あれ? 女子の試合をみんな自然と楽しんでいたな

賞金総額1億円のヘビー級トーナメント、ヒョードルの復活、山本アーセンやバルトの総合デビューなどなど、盛りだくさんの内容で“大晦日格闘技”復活を高らかに歌い上げた新格闘技イベント『RIZIN(ライジン)』。

3日間通しで『格闘技EXPO』も開催されるなど、リング内外で新しい風を感じさせてくれたが、イベント全体を通して個人的に最も新鮮だったのが、「女子の試合を受け入れ、楽しむ会場の空気」だった

国内の女子総合格闘技は2000年12月、日本武道館で開催された『RiMIX(リミックス)』から本格始動したとされる。以来、男子同様、いやそれ以上に時代の波に翻弄されながら、歴史が紡がれてきた。

それは、順風満帆とはいえない歩みだった。「闘いのリングに女子はいらない」という格闘技界と世間の“常識”をいかに変えるか。女子選手たちは目の前の相手と同時に、押しても叩いてもビクともしない、分厚い壁とも常に闘ってきた。

本格始動から15年を経た2015年の大晦日、その壁は、きれいさっぱりというわけではもちろんないだろうけれど、非常に薄く、風通しのよいものになっていた。これは感じ方の違いかもしれないが、少なくとも私には「あれ? 気づいたら全13試合のなかに自然に女子の試合が挟まっていて、みんな楽しんでいたな」と思えたのだ。

女子の試合が受け入れられた背景とは

見事重責を果たしたRENA(C)RIZIN FF/Sachiko Hotaka
見事重責を果たしたRENA(C)RIZIN FF/Sachiko Hotaka

女子が受け入れられた最大の理由は、何と言っても出場選手の存在感と奮闘にある。

新たな格闘技ビッグイベントの幕開けを託され、第1試合に登場したRENA(シーザージム・24)は、入場から華やかな舞台演出に負けないオーラを放ち、しかも総合初挑戦ながら難度の高い飛びつき腕十字でフィニッシュを奪うという離れ業をやってのけた。

第7試合に出場したギャビ・ガルシア(ブラジル・30)とレイディー・タパ(トンガ・33)はともに180センチ超えの100キロ級。その“登場感”たるや、今回の曙、ボブ・サップ以上だった。

また、女子の格闘技を許容する心理的な受け皿として、時代の趨勢も見逃せない。

レスリング界では吉田沙保里や伊調馨が偉業を成し遂げ、サッカーやラグビーでも女子が活躍し、5年前からは女子プロ野球の公式リーグ戦もスタートした。“男のスポーツ”“女のスポーツ”という住み分けは、前時代的なものになろうとしている。

さらに、国をあげて「女性の活躍」が推進されている時代背景も、微妙に会場の空気感に作用していたかもしれない。

見えない壁はミリ単位で動いていた

女子のド迫力ファイトも(C)RIZIN FF/Sachiko Hotaka
女子のド迫力ファイトも(C)RIZIN FF/Sachiko Hotaka

国内外の格闘技に目を移せば、世界最高峰の総合格闘技イベントと言われる米国UFCでは、まだ人数こそ少ないもののスター選手が誕生し、メインイベントに女子の試合も組まれている。

国内の女子格闘技イベントが定期開催を継続していることも忘れてはならない。総合では『DEEP jewels(ディープ ジュエルス)』、立ち技ではシュートボクシングの『Girls S-cup(ガールズエスカップ)』、キックの『J-GIRLS(ジェイ・ガールズ)』など。「女子格闘技、面白そうだな」と興味を持った人が見に行けるリング、選手を目指す人が目標にできるリングがあるというのは、とても大切なことだと思う。

以前、90年代に活躍した立ち技の女子王者たちは言っていた。

「私たちがつまらない試合をしたら、お客さんからは『女子はつまらない、見たくない』と言われ、男子選手からも『一緒のリングに立ちたくない』と言われ、すぐに女子の試合が組まれなくなってしまう。だから一戦、一戦が勝負で、命がけでした」

“常識”という壁はビクともしていないように見えて、実は先人の女子選手たちがミリ単位で削り、動かしてきた。今回のRIZINで感じた「女子の試合を自然に楽しむ空気」は、15年、20年かけて築き上げられたものであり、だからこそ、もう決して後戻りしてほしくないと心から思うのだ。