前回の続き。

大阪都否決で大阪市立大・大阪府立大はどうなる?

大阪都構想支持派は、この市立大・府立大統合について、

「既得権益を維持したいだけ」

「大阪市立大は大阪市外の学生が8割」

などの意見があります。

後者は、大阪市の税金で運営しているのに、市外の学生が多数を占めるのは、広域行政であり、大阪市単独でやる話ではない、ということでしょう。

今回は、この市立大・府立大統合について、国公立大の統合事例と経済効果について考えていきます。

国公立大統合は小規模校併合がほとんど

まずは、国公立大統合の過去事例について。これまでに21例あります。

・1987年

静岡薬科大(1)・静岡女子大(不明)・静岡女子短期大(4)→静岡県立大

・2002年

山梨大学(2)・山梨医科大学(1)→山梨大学

筑波大学(6)・図書館情報大学(1)→筑波大学

・2003年

東京商船大学(1)・東京水産大学(1)→東京海洋大学

福井大学(2)・福井医科大学(1)→福井大学

神戸大学(10)・神戸商船大学(1)神戸大学

島根大学(4)・島根医科大学(1)→島根大学

香川大学(4)・香川医科大学(1)→香川大学

九州大学(10)・九州芸術工科大学(1)→九州大学

佐賀大学(4)・佐賀医科大学(1)→佐賀大学

大分大学(3)・大分医科大学(1)→大分大学

宮崎大学(3)・宮崎医科大学(1)→宮崎大学

・2004年

神戸商科大学(1)・姫路工業大学(3)・兵庫県立看護大学(1)→兵庫県立大学

・2005年

東京都立大学(5)・東京都立科学技術大学(1)・東京都立短期大学(6)・東京都立保健科学大学(1)→首都大学東京

山梨県立看護大学(1)・山梨県立女子短期大学(4)→山梨県立大学

大阪府立大学(4)・大阪女子大学(2)・大阪府立看護大学(2)→大阪府立大学

県立広島女子大学(1)・広島県立大学(2)・広島県立保健福祉大学(1)→県立広島大学

富山大学(5)・富山医科薬科大学(2)・高岡短期大学(1)→富山大学

・2007年

大阪大学(10)・大阪外国語大学(1)→大阪大学

・2008年

長崎県立大学(1)・県立長崎シーボルト大学(2)→長崎県立大学

・2009年

愛知県立大学(3)・愛知県立看護大学(1)→愛知県立大学

左が旧校名、右が新校名。旧校名の後ろの数字は学部(短大は学科)の数を示します(学部・学科数は当時のもの)。

こうしてみると、規模の大きな大学が、単科大か短大、2学部程度の小規模大学を統合しているケースがほとんどです。

そもそも、大学統合は大学経営の効率化が大きな目的です。

大学の規模が小さくても、学長や事務組織は置かなければなりません。

統合すれば、学長ポストを減らせますし、事務組織も重複せずに済みます。

さて、大阪府立大と大阪市立大の場合はどうでしょうか。

大阪市立大…法、経済、商、文、生活科学、理、工、医の8学部

大阪府立大…現代システム科学、工、生命環境科学、地域保健の4学域(学部に相当)

学生数はどちらも6000人台。

ここまで規模の大きな大学同士が統合するのは、前例がありません。

前例はともかく、ここまで規模が大きいと統合の効果があるのでしょうか。

もちろん、重複する学部(工学部・工学域など)を整理すれば、その分だけ経費はかからないわけで、効果はある、と言えます。

また、そのリストラ効果への批判に対して、教育機会を奪う、という反論も可能なのですが、そこは反対派の方にお任せします。

統合効果と並立効果、どちらが高い?

よくある批判に「利権批判」というものがあります。

たとえば、大阪都構想批判派からは、大阪都実現で特別区の区庁舎をわざわざ新設するのは建設利権でなんたら、という話を投票前に聞きました。

聞き流しましたが、私はこの手の批判が好きではありません。

そこで不正な利益が推進派に流れるなら、それは批判されて当然でしょう。

しかし、そうでないなら、大阪の建設会社が受注するでしょうし、その分だけ雇用も生まれます。

雇用が生まれて、それで消費行動も活発になります。

そういうのをひっくるめれば、経済効果と言うはず。

あらゆる政治行動、あらゆる経済活動には、いずれも利権が生まれます。

偉そうに書いている私(一応、自覚症状はあり)だって、この記事を読んでいただくことで、原稿料が発生します。記事利権です。

その利権が歪んだ形で一部の人にのみ還元されるのであれば批判されてしかるべきです。

しかし、そうでないなら、利権批判は単なる感情論でしかありません。

ちなみに、これ、反対派へのイヤミですが、推進派の既得権益批判も固有名詞を変えただけの感情論です。

どんなものも、最初を除けば、既得権益になります。

やだやだ。

と、ここまでで、推進派・反対派両方に喧嘩を売ったところで、話を大学統合に戻します。

統合にしろ、現状維持にしろ、どっちに転んでも利権は発生します。

現状維持なら、学長以下のポストが温存されるとの批判が可能です。

統合なら、学部学科を整理・一部を移転させて、跡地を売り払うなり、新たなハコモノ建設をするだけ、との批判が可能です。

どっちに転んでも、利権(既得権益)批判が可能なわけで。

では、どちらがより良いか、それを考える目安が経済効果ではないでしょうか。

現状維持・統合、両方とも、どの程度の経済効果が出るのか、プラスとマイナスを考えたうえで、どちらが大阪市民・大阪府民の利益となるのか。

これが決める材料になるはずです。

大学の経済効果っていくら?

では大学があることでの経済効果ですが、実は関連の試算がありません。

阪神タイガースが優勝したら、いくらになる、というどうでもいい話はすぐ発表されるのですが(あ、今、阪神ファンを全員敵に回した・苦笑)。

大学による経済効果は、意外とないのです。

古い年度のものも含めて、探していくと、5校ありました。

国際教養大(2013年・870人)…40億1500万円

弘前大(2007年・6100人)…168億3800万円

群馬大(2007年・5089人)…171億7900万円

三重大(2007年・6148人)…282億2200万円

山口大(2007年・8749人)…398億8700万円

※試算は秋田県、文部科学省。年次は算出年。人数は2014年現在の学生数

統合推進派の方は、

「大阪市立大は市外の学生が8割」

と批判されていますが、地域外出身の学生が多いのは、どの国公立大でも同じです。

まして、大阪市立大・大阪府立大ともに難関大ですし。

その経費は確かに大阪市財政にとって負担ですが、一方では、地域外から来る学生の居住・消費などで経済効果は十分にあるはずです。

経済効果を出している大学の中では、6000人規模の弘前・群馬・三重の3校が近く、そこから考えると、大阪市立大・大阪府立大ともに160億円から280億円の経済効果はあると見ることができます。

低く見ても、150億円、それが2校で300億円。

もし、統合を進める場合、たとえば、どちらかのキャンパスを跡地売却に出るとします(極端な話)。

マンションにしろ、病院にしろ、私立大に売却するにしろ、立地の良さから、売却益は10億円単位となるでしょう。

その売却益と統合によるリストラ効果が現状維持の経済効果を大きく上回る、あるいは、下回るにしても大阪市民・大阪府民の支持を得られる施策が合わせて実施される(税金引き下げ、他の住民サービスの拡充など)ということであれば、それは統合した方がいい、となります。

現状維持の経済効果がざっくり、低く見ても1校あたり年150億円として、2校で年300億円。

これを上回る経済効果、統合ではそう簡単に出せないと思うのですがいかがでしょうか。

大学の地理条件からも統合は疑問?

大学統合で私が気になるのは経済効果の他に地理条件です。

国際教養系学部に関連したコラムでも触れていますが、近隣にライバル校があるかどうか。

この地理条件も大学経営ではもっと触れられるべき、と思うのです。

さて、市立大・府立大が統合した場合、リストラ候補は以下の学部・学域(左が市立大、右が府立大)。

・工学部機械工学科/工学域機械系学類

・工学部電子・物理工学科、工学部電気情報工学科/工学域電気電子系学類

・工学部化学バイオ工学科/工学域物質化学系学類

・理学部物理学科/生命環境科学域自然科学類

・理学部化学科/生命環境科学域応用生命科学類

・理学部生物学科/生命環境科学域応用生命科学類、自然科学類

・理学部地球学科/生命環境科学域緑地環境科学類

・経済学部、商学部/現代システム科学域マネジメント学類

・生活科学部人間福祉学科/地域保健学域教育福祉学類

・医学部看護学科/地域保健学域看護学類

・文学部/-

文学部以外は両校に類似の学科・学類が存在します。

リストラを推進する発想からすれば、どちらかをスクラップする、という話になります(何なら、統合ついでに縮小)。

文学部は類似の学域・学類はありませんが、これも推進派の発想からすれば、「文学なんぞで腹はふくれない」ということでしょうし。

しかし、関西・国公立のライバル校を見ていくと、実はそれほど多くありません。

●工学部系統

滋賀県立大、京都大、京都工芸繊維大、大阪大、神戸大、兵庫県立大、和歌山大

●理学部系統

滋賀県立大、京都大、京都工芸繊維大、京都府立大、大阪大、神戸大、兵庫県立大、奈良女子大

●経済学部系統

京都大、京都府立大、大阪大、神戸大、和歌山大、滋賀大

●文学部系統

滋賀県立大、京都大、京都府立大、大阪大、神戸大、奈良女子大

●福祉関連学部系統

京都府立大

●看護学部系統

滋賀医科大、滋賀県立大、京都大、京都府立医科大、大阪大、神戸大、神戸市看護大、兵庫県立大、奈良県立医科大、和歌山県立医科大

大阪から近畿2府4県の国公立大を対象としました。

2014年学校基本調査によると、この2府4県の大学進学者数は9万647人。

さらに全国の国公立志望者も受験・進学するわけです。

理・工・看護はさすがに多いですが、理・工学部は、3大工業地帯の1角でもある阪神工業地帯を抱える以上は、これくらいあって当然でしょう。

看護学部も、看護師不足がずっと指摘されており、供給過剰というわけではありません。

福祉系学部は、統合で1校のみになると、他は京都府立大のみで、現状でも少ないくらいです。

文学部系統も、ゼロ免課程をわざわざ国際教養系学部に改編している現状に逆行しています。

そもそも、財界も教養教育が不十分と感じているからこそ、教養だなんだと言い出しているわけで。

大学の地理条件を考えれば、いずれの学部もリストラ効果が高いとは思えません。

グローバル云々ということを考えれば、2校並立の現状維持どころか、もう1校、新設する。あるいは、市立大か府立大のどちらかで学部を増設するくらいで、ちょうどいいと思います。

ま、この辺の構想(というか妄想)は別の機会に。