難しい“魚の養殖”も次々成功 「海水魚」と「淡水魚」が共存できる“魔法の水”
そのヒミツは… 山本准教授 「実はこの“白い粉”にヒミツがあります」 “白い粉”を水に混ぜるだけで“魔法の水”が完成。水道水でもOKだというのです。人体にも、もちろん害はないということなので、飲んでみると… 記者 「海水よりぜんぜん塩の味がしなくて、すごく薄いです」
その正体は… 山本准教授 「魚にとって必要最低限の成分を、この中に入れています。それはナトリウム・カリウム・ カルシウム」 実は海水魚も淡水魚も生きるために水から得ている栄養素は同じで、ナトリウム・カリウム・カルシウムなど。その3つを入れたうえで、もっとも重要なのが、「塩分濃度」です。
淡水魚・海水魚どちらも、体内の塩分濃度は1%ほど。山本さんは、魚の体内と同じ塩分濃度の水を作れば、どちらも生きられるのでは、とひらめきました。 山本准教授 「ただ単純に薄めるのではなくて、任意にモル比(濃度)を変えてやる。ここに難しさがあり、時間がかかった。砂漠の中の金の粒を拾うようなもの」 こうして作り上げられた“魔法の水”には、2つの大きな特徴があります。
■“魔法の水”の特徴・その1 「魚が大きく早く育つ」
1年間淡水で育ったベニザケと、“魔法の水”で育ったベニザケを比較すると、“魔法の水”で育ったベニザケの方が、3倍以上大きくなっていました。通常、出荷まで4年ほどかかるベニザケを約1年半で出荷できる大きさまで育てることができるのです。 その理由は、全体の3割とも言われる塩分調整に使うエネルギーが体の成長に回されるからだとみられています。 こうした技術が、漁獲量が減少するなどしている、日本の水産資源を守ることにつながると期待されているのです。
■ “魔法の水”の特徴・その2 「水を替える必要がない!」
2つめの特徴が… ──どのくらい(水を)交換していないですか? 山本准教授 「2年です。風呂水だったら恐ろしいものがありますね」 “魔法の水”をきれいにしているのは「バクテリア」です。海水と比べて最低限の成分しか入っていないので、バクテリアが働きやすい環境になっているのです。 2年前に入れた水も、きれいなままです。こうした水を替える必要がないという、その特徴から、海のない内陸の国「モンゴル」での海水魚の養殖にも成功。肉食がメインのモンゴルに、“魚を食べる”という選択肢が増えました。
岡山理科大学 山本俊政准教授 「モンゴルの大草原で、すしを食べたら涙が出ました。本当に感動します」 “砂漠の国”での養殖も成功させた“魔法の水”。常識破りの研究から目が離せません。