「専業主婦も輝ける」 女性活躍への疑問「家族を支えているのは私」

最終更新:1/5 11:42

写真・画像ミシンを使ってテーブルクロスを縫う斉藤綾さん=水戸市(朝日新聞社)

 「専業主婦は時代に逆行?」と題した新聞投稿が2年前、反響を集めました。平成に入り、結婚しても仕事を続ける女性が増える中、投稿した女性は「家族の幸せを支えているのは私」と専業主婦に誇りを持っています。だからこそ、国が奨励する「女性活躍」には疑問も。「専業主婦だって働く人と同じように輝ける。いろんな人がいてよくて、どれが正しいというのはない」。投稿に込めた思いは、今も変わりません。(朝日新聞記者・本間沙織)

「お母さんたちは十分働いている」

 2016年11月5日の朝日新聞朝刊に、「専業主婦は時代に逆行してる?」(東京本社発行版)と題する投稿が載った。

 「好きなことは家事」と記し、お弁当やご飯作りに掃除、洗濯と、ほぼ毎日繰り返しだけど「充実した日々」とつづった。それなのに肩身が狭くなる一方で、「悠々自適のマダム」と言われることもあって「心外」だという。そして、こう訴えた。

 「国は、働け働けと言わないで。お母さんたちは十分働いているのだから」

2016年11月5日の朝日新聞朝刊に掲載された「専業主婦は時代に逆行してる?」と題する投稿

毎日、疲れと満足感

 この投稿に対して、賛否さまざまな意見が寄せられ、後日、反響特集も掲載された。

 最初の投稿をした水戸市の斉藤綾さん(43)は、いまも専業主婦を続けている。

 長男(17)を妊娠したことを機に、仕事を辞めて専業主婦になった。午前6時に起きると、朝食を作る。家族の健康のため、平日は土鍋で炊いた十六穀米と、ネギとすりゴマ入りの納豆を欠かさず用意する。休日は、旬の果物と野菜で作ったジュースと自家製パンになる。

 午前7時40分、家族を見送ってから、自分の朝食の時間だ。起床後、初めて腰を下ろす。終わったら、朝から3回転させた洗濯物を干す。住んでいるマンションのベランダはスペースが限られているが、家族4人分の衣類でも乾きやすく干すよう気を配る。晴れた日には布団も干す。そして掃除機をかけ、床や窓を拭く。3LDKすべての部屋をきれいにする。

 次男(12)が下校するまでには、晩ご飯の支度も済ませておく。時々おやつに出すオートミールクッキーや、ヨーグルトババロアは手作り。レシピは、同じく専業主婦だった母から教わり、子どものころから親しんできた味だ。次男と一緒におやつを食べた後、宿題を見て、習い事へ送る。

 会社員の夫(46)と長男は帰宅時間が異なるため、それぞれに夕食を温め直して出す。後片付けや翌日のお弁当の準備を終えると、午後11時を回る。疲れと満足感で、すぐ眠りに落ちる。

 毎日は、こんな流れでほぼ同じように繰り返される。

同じく専業主婦だった母直伝のレシピでオートミールクッキーを作る

「みんなの幸せを支えているのは私」

 昨年のクリスマスイブ。子どもたちと一緒に作ったピザやケーキで食卓を囲むと、夫が「幸せだな」とつぶやいた。「みんなの幸せを支えているのは私」。誇らしかった。

 ずっと勤めに出ないでいると、「具合でも悪いの?」と心配する人もいた。友人からは「働かざる者食うべからずよ」と言われた。仕事を探してこられたこともあった。

 夫や子どもに「働いたら」と言われたこともある。それでも、自分が働くことによって、家族の家事の負担が増えることなどを説明したら、それ以上は言われなくなった。

オートミールクッキーをオーブンから出す

家事は「マルチタスク」だ

 かつては専業主婦世帯が主流だった。それが、1997年以降は共働き世帯が上回るようになった。女性の社会進出に加え、景気の低迷から共働きでないと生活できない世帯が増えたことも背景にある。

 斉藤さんにも、やりたいことはある。子どもに絵本を読み聞かせたり、習い事の送迎の合間に本を読んだりしているうちに、司書の資格を取りたくなった。資格を取ったら、図書館で働きたい。

 韓国語もラジオ講座を聴き、週1回のレッスンを受けて10年になる。それを生かして、2020年に開催予定の東京五輪で、通訳のボランティアをしてみたい。

 でも、一番力を注ぎたいことは、家族が外でパワー全開で頑張れるようサポートすること。そのために、日常のすべてを整えることに徹したい。

 それに、家族の予定を組むことや健康管理など、物事を同時並行でこなす家事は「マルチタスク」だと思っている。専業主婦には、多くの能力が必要とされるに違いない。そんな自負がある。

斉藤さんが家族4人分のスケジュールを書き込んだカレンダー。リビングにかけてある

「女性活躍」にため息

 かつては母親からの干渉を疎ましく感じることもあり、「専業主婦にはなるまい」と思った時期があった。ただ、家庭を持ってみたら、考え方が変わった。それまで人生に大きな目標はなかったが、育児や家事は自分がプロデューサーになれる。やりがいを感じている。

 毎朝、夫と2人の子どもたちを送り出すと、リビングで1人、朝食をとりながら朝刊をめくる。安倍政権が掲げる「女性活躍」の記事を見るたび、ため息が漏れる。

 「女性活躍」の名のもとに、政権は女性に働くことを奨励している。仕事をしたい女性が働きやすい社会にするのは大事なことだろう。一方で「なかなか見えにくいけれど、家事や育児にも素晴らしい魅力がある。専業主婦だって働く人と同じように輝けるのに」という疑問はぬぐえない。

 特にこれから結婚して家事や育児をすることになる人たちに知って欲しくて、投稿した。いまも、その当時と思いは変わっていない。

 「国は働け働けと言うけれど、専業主婦は十分働いていると思うんです。いろんな人がいてよくて、どれが正しいというのはないと思う。社会はどんな選択も受け入れてほしい」

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