【熊本地震連載】伝えたい、子どもを守る防災術

最終更新:2017/1/14 0:00

写真・画像Yahoo! JAPAN

キーポイント

  • 子育て世帯の地震体験を伝えるウェブサイトが開設されました。
  • 車中泊や衛生面などで、さまざまな思いもよらない状況がありました。
  • ママ同士の連携で、今すぐに楽しく始められる防災アイデアの紹介も始めています。

熊本地震では子育て世帯ならではの困り事がありました。何が起きてどう動いたか、リアルな状況を知ってこれからの防災に役立ててほしいと、熊本のママたちが発信を続けています。(Yahoo! JAPAN北九州編集室)

※2016年4月に起きた熊本地震のその後を伝えるYahoo! JAPANの連載企画です。毎月14日にお届けしています。

ママたちの体験談を集めたウェブサイト

昨年11月に開設されたウェブサイト「ママたちの熊本地震(ままくま)」です。

「暗闇の中、子どもを逆さまに持って運んでしまった」

「子どもが嘔(おう)吐下痢中に地震。車中泊は本当につらかった」

「カセットコンロでお湯を沸かして、庭で生後3週間の子を沐浴させた」

地震発生時に何が起きたか、子どもはどんな様子だったか、あるとよかった物・あってよかった物は何か。妊娠中のママの不安から高校生の通学問題まで、30人余りの体験談が掲載されています。

不安いっぱいの車中泊で目覚めた防災意識

サイトを開設したのは、熊本県南阿蘇村のフリーライター宮崎景衣さんです。

宮崎さん母娘。お父さんは職場の地震対応で不在だったため、残った2人で4泊、車中泊しました

宮崎さんはもともと防災に関心が高かったわけではありません。

昨年4月16日の本震後、宮崎さんは当時4歳だった娘さんと4泊、自宅近くで車中泊しました。

「日常の暮らしが一瞬にして奪われた。初めて地震の恐怖を思い知りました」

寒さと不安を感じながら毛布に包まって過ごす中で「もっと小さな赤ちゃんを抱えたママはどうしているのだろう」と気になったのがサイト開設のきっかけです。

発災からしばらくして、ママ友たちと地震のことを語り合うと、思いもよらない過酷な状況があったことを知ります。

「体験談をまとまった形にできれば全国のママたちの参考になるかもしれない」。聞き取りした内容を文章にする作業を始めました。

「思い出すと泣くから」と取材を断られることも

もともと電話取材を得意とする宮崎さん。しかし震災の体験談を聞き出して発信する作業は簡単ではありません。

サイト上に連絡先を公開していますが、ほとんどの取材先はつてをたよって探しだした人です。

震災から半年以上が過ぎてようやく落ち着いて話せるようになった人がいる一方で、取材予定先の家族から「地震のことを思い出すと泣き出すので」とお断りの連絡を受けることもあります。

宮崎さんが試行錯誤しながら聞き取った体験談。震災時には思いもよらないことで困るということがわかりました。一方で、事前に災害にどう備えればいいのかということは疑問として残ったままでした。

家事や育児などの合間をぬって、電話取材と執筆を1人でこなす宮崎さん。「被災された方たちの代弁者として、熊本地震のリアルを伝えたい。防災をもっと学び、ライフワークとして続けます」

熊本で活躍中、311を経験したママ防災士

宮崎さんはそんなとき、熊本で活躍するママ防災士・柳原志保さんの存在を知りました。

柳原さんは宮城県出身。東日本大震災で被災し、当時5歳と7歳の息子さん2人とともに体育館で2週間の避難所生活を送った経験があります。

その後、熊本県和水町に移住。防災士の資格を取得しました。

現在は、熊本市東区の子育て防災マニュアル作成を担当しています。

ワークショップで参加者の話を聞く柳原さん(左)。柳原さんの講演は「わかりやすい」と評判で、特に熊本地震後は口コミで広がり講師依頼が激増。9カ月で100回、延べ1万人を超える人たちに防災術を伝えました。「目の前にいる人の意識と行動を変えられたら助かる命があるかもしれない。だから講演1回1回が真剣勝負です」

防災マニュアルの作成に向け開いたワークショップでは、熊本地震を体験したママたちから、避難所にいられなかったという声が多く上がりました。

「子どもが走り回る」「ギャンギャン泣く」といった理由で避難所を利用するのは控え、車中泊を続けたというのです。

柳原さんは「避難所から遠ざかると、その分、被災者としての声が行政や支援者に届かなくなってしまう。日ごろから地域の防災組織に女性が加わることが大切」と語ります。

手間もお金もかけず、今日からできる備え

「ママ防災士」柳原さんの活躍を知った宮崎さんは、サイト内のコーナー「防災ハウツー」への協力を求めました。

最初に教わったのは、食料などの備蓄のポイントです。

「普段から好きなお菓子を多めに買っておき、たまに自分へのご褒美(ほうび)として食べると、楽しみながら備蓄できます」といった柳原さんのお話に、宮崎さんは「目からウロコの連続」だったそうです。

柳原さん宅の玄関そば。連絡先や保険証コピー、公衆電話用の10円玉などが入ったパスケースなど、災害時に持ち出すものが並んでいます。「家族の写真も入れると、離れてしまった時の心のケアに役立ちます」

柳原さんの非常用持ち出し袋の中身。家の中で使わなくなった文具、粗品のタオル、試供品の衛生用品、100円均一のロウソクなどを自ら袋詰め。「お金をかけなくてもそろいます」

レジ袋のおむつ、牛乳パックのお皿、新聞紙のスリッパなど、身近にあるもので作った防災グッズ

「防災」への思いでつながるママたち

ウェブサイトで情報を発信する宮崎さんと、足を運んで講演する柳原さん。スタイルは違っても、宮崎さんにとって柳原さんは、頼もしい「防災の先輩」です。

「防災は初めはみんな他人事。経験して初めて自分事になる。だけど被災してしまってからでは遅いこともあるんです。大切な子どもを守るために、私がお伝えする情報が少しでも役に立てば」。宮崎さんと柳原さんは共通の思いを胸に、発信を続けます。

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「被災地のことを伝え続ける」意味を被災地の人たちはどう考え、取り組んでいるのか。どうすればみんなの幸せにつながるのか。この1年を通して話を聞き、現地を歩き、答えを探っていきます。

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