娘の進路を狭めるのは親の偏見!? 「女の子は数学が苦手」は本当か #性のギモン
親も娘も知っておきたい、女子大工学部の現在地
2024年4月にはお茶の水女子大が、国内では奈良女子大に続く「女子大の工学部」を開設した。共創工学部という名前でスタートした“新しい工学部”に、女子学生や親から寄せられる期待は何か。 オープンキャンパスに来た学生からは、「工学って土木や機械などの力仕事だけを指すのではなく、もっと広い捉え方ができる分野なんですね」といった声が寄せられていたと学部長の大瀧雅寛さんは明かす。
「親世代が、『工学の分野は男性ばかりの環境で、きつい、汚い、危険』という3Kのイメージを持ったままなので、そういったイメージを引き継いでいる子どもも少なくないでしょう。しかしこれだけビッグデータやAIの活用が重要視される社会では、一人ひとりが様々な社会の要請を捉えて物事をデザインしていく力が必要です。私たちは工学の定義をそこまで広げ、社会の要請を捉える力とデータサイエンスを扱う力の両方を養えるカリキュラムを設計しました。『共学の工学部に行くとマイノリティーになるから女子大に』という理由ではなく、新しい工学に魅力を感じて来てもらいたいという思いで開設された学部なんです」 最先端の技術開発を目指し、それを社会に適応させるシーズ(種)型の工学ではなく、まず社会のニーズをくみ取り、素材やデータから何が生み出せるかを考えるニーズ型の工学をコンセプトに掲げており、文理をまたいだ学習内容になっている。学部には人間環境工学科と文化情報工学科のふたつの学科があり、後者は文系の教授が半分を占め、文系科目で受験した生徒が約半数だという。 文化情報工学科で数学を個別学力検査科目(本学で行う入試)の必須としていないのは、工学を含めた理系分野への間口を広げるためだ。 「子どもたちの理系分野への関心を高める鍵は、やはり数学の捉え方だと思っています。高校や大学のカリキュラムでは、男女を問わず数学が得意か苦手かで文理が分かれてしまうけれど、数学が苦手でも建築などデザイン力が必要な理系就職はできるので、数学が進路選択の障壁になっている現状は非常にナンセンスだと感じます。そういう意味では、数学が苦手だけど工学には関心がある、という子どもたちの受け皿になれる学部だと思います」