙がっているわけで。

大阪市営地下鉄についても、268万人もの人口を擁する政令指定都市が提供する交通サービスは自治体住民だけのものでないだろう、とか、民営化の是非って大阪都構想とは無関係だよね、とか、色々ありますが、ここではおくとします。

推進派・反対派の主張がかみ合わない

大阪市立大についての米重さんの主張というのは、

・大学に回すカネがあったら東京や他政令市に比べて劣る小・中学校の義務教育(これこそ基礎自治体の仕事)に回せ

・大学運営は国や広域自治体がやればいい

・なぜ地元住民のニーズに応えるべき基礎自治体が域外住民のために大学をやらねばならないか

とのこと。

なるほど。

都構想推進派(米重さんもそうだと思いますが)の主張に対して、反対派は、

・大阪市ほどの自治体が大学進学希望者に対して教育機会を提供するのは当然

・市立大・府立大を統合すれば、教育機会がそれだけ減る。

などと主張するわけです(反対派の方、そうですよね?)。

一方は統合するのが当然、と言うし、もう一方は統合しないのが当然、と言うわけです。

完全な水掛け論で、議論がかみ合いません。

では、市立大・府立大の統合の是非を判断するのに、経済効果が目安の一つになるのでは、としたのが前回の記事になります。

不謹慎ながら競馬・競輪事業をちょっと考えた件

反対派・大学関係者からは不謹慎と思われるかもしれませんが、自治体による競輪・競馬事業が似ている、と私は考えます。

1970年代から1980年代にかけて、競輪・競馬事業を運営している自治体は、それはそれは儲かっていました。

この収益で学校や保育所、公園などを建設。

政治的な理由での廃止は、後楽園、京都、神戸、福岡、長崎などでありましたが、経営不振での廃止はほとんどありませんでした。

ところが、2000年代に入り、経営不振から廃止を決める自治体が続出します。

利益を生み出すわけではない公立大学と、利益を生み出す競馬・競輪。大きく異なりますが、私は経済効果という点でどちらも似ていると思うのです。

大学だと、学生がいることで、消費が生まれます。関西圏外からの学生だと、アパートを借りるわけで、それだって大阪市の経済を潤すことになります。

競馬・競輪事業も、ガラの悪い人が集まることはさておくとしても、人気であれば、馬券・車券の売り上げだけでなく、飲食等の消費で経済を潤すことになります。

競馬・競輪事業は多くの自治体で人気を失い、経済効果が見込めなくなってしまいました。

だからこそ、廃止する自治体が相次いでいるわけです。

経済効果狙いで定員割れ大が続々公立化

では、大学はどうでしょうか。

地方の私立大は、定員割れが続く大学が廃校ないしキャンパス移転を次々と表明しています。

学生が集まらない以上は、運営を続けるのも無理がありますし、廃止・撤退は当然です。

ところが、廃止・撤退ではなく、公立化に踏み切る自治体もあります。

2009年

・高知工科大

2010年

・静岡文化芸術大

・名桜大

2012年

・鳥取環境大

2014年

・長岡造形大

※公立化を決定ないし検討中

・旭川大

・長野大

・新潟産業大

・成美大

・山口東京理科大

わざわざ公立化に踏み切るのは、大学を維持することによる経済効果を狙ってのことです。

山口東京理科大の公立化に踏み切った山口・山陽小野田市は人口6万人強。

それでも、公立化に踏み切ったわけですが、人口268万人の大阪市は本当に運営できないのでしょうか。

そもそも統合のための条件って何だ?

大阪市立大が大阪府立大と統合するとしたら、大阪市と大阪市立大が以下の条件に当てはまる必要があります。

・大阪市の財政が夕張並みにひどい

・国(総務省・文部科学省)が公立大学運営のための地方交付税納付金の支払いを停止ないしは大幅減額。私立大に転換した方が得な政策を実施。

・大阪市立大の各学部とも10年近く定員割れ状態が続く

・大阪市立大を維持することによる経済効果がきわめて低く、統合(ないし廃校)でも、それほど影響はない。あるいは、統合した方が経済効果は高い。

1番目は、当てはまる、と言えないこともありません。

大阪市の財政状況が夕張並みかどうかはともかく、良くないことは確かです。

しかし、3番目、これは該当しません。

2015年度入試は一般入試で5901人が志願。1428人が入学しました。

なお、大阪市立大に確認したところ、大阪市出身かどうかは時間がかかるが、大阪市を含む大阪府出身者は1428人中、663人とのことでした。

ん?統合してもしなくても、実は同じ?

2番目、これも私の乏しい知識だと、公立大の自治体の負担の分は、元は総務省の地方交付税交付金です。

つまり、現状の政策では、統合で大阪市立大を潰しても、その分の地方交付税が減額されるだけ、のはずです。

私立大には、私学助成金が公布されているが、公立大になると、その私学助成はなくなる半面、県や市からの運営費交付金が受けられる。県や市は、その分、総務省から地方交付税交付金が出るので、地方自治体の財政負担は変わらないことになり、一般県民の懸念はあたらない、ということになる。

出典:『学研・進学情報』2013年1月号「特別レポート 地方大学の使命と課題を見据え、公立大に転換」 

公立大学の財源は、寄附金や委託金等の小規模なものを除くと、授業料などの学生からの納付金と、その設置者である地方公共団体からの拠出に大別されます。後者については、公立大学法人化した大学に対して、地方公共団体からの運営費交付金という形で拠出されますが、それ以外の自治体立の場合は、設立団体である自治体の会計の中に組み込まれています。

地方公共団体は、その主な財源を地方税と地方交付税に拠っています。公立大学を有する地方公共団体に対しては、大学を設置し管理するための経費が普通交付税額の算定において基準財政需要額に算入される形で措置されています。地方交付税はそもそも地方固有の財源であり、その使途は地方公共団体の自主的な判断に任せられていますが、地方公共団体の多くは、地方交付税で措置された大学費相当額以上の費用を自らが設置した大学に支出しており、公立大学は地域の高等教育機会の確保や知的拠点としての役割を担っています。

出典:文部科学省サイト「公立大学の財政」

この辺、地方税の流れなど、全く素人の身ですので、もし、

「統合しても、その分の地方交付税が減額されるだけ」

という認識が誤っているようでしたら、ご指摘ください。

すぐ訂正しますので。

大学統合の是非に話を戻すと、3番目の定員割れには全く当たりません。

そして、4番目の経済効果、これは前回の拙稿でも指摘したものです。

統合した方が経済効果が出る、ということであれば、支持する大阪市民ももう少しいたはずです。

大阪市立大・大阪府立大統合について、推進派の主張を見ていくと、理念だけが先行している、そんな印象を持ってしまいます。

大規模校同士の統合は、日本の大学史上初めてのことです。

だからこそ、推進派の方には、理念や感情論だけでなく、地に足付いた主張を期待したいと思います。

もちろん、そんなものなどない、ということであれば話は別ですが。