コンテンツブロッカーによる広告問題の議論がおもしろかったです。

一つ前の記事の論点は、ユーザーニーズを傘にGoogleとAppleが戦争してるんですか?という問いだったんですが、広告の話は、ネットでは地雷で、個人的な好き嫌いの話が入るので、論点が散漫になり、ややこしい話になりがちです。

今回は、みなさんの個人的な広告体験の中で一番謎な問いである「誤クリック広告枠はビジネス上無意味なのか?」に焦点をあててみたいと思います。

■誤クリックを誘発させる広告枠

誤クリックを誘発させる広告枠とは、広告を間違えてタップ(クリック)させる広告枠のことを言います。

最近、個人的にウザいなと思ったのは、ブラウザで画面を下にスクロールすると、1秒後ぐらいに遅延して表示される広告枠です。つまり「次のページ」に行こうと思った瞬間に、その部分に広告が表示されて、うっかりタップしてしまいます。

これはマジでウザいです。また、そのようにタップした広告から商品が売れるとは思わないじゃないですか。騙された感強いし。

コンテンツブロッカーによる広告非表示に対しての肯定的な視点を持つ何割かの人は、このような誤クリックによる広告ビジネスがまかり通ってるトレンドへの不満が多く見受けられました。

不満としては正しいっちゃ正しいんですが、言ってることが少し違うなとも思うケースもあり、説明にチャレンジしてみたいと思います。別に誤クリックを正当化する記事ではありません。

■行動原理としてのCPC(コストパークリック)広告について知る

コンテンツブロッカーをadblockとして考えると、どうせ俺たちはクリックしないのだから、無駄なクリックが発生しなくなってお互いハッピーじゃないか!という理屈があります。その話が妥当か否かについては今回は触れません。

その前に、クリックで広告収益が決まるCPC方式の広告について触れておきます。

表示だけでお金がかかる普通の広告について

実社会の広告を見渡すと、電柱に貼ってある交通広告や、テレビに流れる広告はクリックなどのアクションを計測して広告収益は発生しません。「ただそこに表示されていること」でお金がかかります。

電柱の交通広告がわかりやすいので例に挙げますが、よく家の近くの電柱に葬儀屋さんとかの広告が貼られてないですか?

僕ら、普段は葬儀屋さんに対するニーズはないですから、視界にある程度入っていても、僕らの脳はその情報を無視しています。

しかし、いざ葬儀屋さんが必要になった時にだけ、あの電柱に貼ってある情報が視界に入ってきて、もしくは、毎日脳が処理している記憶から想起されて、「あぁ、そういえば葬儀屋さんあったよね!」となり、広告がビジネスとして成立します。

頻度が低い広告でも成り立つ程度の価格設定がなされているのと、葬儀屋の利益率が高いから、ビジネスとして成立しているということなのだと思います。

ぐるなびの母体が交通広告の会社だったどおり、Webの広告特性はこの交通広告に似ていました。

昔は多くのWebサイトにおいてもページに広告を表示するだけで課金されていました。それならユーザーのPVを増やせばいいので、頑張ってWebサイトを運営します。

今でもPV(インプレッション)保証型で広告枠が売れるところが一番良質な広告枠です。Yahoo!のトップページが代表的な例になります。ぐるなびも月会費制の広告枠サイトとしてみなせば、さすが交通広告の会社の進化系だなという見方もできます。

CPC(コストパークリック)広告の登場

その後、広告効果をクリックの形で測定できるのがWebのよいところだから、とクリック課金が登場しました。日本においても、まだベンチャーとして小さかったサイバーエージェント社はクリック保証などをうたう形で、業界の中で伸びたそうです。

クリック課金のいいところは、広告主からするとクリックされなければお金がかからないところです。それまでは表示だけでお金が取られていたのに、広告効果が低ければお金がかからないので広告出稿のリスクが下がります。

反面、広告枠を掲載するアプリやメディア(媒体側)からすると、せっかくPVを沢山持っている広告枠で、一定クリックされなければ収益にならないので、クリックしてもらう努力をしなければ、収益が下がります。

結果として、クリックしてもらう努力を媒体側が行うようになるのが、CPC(クリック課金型)広告の特徴です。

このような広告最適化の末に、誤クリックさせれば収益が入るから、広告枠をユーザーにハッピーではない形に表示するインセンティブになったようです。

その結果、コンテンツブロッカーで広告枠を削除されてしまうのですから、因果応報とはこういうことを言うのでしょうか?

■誤クリックの広告枠は、無意味なのか?

これは多くの人が思う感覚論とは反して、残念ながら「否」です。

理由は2つあります。

一つはそこに表示されている広告主側の事情

例えばアダルトサイトの広告がわかりやすいですが、あれGoogle Adsenseには表示されないし、Yahoo! Japanにも表示されないですよね。出合い系サイトとか週刊誌的なメディア、アダルトサイトぐらいにしか表示されないと思います。

アダルトサイトとか出合い系、BL系エロ系電子コミックなど、日常社会では利用しにくいサービスほど、ネット広告の効果が高いのですが、それを掲載する媒体側の価値減少も伴うので掲載はNGのサイトの方が多いです。

不快と公序良俗のギリギリの線をついているバナーの代表例として、BL系やエロの電子コミック、出合い系、サラ金系、ワキガなどのコンプレックス系です。これらは、まず広告枠で裸が表示されないなどギリギリの線を満たしつつサービスを想起させるという絶妙なところを狙ってきます。

何より、それを必要とする人には強いニーズが有る、という理由で、多くのWebの広告の王道にさえなっています。

つまり広告効果が高ければ高いほど、掲載可能な媒体が限られるということです。

そのため誤クリックを誘発させるような乱暴なサイトでも、そのまままかり通るということになります。そこに表示できる枠があるから出すんだということですね。

残念ながら、人間的な根源の欲求に突き刺さる商品の広告出稿のニーズは減らないです。

それ故にコンテンツブロッカーによって広告枠が減った場合には、地下化していき最悪ステマに向かっていく可能性が高いんじゃないか?というのは、この辺になります。

それに対する大企業(ナショナルクライアント)の広告は?

それに対して、コンビニのスイーツが出ました!とか家電やお酒、生活用品、マンションの広告だなどテレビのゴールデン枠で見かけるナショナルブランドの広告もネットに掲載されるようになりました。

電通の売上でテレビに対するネット広告の比率がようやく10%を超えたというのをいつぞや見ましたが、そこを支えているのはこのような広告です。

Yahoo!Japanのトップページなどはそういう広告しか出ていませんね。こういう広告は、広告主側が出せる媒体を厳選しています。そもそも上場企業でもあったりするので、悪いことはあまりしません。(たまに企画会社に載せられて過激なことをして突っ込まれたりはしますが、それだけ知恵を絞っているということですね。)

彼らは、健全な広告主であることを目指し、原則としてステマをするわけにはいかない立場にいますから、コンテンツブロッカーで良質な広告枠が減った場合には、ダメージを直で食らう存在になることが予測されます。

割とみなさんネイティブアドに行けばいいじゃんと簡単に言いますが、ネイティブアドを広めるためにもバナー枠というのは使われるものだと思います。広告は一つの施策だけでやるものではなく、やる時は一気に露出で攻めるものなのが、シンプルなバナーという広告商品が廃れない理由だったんですよね。

GoogleにせよTwitterやFacebookにせよ、ネットというのは大規模サイトになればなるほどスパム対策、悪意を持ったユーザーの対策で追われるものですが、そうは言っても、良質なステークホルダーにも配慮してバランスよく施策を決定します。

それに対して、Appleのコンテンツブロックは、adsenseならadsenseを全てのサイトから、まるごと根絶やしにしてしまうというあたりが非常に粗雑な施策で、そこはAppleのビジネスモデルではない、というのが強く影響していそうです。

せめてスパムブロックのようにサイトごとにブラックリストを設定できるようになっていれば、と思わざるを得ません。

さて、誤クリックの広告枠がまかり通る、もう一つの理由ですが

CPA(その広告でいくら儲かるか)の問題

というのががあります。

みなさん、誤クリックでクリックされたサイトなんて、むかつくから広告効果なんてないじゃないか!って思うじゃないですか?

広告主側も馬鹿じゃないんで、どの広告枠からどれぐらいの成果がでているか?という数字は毎日、計ってるんですね。もし誤クリックが悪影響を及ぼして、成果が期待通りでないのなら、その媒体に対する広告表示は止めればいいだけのこと。

ところが止められてないということは、一定の効果が見えているということです。

つまり広告を出せば出すほど儲かる美味しいビジネスであれば、誤クリックで少々、効率が悪くても問題にならないという、広告主と媒体側のwin-winの構造があります。

これが広告がシンプルな理屈で語れない部分なんですよね。先ほどの交通広告の例を出したとおり、広告は1%クリックされれば十分すぎるほど成果が高いわけですから、逆に言えば、その広告機会としては、99%以上の人たちには無意味な広告です。そこから得られる収益がパワフルであるならばそれがクリックレートが0.1%になっても0.01%になっても十分元が取れたりします。

広告主は、そういう計算をするわけです。

ただこちらからすると、電柱広告ならさほどウザくないですが、画面の広さが限られているスマートフォンでは、もう面積の取り合いになっていますよね。

スパムメールと同じ理屈なので、そりゃブロックされてもおかしくないですよね、というのも十分わかります。

まぁ10年前から同じこと言ってるよなーって言われるのは、基本的な考え方がスパムメールと同じだからなんですよね。この理屈が成り立つ以上、あとは水が湧いているところを探すだけ。なので悪い広告主と悪い広告媒体の人たちは、次のオアシスに向けて旅立つだけということになります。

以上のことが、誤クリックは広告効果がない!、という単純な話にはならない理由になります。

そして、その結果、adsenseのような広告がまるごと止められて、ナショナルクライアントが出しているような広告が表示されるチャンスもろとも葬りさられているのが今回のコンテンツブロックの特徴です。iPadで見るとYahoo! Japanのトップページもいくつか消えてますね。

パケットの節約の名のもとでカジュアルブロックされることで、Bluetoothの二の舞いにならないことを祈ります。Bluetoothは普及しないだけで済みましたが、広告は人や会社が死ぬかもしれない。

■タチが悪いのはネイティブアプリの方じゃないか?

最後にこの話で思ったことを書いておきますと、

誤クリック問題で、個人的にタチが悪いのはカジュアルゲームだと思ってました。沢山タップしたり、ゲーム中でスワイプする先に広告が貼ってあって、罰ゲームのようにクリックさせてしまう酷いアプリがあります。

それが残っている以上、コンテンツブロッカーの問題を、単純に誤クリック問題に結びつけるのは、少し違うんじゃないかと思う理由です。もし、そうならネイティブアプリ側の広告も根絶やしにしないと言う気がしますが、最近は、そういうアプリ、審査通らなかったりするのでしょうか?

それとMobile Webで広告が出ないなら誘導施策としてはネイティブアプリを頑張らないとね、という方向になりますよね。そりゃもうがんばりますけど、あ、(察し)。

さてさて、今後はどうなるんでしょうかねぇ。