PostgreSQLはなぜMySQLを上回れた? PostgreSQL 17で見えた生成AI時代のデータベース
かつて世界で最も人気が高いデータベースはMySQLだったが、この数年で状況は大きく変化した。現在はPostgreSQLが圧倒的な人気を誇り、トップの座に君臨している。PostgreSQLの最新リリース「PostgreSQL17」はAI時代を見据えた要件を組み込んだ発展を遂げており、その地位は不動のものになりつつある。同データベースがどのような発展を遂げているのか、「PostgreSQL17」についてわかりやすく解説していこう。 【詳細な図や写真】MySQLの牙城を切り崩したPostgreSQL(Photo/Shutterstock.com)
世界トップに躍進したPostgreSQL
データベース管理システム(DBMS)の世界で、大きな変化が起きている。長年、企業システムの中核を担ってきたのはMySQLだが、この数年でPostgreSQLがトップの座に躍進、またAI時代の到来により、そのポジションをさらに強固なものにしているのだ。 スタックオーバーフローが実施した開発者調査(2024年版)によると、PostgreSQLは2年連続でデータベースのトップに君臨、その利用率は51.9%に上る。これに対し、MySQLは39.4%にとどまり、両者の差は広がる一方となっている。 この数字の意味するところは大きい。わずか6年前の2018年、MySQLの利用率は59%を占めていたが、PostgreSQLは33%にすぎなかった。この劇的な逆転は、PostgreSQLの技術的優位性と時代のニーズが合致した結果といえる。 そもそもPostgreSQLとは、どのようなデータベースなのか。1986年、カリフォルニア大学バークレー校のマイケル・ストーンブレーカー氏率いる研究プロジェクトから誕生したPostgreSQLは、当初は研究や学術目的で利用される比較的ニッチなデータベースだった。 しかし、その柔軟性、拡張性、そしてACID(原子性、一貫性、分離性、永続性)原則への厳格な準拠により、次第に企業ユーザーの注目を集めることになる。アマゾンウェブサービス(AWS)、グーグル、マイクロソフトといったクラウド大手も、独自のDBMS製品を持ちながらPostgreSQLを採用。その拡張性、ネイティブSQL対応、強力なクエリエンジンが評価された。 PostgreSQLの開発は、PostgreSQL Global Development Groupというコミュニティが担っている。38年の開発期間で600人以上のコントリビューターが参加、5万件以上のコミットが行われた。2022年単年でも1万件のコミットを記録するなど、活発な開発活動が続いている。 注目すべきは、その開発サイクルだ。主要なアップデートは毎年9月頃にリリースされ、新機能の追加、パフォーマンスの改善、セキュリティ強化、バグ修正などが実施される。四半期ごとのマイナーバージョンアップでは、バグや脆弱性の修正が焦点となる。最新の主要バージョンは、2024年9月にリリースされたPostgreSQL 17だ。