離婚、「もうこりごり」だけじゃない 「自分の成長」にする人も、変わる平成の家族観

最終更新:3/31 22:52

写真・画像朝日新聞社

 人生出会いがあれば、別れもある。それは夫婦でも同じです。約2分半に1組が離婚する時代。昭和の家族観では「人生の失敗」のイメージが強かったですが、平成に入り、「前に進むための選択肢の一つ」としても考える人が増えてきました。(朝日新聞デジタル編集部・丹治翔)

離婚決断「正直、複雑」

 東日本に住む30代の会社員男性は3月末、10年近く連れ添った年下の妻との離婚届を役所に提出します。「慰謝料、養育費、財産分与、子どもの面会について取り決めた公正証書も作りました。自分が決めたこととは言え、複雑ですね。正直」

 妻とは職場恋愛で結婚しました。「料理がおいしいところが好きでした」と振り返る男性。妻は仕事を辞め、長男(3)と次男(1)にも恵まれました。

 付き合い出してから10年以上、順風満帆だった2人の関係。しかし、男性の転職を機に、数年前から少しずつすれ違うようになりました。

 きっかけはお金でした。妻に一任していた金銭管理は、転職で収入が増えても「小遣い2万円」のまま。クレジットカードを使うことは許されていましたが、飲み会などの出費は嫌みを言われるようになりました。子育てや家事を巡ってもたびたび口論に。「ケンカするたび、妻からは『離婚する』と言われていました」

金銭管理を巡り、たびたび口論に(写真はイメージです)=PIXTAより

子どもと離れても「別の道選ぶ」

 家庭の空気がだんだん悪くなると、男性は「魔が差して」、職場の同僚と不倫関係になります。その異変を妻は見逃しませんでした。興信所を使って男性の動向を調査し、昨年発覚しました。

 「その頃には不倫相手と別れていましたが、妻には分かってもらえませんでした。今までの流れから離婚かなと思っていたけど、なぜか『離婚はしない』と言われました」

 代わりに妻は男性の行動を制約しようとし、それが新たな火種に。言い分は平行線になり、カウンセラーを入れて話し合いを続けました。

 2人の関係を修復するのか、終わりにするのか。男性が気がかりだったのは2人の子どもたちでした。「離婚すると、子どもたちと離ればなれになってしまう。それはやっぱりつらい」

 それでも、今年に入って男性の方から妻に「離婚したい」と伝えました。「妻の要求を受け入れたとしても、関係がよくなるとは思わなかったんです。それならば、ここで別々の道を選んでもいいのではと思いました」

男性から「離婚したい」と伝えた(写真はイメージです)=PIXTAより

親にも事後報告

 男性が切り出すと、妻も「分かりました」と離婚に同意。「あとは細かい条件を詰めるだけでした」。親権は妻、慰謝料数百万、養育費、週末ごとに子どもと面会……。

 この間、男性は周囲の誰にも相談をしませんでした。「自分の問題なので。親にも事後報告になると思います」。

 年度替わりで環境の変化もあってか、離婚件数が毎年一番多い3月。男性も4月には、独身に戻ります。「区切りがついてすっきりしました。この決断を将来どう思うかは分かりませんが、今は後悔していません」

抵抗感薄れる離婚

 男性と妻からの相談を受けた夫婦問題カウンセラーの岡野あつこさんは、男性のケースを「今の時代らしいケース」と指摘。「離婚を切り出された奥さんの対応も『今時』でした」と振り返ります。

 自身の離婚体験をきっかけに、1991年から3万件以上の相談に携わっている岡野さん。今回の相談は、少し前なら離婚にはならなかったかもしれないケースだったと言います。

 「奥さんも夫も、最終的に愛情だけではなく、経済面からも判断したんです」。弁護士を入れて慰謝料、養育費などでお互いが「一番いい着地点」を見つけ、離婚合意に至りました。

 同じく「20~30年前と比べると、損得で離婚を決める人は若い世代を中心に増えている」と話すのは、中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)です。こうした背景には、「周りや著名人の離婚が増え、抵抗感が薄れてきたから」と指摘します。

 2002年の28万9836件をピークに、減少傾向にある離婚件数。しかし、山田教授は「そもそも結婚が減ってきています。離婚件数を婚姻件数で割った数は、3割ほどでこの20年は推移。3組に1組が離婚する現状にはあまり変化がありません」

 リクルートブライダル総研が2016年に実施した離婚に関する調査では、離婚を経験した人の72.2%が周囲に離婚経験者がいると答えています。

 「もちろん、『離婚したいけれどなかなか踏み切れない』という人は多い。子どもがいる人は特に」と話す岡野さん。

 それでも、岡野さんは「離婚を人生の失敗だと思っている人は少なくなっています」と言います。

 再婚の割合が年々増えてきていることからも、「離婚したからと言って『もうこりごり』ではなく、『自分の成長のため』と考える人が増えてきています」(岡野さん)

夫婦問題カウンセラーの岡野あつこさん

離婚式で前向きになれた

 「後悔」ではなく、「相手からの卒業」。そうした意味合いで離婚を捉える人もいます。

 東京都内で飲食店を経営する40代の女性は今年2月、夫から「一緒にいる意味がない」と離婚の意思を告げられました。「驚きましたが、妻というポジションではなくても彼を応援することはできる。離婚が彼にとって幸せに生きることができる選択なら」と受け入れました。代わりに提案したのが、離婚式でした。

 離婚式は、2人が新郎新婦ならぬ「旧郎旧婦」となり、友人の前で離婚を報告。最後の共同作業として、「独身にカエル」の意味を込めた「カエル付きハンマー」で結婚指輪をたたき割ります。発案者でプランナーの寺井広樹さんによると、2009年から約530件の離婚式が開かれています。

夫婦最後の共同作業として、結婚指輪をハンマーでたたき割る離婚式=寺井さん提供

 再婚の女性にとって、離婚式は2回目です。最初は、離婚してから4年後の2011年に挙げました。「離婚したことは、心の奥底にある箱に入れて触れないようにしていました。でも、人に話せない部分を抱えていることがもどかしかったんです」。テレビ番組で離婚式が紹介されているのを見て、「これなら離婚を人生の節目として消化できるんじゃないか」。渋る元夫を説得して、式を挙げました。

 集まった友人4人の前で、女性は元夫と一緒に結婚指輪をハンマーでたたき割りました。「すごくすっきりしました」。さらに大きかったのが、友人に見てもらったことで、離婚が「見られたくないもの」ではなくなったことでした。

 「離婚をニュートラルに、客観的に考えられるようになって、ようやく前向きになれました」。その頃、女性は今の夫と巡り合います。「お互い食の問題に関心があって、最初はレストランを一緒に開くビジネスパートナーでしたが、まっすぐで頼りがいがある所にひかれました」。レストランがオープンした半年後の2013年に再婚しました。

離婚式を経て「前向きになれた」と話す女性

結婚よりも大事な節目

 しかし、再婚から2年が過ぎたころ、店の運営に対する方針の違いが目立つようになり、夫婦関係は悪化していきます。「毎日が言い争いで、本当につらかった。離婚も考えました」。心労も重なり、女性は昨年2月、体調を崩して入院しました。

 ベッドの上で改めて人生を見つめ直したという女性。「相手に幸せにしてもらおうと期待するから、そうでなかった時につらくなるんだと気がつきました」。退院後は「まずは自分で自分を幸せにしよう」と心がけるようになり、夫への接し方も優しくなりました。そうすると夫も、女性に思いやりをもって接してくれるようになりました。

 「どんどん夫婦仲はよくなっていきました」と修復の兆しを感じていた女性。しかし、夫が選んだのは離婚でした。「彼の決断を聞いたときに、『ともに体験すべきことが終わったんだな』と思いました。2人に子どももいなかったので、反対はしませんでしたが、結婚生活を客観的に振り返って次に進むために離婚式を希望しました」

 3月末の離婚式を終えた後、2人は4月に離婚します。「一緒にいることでのプラスの要素が限りなくゼロに近くなったから別れるので、離婚を肯定しているわけではないけど、離婚があったから今の自分がある」と話す女性。飲食店の経営からも離れる予定です。

 「離婚は結婚よりも大事な人生の節目。くさいもののように扱って、ふたをしていたらもったいないです」

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連載「平成家族」

 この記事は朝日新聞社とYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。家族のあり方が多様に広がる中、新しい価値観と古い制度の狭間にある現実を描く「平成家族」。今回は「離婚」をテーマに、3月28日から3月31日まで計4本公開します。