保守系シンクタンクが「Wikipedia編集者」の身元を突き止めて、黙らせようと画策中
争点はイスラエルによるガザ地区攻撃
最近のWikipediaは、保守派にとって目の上のたんこぶみたいな存在になっているらしくて、「反ユダヤ主義だ」とか「意識高すぎ(too woke)」とか、いろんな非難を受けています。 イスラエルの支持者たちは、ガザ地区での出来事をWikipediaどう扱うかにすごく敏感になっていて、複数のユダヤ系メディアからはWikipediaを「反ユダヤ主義だ」と批判する声も。 この問題は何年も続いている複雑なトピックなんですけど、最近は「ジェノサイド」の法的定義と、ガザ地区におけるイスラエルの行為をWikipediaがどのように表現しているかが議論の中心になっています。 また、Wikipediaの編集者たちは、名誉毀損防止組合(ADL)を紛争に関する情報源として信頼できないとしていることについても批判されているようです。ホロコーストの専門家からも「悲劇の記憶を歪めている」と指摘されています。
保守は寄付金の使途を攻撃
Wikipediaに対する保守派の攻撃がヒートアップしたのは、クリスマスの2日前のこと。きっかけは、Libs of TikTokがX(旧Twitter)で「Wikipediaが『公平性(equity)』にお金を使い過ぎ」と騒いだことでした。 寄付金で運営しているWikipediaは、毎年財務状況を公開しています。それによると、財団は「公平性」に3,120万ドル(約49億円)も費やしています。Libs of TikTokとイーロン・マスクがこの額を多すぎるとして、Wikipediaへの寄付をやめるよう呼びかける事態に発展しました。 Wikipediaがその3,120万ドルを何に使ったのかというと、多くは助成金として拠出されているみたいです。 中東では、アラブ諸国におけるジャーナリストの育成を支援するArab Reports for Investigative Journalism(調査報道のためのアラブ記者ネットワーク)に資金を提供しています。 ブラジルでは、国内の人種格差とインターネットアクセスに関する調査を行なうInternetLabに、北米では地域のニュース収集に資金援助を行なうRacial Equity in Journalism Fundに助成金を拠出しています。 Wikipediaの編集はいつも戦場みたいなもので、ボランティアの編集者は足並みを揃えて動くのではなく、常に微調整を行ない、議論し、真実のあり方について議論しています。 事実上、Wikipediaは人類のあらゆる知識に関する巨大な「コミュニティノート」なんです。XのCEOが大好きで、Metaも今後取り入れる予定の、あの「コミュニティノート」です。あれ? Wikipediaでは、すべての項目に関する編集や議論の履歴も管理されています。ときには、項目そのものよりも議論のほうがおもしろいことさえあります。 イスラエルとパレスチナの紛争に関しては、その歴史があまりに長すぎるために専用の項目がつくられて、編集、議論、論争の複雑で広範にわたる独自の歴史がびっしりと詰め込まれています。 結局のところ、客観的事実に基づいて議論するんじゃなくて「身元を特定する」なんて言い出すあたり、事実が自分たちの味方にならないと告白しているようなものじゃんって思っちゃいます。
Kenji P. Miyajima