災害時、赤ちゃんを守るには。熊本の助産師からの助言

最終更新時間:2016/5/8 15:52

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キーポイント

  • 妊娠中は胎動を意識して。かかりつけの病院で出産できるか確認しましょう。
  • おっぱいは赤ちゃんのライフラインであり、安心の源。出なくても吸わせましょう。
  • おしっことウンチの回数で赤ちゃんの変化に気をつけましょう。

大きな災害起きた時、もし臨月だったら、妊娠が分かったばかりだったら、新生児がいたら、乳児がいたら。熊本県の由来助産院で助産師をする甲斐由香さんに聞きました。

助産師の甲斐由香さん(奥)

臨月

熊本地震が起きて、由来助産院に多かった問い合わせの一つといいます。
災害が起きて、数日後に予定日が迫っている時、どうしたらいいのでしょうか。

1.かかりつけの病院で出産できるか確認

まずはかかりつけの病院が出産のできる状況か確認を。
病院が被災してやっていなくても、別の病院を必ず紹介してくれます。

2.おなかの張り、痛み、出血に注意

生理より多い出血があったり、おなかが板みたいにカチンカチンになって痛みがすごく強い時は普通の陣痛ではなく異常の可能性があります。
特に病院から注意するように言われていることや合併症がなければ、通常通り10分間隔になってから病院にいって十分に間に合います。

3.赤ちゃんの胎動を確認する

お母さんができることで一番大事なことは赤ちゃんの胎動をちゃんと確認しておくことです。
赤ちゃんは生まれる最後の最後まで動いています。胎動が減ったり、上記のような異常がなければ大丈夫なので、意識しておいてくださいね。

妊娠初期

これも問い合わせが多かったものの一つだそうです。

おなかの赤ちゃんを守れるのはお母さんだけ

甲斐さん「震災があった当初、『妊娠したばかりで、おなかが痛くて、頭も痛い。渋滞で通勤に3時間かかっていて、仕事に行かなければならない。どうしたらいいでしょうか』という相談の電話がありました。

かかりつけの病院にご連絡しましたかって聞いたら、『してない』って言うんですね。
どうしてですかって聞いたら、やってるか分からなかったからと。
何か不安だから話を聞いてもらえそうなところに、電話されたんでしょうね。

とりあえず診察を受けて、切迫症状があれば診断書で仕事はお休みできるから、休みましょうって。何かあったら自分を責めることになってしまう。診察を受けて、お薬をもらったり、入院したら入院で、それで一つ安心ですよね」

検査薬で陽性が出たばかり、診察を受けていない

緊急性はないので、出血やおなかの痛みなどがなければ、落ち着いて2週間くらいたってからの受診でも大丈夫です。

甲斐さんが由来助産院のFacebookにした4月15日の投稿は、5.6万人がシェア。全国から支援物資が届いた。

新生児~乳児

甲斐さん「新生児(生後4週まで)の赤ちゃんの中には、震災当日や翌日に生まれ、普段なら病院で習うことも何も教えられずに早く出された母子もいました。病院を出されなくても食事が出なかったり、病院の水が出なくなってしまったりと大変でした」

【おっぱいの飲ませ方が分からない】

おっぱいは、ちゃんと習わないと上手に吸わせられないものです。
胸は産後に大きく張りますが、その張っているおっぱいを赤ちゃんは上手に吸うことができません。
また、深く吸わせないと「浅吸い」になり、乳首が切れて出血、ボロボロになります。おっぱいも吸えないので、さらに胸が張って痛くなります。

甲斐さん「おっぱいの吸わせ方を病院で習わず、うまく吸わせられなくてどうしていいか分からないと新生児を抱えたお母さんが来ました。

おっぱいがおわんをひっくり返して乗せたみたいにガチンガチンになっちゃうんです。
それをほぐしてマッサージして、抱き方や乳首の吸わせ方を教えました」

【おっぱいを欲しがる赤ちゃんには、出なくても吸わせてあげて】

「赤ちゃんが何度もおっぱいを飲みたがるのですが、おっぱいが出ていないのでしょうか?」という質問も多かったそう。
赤ちゃんは、不安を感じたり、いつもと環境が変わると、栄養のためだけではなく安心のためにおっぱいを欲しがります。
おっぱいが出ていないわけじゃないので、何回もあげてください。吸わせることが大事なのです。

【離乳食は急がずに】

▼生後5~6カ月
ちょうど離乳食を始める時期ですが、このときに被災した場合は無理に急がずにおっぱいで大丈夫。
安全な水や食料が手に入ってからでも十分です。

▼7~8カ月の離乳食中期
離乳食が作れる状態にない場合にも、無理に探して赤ちゃんにすすめなくてもOK。

●避難所でのおかゆの作り方●
ジップロックにご飯とお湯を入れて、新聞紙やタオルなどでくるんでしばらく保温します。
月齢によってお湯の量で軟らかさを調節してください。

全国から届いたおむつの一部

【おしっことウンチの回数に注意】

おしっこは大事です。自分と赤ちゃんの水分量は意識していてください。
赤ちゃんは一日に大体7回くらいおしっこをします。おっぱいが枯れて出ていないのではと不安な人は、この回数を目安に。
避難所ではトイレの心配や、汗をかくことを避け、あまり水分を摂取しない人もいます。
しかし、おっぱいは赤ちゃんのライフライン。赤ちゃんのためにも水分をしっかり摂取してください。

ウンチはかなり個人差がありますので、普段の回数と変わらないかを注意してください。
環境や食べ物の変化、また避難所ではあまり動けず、腸の動きが悪くなって、便秘になったりとか下痢になったりといった変化があります。
ウンチは2、3日出なくてもそんなに心配しなくて大丈夫です。

【沐浴(もくよく)できない】

ライフラインがストップしてしまい、災害時には長くお風呂に入れない場合があります。お風呂に入れないことで、赤ちゃんの肌にかぶれができることがあります。

▼新生児期
新生児期2日目といった生後ごく初期の赤ちゃんは、最初の1週間くらいはあまり皮脂の分泌がさかんではなく、1週間くらいは沐浴しなくても大丈夫です。最近では、ドライテクニックといって1週間くらいあえて沐浴しない病院もあります。

▼生後1カ月~
生後1カ月からは新陳代謝が活発になり、ブツブツとか乳児発疹ができてくるので、新生児期とちがって沐浴はさせた方がいい。
せっけんでよく洗い、たっぷりの水でゆすぐ必要があるが、災害時は拭いてあげるとか、部分的に入れてあげることで補いましょう。

大人用の除菌ティッシュをお尻拭きなどとして使うのは、アルコールが含まれているのでやめましょう。除菌ティッシュしかなければ、水で流してあげてください。

赤ちゃんの皮膚と皮膚が重なっているむちむちしたところがかぶれやすいので、こまめに拭いてあげてください。
最初はおむつがなかなか替えられず、おしりがかぶれる赤ちゃんも多いので、ドレッシングなどの空き容器に水を入れておしりを流してあげるといったことが大切です。

アフロ

このむちむちした、皮膚と皮膚の間を拭いてあげましょう。

地震への備え

甲斐さん「おむつとお尻拭きは必須。赤ちゃんを運ぶスリング、防災ずきん、懐中電灯、お水。これは1セットにして、倉庫ではなくお部屋に置いておくことが大事だと痛感しました。」

まずはお母さんが笑顔になることで、赤ちゃんも笑顔に

甲斐さん「子どものため、避難所で周囲に迷惑かけない、うちは他の地域よりは被害が少ないから…と我慢しているお母さんが多いです。

車中泊がつらいのに、実家でさえなかなか頼れない人もいます。夜11時にここに来て、泣きに来るお母さんもいました。
お母さんが感情や不安を表出する場所が必要です。

避難所に最後まで残ってるのは、警察官、消防士、役所の職員など、地震で家に帰らず仕事をしている公務員の奥さんたちが多かったです。
夫が地元の消防団をしていてほとんど一緒にいられない、会社が始まって昼は避難所にいないという場合も多いです。

お父さんたちにこういう時、何かを要求する、というのは難しいのかもしれないと思いました。
地震があって、結婚後初めてケンカしたという人もいました。
パートナーシップの再構築も必要です。」

東日本大震災などといった震災が発生したことをきっかけとして夫婦が離婚するということである。震災離婚に至ることとなった要因というのは、主に震災を機に価値観の違いが夫婦関係を維持できないレベルにまで達してしまうことになる。

震災離婚-Wikipedia