●流行は周年単位でグルグル巡る

90年代リバイバル。最近、音楽シーンでもそんなキーワードを耳にするようになってきた。一足早く、昨年からファッション界隈ではフライト・ジャケットMA-1などが話題となり、今年も広がりをみせている。そう、流行は周年単位でグルグルと巡るものだ。

そんななか、リオデジャネイロ・パラリンピック閉会式で、90年代を駆け抜けた音楽グループ、ピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」(1993年)が歌詞を改変しながらカバーされ、スズキの車「ラバン」のCMでは小沢健二の「ラブリー」(1994年)がキュートにカバーされ話題となっている。さらに、フィッシュマンズやUAの新作リリース、globeの20周年プロジェクト、とどめとしては宇多田ヒカル、Hi-STANDARDが音楽活動を再開するなど、90年代の音楽シーンに注目が集まってきている2016年だ。

●90年代=センス良き“渋谷系カルチャー”が勃発

いまの10代にとって90年代とは、20年以上も昔の話だ。いわゆる、trfや安室奈美恵、globeに心躍らせた40代、50代の立場で考えれば、両親が聴いていたかぐや姫の「神田川」、さだまさし「関白宣言」、寺尾 聰「ルビーの指環」をカバーするのと変わらないような感覚と思えば、隔世の感を禁じ得ないことだろう。しかし、親子関係として考えれば、親が車で聴いていた耳馴染みのある音楽を、10代、20代が懐かしさを持って新鮮に興味を持つことはあるかもしれない。

そもそも90年代は、洋楽と邦楽がおり混ざったセンス良き“渋谷系カルチャー”が音楽シーンで勃発するなど、目利き=サンプリング・センスが重要視された時代だ。FMラジオ局「J-WAVE」、CDショップ「TOWER RECORDS渋谷店」、裏原系文化など、いまにも通じるトレンドが生まれた時代でもある。パソコンの進化による様々な作業のデジタル化、流通などインフラの整備もあり、70年代、80年代初期と比べると、インディペンデント含め日本における商業的なカルチャーが多様化しはじめた時代だったのかもしれない。

●カーディガンズのヒット曲「Lovefool」を日本語詞で

そんな時代背景の中注目したいのが、DreamそしてE-girlsとしても活躍するDream Amiが、カーディガンズが1996年にリリースしたヒット曲「Lovefool」を日本語詞「Lovefool-好きだって言って-」として、10月19日(水)にカバー・リリースした。英国のシングル・チャートで2位を記録した世界的ヒットソングは、日本でも90年代当時、MTVやFMラジオなどでパワープレイされた人気曲として知られている。カバーした理由を聞いてみた。

「90年代はまだ幼稚園とか小学生だったので、当時のことはちゃんとは知らないんです。でも、90年代の曲はメロディアスで歌いやすかったので好きなんですよ。パフィーさん、小室ファミリーさんなど。たぶん、わたしが小1か小2くらいだったと思うんですけど、兄弟で一緒に歌ったりしてました。生活の一部に音楽があったことを覚えていますね。『Lovefool』は、サビの部分に聴き覚えがありました。サウンド感もお洒落だしいいなと思ってました。何より、歌のアンニュイさですよね。気だるさとかというか2面性ある曲だなと。ミュージックビデオでもその辺は大切に表現させて頂きました。」(Dream Ami)

●日本語詞=カラオケ・ヒットを狙えるかもしれない優位点

Dream Amiの「Lovefool-好きだって言って-」を聴いて思ったのが、日本語詞でカバーされることで、英語ヴァージョンではうまく歌えなかったリスナーによるカラオケ・ヒットを狙えるかもしれないという優位点だ。もちろん、当時を知らない10代〜20代にとってもAmiが、ミュージックビデオでまるでお人形さんのように歌う様は、新鮮かつ魅力的にうつることだろう。

「今回カバーをさせてもらうことになった時に、日本語詞でのカバーにこだわりました。ポップな曲なんですけど、アンニュイに表現されている歌詞が、自分の恋愛観に似てるなって思ったんです。どこをとっても共感できたんですね。恋愛の闇に吸い込まれていく、負のループにハマっていく感情もあるというか。ただのラブソングや応援ソングではない、リアルに共感出来る楽曲だったんです。それを日本語で伝えたいと思いました。」(Dream Ami)

Dream Ami
Dream Ami

自作自演なシンガー・ソングライター文化が70年代後半以降主流となっていた日本では、カバー曲がオリジナル楽曲より下に見られる風潮があったかもしれない。しかし海外では、センスを感じさせるカバー曲によって時代を代表するリバイバル・ヒットが時代をこえて多数生まれている。ホイットニー・ヒューストン「I Will Always Love You」、ビッグ・マウンテン「Baby, I Love Your Way」、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「Love Rollercoaster」など、思いつく楽曲だけでも枚挙に暇がない。なお、Dream Amiは、90年代カルチャーに詳しい1990年生まれの新世代アーティストfofubeatsと「POSITIVE feat. Dream Ami」(2015年)でコラボレーションされていたことも、忘れられない出来事だ。

「今後も、コラボレーションには積極的に挑戦してみたいです。今回のシングルのカップリング曲『JUMP!』では、はじめて作詞もはじめました。もっともっと引き出しを増やしていきたいと思っています。E-girlsとは一味違う表現をソロ活動ではやっていきたいですね。」(Dream Ami)

●過去音源と接することにハードルが低くなった世代

日本語詞による再解釈で生まれ変わった洋楽カバーソングは、音楽の新たな楽しみ方を広げてくれるだろう。YouTubeの台頭、AppleMUSICやLINE MUSIC、AWAの浸透、Spotifyの上陸など、過去音源に接することにハードルが低くなった昨今、洋服を着こなすような感覚で、センスを感じさせてくれるリバイバル・ヒットという風潮は、今後日本でも加速していくかもしれない。

Dream Amiオフィシャル・サイト

http://ami-ldh.jp/