【連載】 「戦場」乗り越えた病院の一週間。患者も避難者も受け入れ

最終更新:2016/5/2 0:01

写真・画像桜十字病院提供

キーポイント

  • 熊本県内最大規模の民間病院も被災したが、スタッフ一丸で困難を乗り切る。
  • 避難者を約400人受け入れ、毎日炊き出しも行った。現在は診療体制に復旧。
  • 今後は避難者のメンタル面が懸念され、そのケアは課題が残る。

 「多くの患者を運び込め」「スタッフの安否や自宅は」、そして「避難者の受け入れは」――地震直後の病院は、緊迫度が高まります。熊本県内最大規模の民間病院「桜十字病院」(総病床数641床)は、夜を徹して対応に追われた「戦場」でした。その一週間を振り返りました。(ヤフー株式会社 社会貢献推進室 森禎行)

「本震」で状況が一変、リハビリ室の屋根は崩壊

 14日の地震直後は、棚が倒れ、屋根から水漏れも発生。施設内の被害はありましたが、この時、スタッフの間では「何とか対応できるのではないか」との雰囲気もあったといいます。

桜十字病院提供

桜十字病院提供

 雰囲気が一変したのが、16日午前1時25分の「本震」です。病院は停電となり、非常用の明かりが頼りとなる中、家屋が壊れた地域住民が、続々と桜十字病院に集まってきました。

桜十字病院提供

 近くの避難所はあふれかえり、外の駐車場もすぐ満車に。「車が止められる安全なところを」と考えた住民が、病院に押し寄せたのです。

リハビリ室の屋根が崩壊

 被害が大きかったのが、リハビリ室です。広い部屋の天井が落ち、無残な姿となりました。

 現在、リハビリ室は復旧作業中です。オープンスペースなどを仮設リハビリ室として対応しています。

「病院に走れ」スタッフが奔走

 病院では、震度5強以上の地震になると、「病院に走れ」と参集する自主ルールがあります。今回の地震では、スタッフの7割が集まったといいます。

 さっそく患者受け入れの依頼がひっきりなしになりました。1、2日で30~40人を一気に受け入れる必要がありました。
 桜十字病院は「後方支援病院」とされ、急性期病院(急性疾患など重症状態の患者に対して入院や手術、検査など専門的な医療を提供する病院こと)が緊急の患者に対応するため、患者受け入れの要請がきます。周辺の病院では水が出なくなったり、機能が失われた病院もあり、できるかぎりの受け入れを開始。また、軽い症状の患者は、施設内の老人ホームを開放し対応にあたりました。

桜十字病院提供

 並行して、建物が大丈夫かの確認に追われました。地震の影響により、連絡通路は損傷。バリアフリーだった玄関は、スロープが必要なほどの段差ができました。

 井戸水があるため水は確保でき、患者の食事を作ることができましたが、エレベーターが動きません。高層階に食事を運ぶのが非常に大変で、手が空いたスタッフを集めて対応にあたります。

避難者にも病院を開放、毎日炊き出しも始める

 桜十字病院では、病院内部や駐車場を避難住民に開放することを、早々に決めました。また夜間は、玄関脇の社員食堂を開放し、駐車場とあわせて住民約400人が避難しました。加えて病院スタッフの家族も約100人避難していました。

桜十字病院提供

桜十字病院提供

 また、避難住民のための炊き出しをすぐに始めました。「あたたかいものを食べて安心していただきたい」と開催し、連日長い行列ができました。

桜十字病院提供

 近くに指定の避難所があっても、「余震が怖い」と不安に思う住民がたくさんいました。「周囲に家のない開けたところに行きたい」とみなさん考え、この病院を目指したようです。

桜十字病院提供

スタッフ全員の被災状況に対応する

 桜十字病院にはパート含めたスタッフが1200人います。その被災状況をシートに記録し、必要とされることを付箋で印をつけています。「水が必要」「避難中なので勤務を始めるには時間かかる」「家のがれきがたくさんあるのでボランティアがほしい」などの声があがります。

桜十字病院提供

 家が全壊したスタッフもたくさんいます。患者の人命を預かっている立場ですが、病院側は患者を支えるスタッフとその家族が不安を抱えず仕事に専念できるよう、取り組んでいます。
 倒壊して住めない社員には、寮の部屋を提供も行いました。

こうした震災後の対応について、反省会で報告・共有しています。

東北の被災地からの応援

 東日本大震災の被災地、宮城県石巻市の石巻ロイヤル病院から、あたたかいお礼のメッセージとスタッフ写真が届きました。もともと縁があった病院です。
 5年前の3月、理事長が自ら、車で物資を運び、募金とともにロイヤル病院に届けました。そのお返しとして、ロイヤル病院の理事長が22日(金)に直接来院されたそうです。

 また、多くの企業からの支援物資が、初動時には非常に助かりましたとの声も。

桜十字病院提供

避難者は体を動かすことが大事

 先週は、けがをした外傷患者が多くいたそうで、ここ数日では、けがのリハビリで病院を訪れる人が増えました。病院側によれば今後は「メンタル面の健康管理が課題」と言います。

 避難者は、「いかに体を動かすか」が大事です。体が動かない状態が積み重なると、筋力や可動域が弱くなり、メンタル面にも影響します。また、口腔ケアをして口の中を清潔に保たないと、むせて肺に異物が入って誤嚥(ごえん)性肺炎になる可能性もあります。



 未曾有の大震災でしたが、なんとか病院機能を維持し、25日から通常の診療体制に復旧しました。今後も一刻も早い復興を成し遂げられるよう私たちも現地での活動を続けていきます。

桜十字病院提供

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