カイロス総合法律事務所 ・ 田邊勝己弁護士 独占インタビュー ~ 弁護士と企業経営、業界慣習に挑み続ける理由 ~
―在境港カンボジア王国名誉領事館(鳥取県)の名誉領事に就任したと聞く
(鳥取県)境港市との接点は、30年ほど前だ。ある倒産事件を通じて、顧問先になった会社が境港市にあった。社長はある会社にゴルフ場の会員権を担保に融資していた。ところが、融資から1週間後にその会社が会社更生法の適用を申請した。社長から相談を受け、当時は血気盛んだったこともあり、申し立てされたその日にすぐその会社に乗り込んだ。 その後、(倒産)会社の説明会では倒産法で著名な先生が壇上におられた。債権者の質問の時間となり、私が真っ先に手を挙げて「こんなことが許されていいんですか?会社更生ではなく、即刻破産にすべきだ」などと捲し立てたが、会場の誰も拍手しなかった。 一方、会社側の申請代理人が当該会社の再建を呼びかけるとものすごい拍手だった。ここで負けてはいけないと思って、もう一回、質問しようとしたら、裁判官から「2度目はご遠慮いただきたい」と発言を止められ、申請代理人からも「後で個別に連絡ください」と言われた。その後もやり取りが続き、3~4週間が経過しても回答が得られなかったので、しびれを切らし、大先輩の著名な先生に「いつまで待てばいいんですか?誤魔化そうとしているんじゃないでしょうね」と連絡したところ、すごく怒られて電話もできない状況になった。 「大変、失礼なことを申し上げて申し訳ありません」とファックスしたら、電話があり「もう少し待ってくれと言っているのだから、私を信用してもう少し待ちなさい」となった。 それからしばらくして、電話がかかってきて「今から言うことは無用に口外しないでほしい。満額ではないが大半を返済する。それで我慢してくれ」となった。今から考えると担保権への弁済というか、担保的構成をもって何らかの形で裁判所を説得されたのだと思う。大半が戻ってきたので、その社長が大変喜んで境港に呼ばれるようになった。そんな付き合いが今でも続いている。 カンボジアとの接点は、WHY HOW DO社の経営状況が厳しいなか、新たに中核になるような事業を立ち上げようと思った。WHY HOW DO社は携帯キャリアから携帯電話のデモ端末を初期化する仕事を任されているが、カンボジアでデータセンターを作る話が持ち上がった。コロナ前にカンボジア政府と話を進めていたがコロナ禍で行けなくなり、話が頓挫してしまった。ただ、カンボジア政府の方がこのまま関係がなくなってしまうのは残念だ、ということで名誉領事になりませんかという話が来た。東京には大使館があり、大阪にも先輩の名誉領事がいらっしゃるので鳥取に領事館を設置し、名誉領事に就くことになった。