【熊本地震連載】続く支援、地元の手で

最終更新:2016/12/14 18:30

写真・画像Yahoo! JAPAN

キーポイント

  • 地震で道をふさいでいる岩がネットオークションに出品されました。
  • 被災者が避難所から仮設住宅へ移り、支援内容は変わっています。
  • 復興まで息の長い支援に向け、地元の力を高める必要があります。

4月14日に発生した熊本地震。しばらくは、被災地の支援に多数の団体や個人が訪れたものの、このところは支援団体の撤退やボランティアセンターの閉鎖が相次いでいます。そんな中、今も被災地に残り活動している人たちはどのようなニーズに応えようとしているのか、その挑戦と模索を取材しました。(Yahoo! JAPAN北九州編集室)

※2016年4月に起きた熊本地震のその後を伝えるYahoo! JAPANの連載企画です。毎月14日にお届けしています。

道をふさいだ岩を逆手に取って

今月9日、編集室に1本の電話が入りました。「熊本県御船町に道路をふさぐ大きな岩がある。その岩をネットオークションに出品するつもりです。ヤフーニュースで話題として取り上げてもらえませんか」

私道をふさぐ高さ3.2m、周囲12mの石灰岩。地域の伝説にちなんで「風神石」(かざがみいし)と名付けたそうです(御船町)

電話の主は、農業復興支援ボランティアを取りまとめている河井昌猛さん。4月14日の前震で高さ3mを超える岩が滑落し、畑を使えない状態が続いているといいます。岩は私道にあり、行政負担では復旧できません。

「岩を取り除く費用は、申し訳ないですが落札者にご負担いただきたいと思っています。そのかわり現地の被災の状況をくまなくご案内しますし、ご要望があれば交流もさせていただきたいです」

復旧復興を妨げる目の前の難題をどうしようか、地域の方たちと相談して至った苦肉の策です。

被災地では今もなお、直面する課題に日々向き合い頭を悩ます支援者たちが大勢います。

避難所から仮設住宅へ、変わる支援

しかし支援団体の数は徐々に減ってきています。

熊本地震の支援団体らの連絡会議「火の国会議」の事務局によると、県外から現地入りした支援団体も含めると、ピーク時、熊本県内で活動した団体は300にのぼりました。しかし、次第に撤退や活動縮小が進み、先月には約150とほぼ半減しました。

毎週火曜に開かれる「火の国会議」。支援関係者なら誰でも自由に参加できる情報共有の場。発災5日後の4月19日の初開催以来、これまで100回余り開催されました(熊本市中央区)

撤退が進んだ一番の理由は、避難所から仮設住宅へと被災者の生活環境が変わったことによる支援内容の変化です。

県内では夏場から仮設住宅団地の整備が進み、16市町村に110の仮設住宅団地ができました。熊本地震で開設された避難所は、先月18日でゼロになりました。

発災当初の支援は、がれきの撤去や損壊した住家の後片付け、炊き出しなど避難所での生活支援が主でしたが、今では仮設住宅のコミュニティー作りが大きな課題です。

また、民間賃貸住宅を利用した「みなし仮設住宅」入居者への支援など、新たな課題も出ています。応急措置的な支援から、長期的に取り組まなければならない支援へとシフトしているのです。

「仮設住宅での支援は2年は腰を据えて取り組む必要があります。息長く支援を続けていくために、県外の支援者の力だけに頼らず、地元の力で支援を担っていかなければなりません」と火の国会議事務局で「NPOくまもと」理事の樋口務さんは気を引き締めます。

テクノ仮設団地で開かれる「お茶っこカフェ」。支援団体「キャンナス熊本」スタッフとして宮城県石巻市から単身赴任中の高橋誠さん(右)のほか仮設入居者も運営側に回り、笑顔でもてなします(益城町)

支援が必要な被災地は熊本だけではない

さらに今年は全国各地で災害が相次ぎました。8月末の台風10号、10月21日の鳥取県中部地震、11月22日に福島県と宮城県に津波警報が出た福島県沖地震。

災害が起きるたび、熊本の支援体制に少なからず影響が出ました。東日本大震災の被災地から熊本入りしていた団体が台風10号復旧支援のため東北に戻ったり、地震被害が出た鳥取に向かったり、といった動きがあったといいます。

「台風10号や鳥取の地震で人手がとられたという話はありますが、被災地は熊本だけではありません。より大変な状況のところに支援が向かうのは仕方ない。残ったわれわれは地元で協力して頑張るしかない」

そう語ってくれたのは一般社団法人「チーム熊本」のスタッフです。

現在も、家屋解体の手伝いなどを現地で続けていますが、ボランティアの減少で、被災者の依頼に応じられないこともあるそうです。

被災した家屋の解体作業が続いています。すでに更地になったお宅、倒壊したままのお宅など状況はさまざまです(益城町)

県内の人たちにボランティアを広めたい

こうした状況の中、地元の力をさらに掘り起こそうという動きが出ています。

ボランティア情報サイトを運営するNPO法人「ボランティアインフォ」は、主に遠方から来る人に向けた熊本駅前でのボランティアの案内業務を10月で打ち切りました。

代わりに始めたのは、県内や近隣で行われる各種イベントでのボランティア呼びかけです。「遠方だと交通費など負担が大きく継続が難しくなっていきます。近くの人たちに自分もやってみようと気軽に思ってほしい」とスタッフの前川俊さん。

「必要な支援が移り変わり窓口が見えにくくなった今だからこそ、どんな支援がどこで必要とされているのかきめ細かな情報発信が必要。掘り起こしを進めたい」と前川さんは話します。

地元の力だけでは解決できない課題も残る

しかし、残っている課題は地元の力で解決できるものだけではありません。

御船町の巨石は13日、ネットオークションに出品されました。原稿から写真、落札者の現地案内の体制などを一気に手配した河井さんは、こう語ります。

「岩を取り除く手段はほかにあったかもしれません。ただ情報発信することで、多くの方たちに震災復興に目を向けてもらいたかったのです。熊本は地震だけでなく、豪雨被害もありました。地震のあった鳥取や台風10号の被害に遭った岩手も同じように、外から想像する以上に長い時間かけて復興に向かっていくのだと思います。いつどこが被災地になるかわからない日本で、災害について少しでも関心を持ってもらえたらなと思います」

テクノ仮設団地に福島から届いたメッセージ。熊本と鳥取の皆さんへ、復興支援に対する感謝と激励の言葉がつづられています(益城町)

全国各地で災害が起きる可能性があり、長期的な復興の取り組みを進めるためには、地域の力で自立できるようにしなければならない。しかし地元の力だけでは対処できない課題をどう解決していけばいいのか。その難しさを感じた取材でした。

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「被災地のことを伝え続ける」意味を被災地の人たちはどう考え、取り組んでいるのか。どうすればみんなの幸せにつながるのか。この1年を通して話を聞き、現地を歩き、答えを探っていきます。

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