小学生も「基地問題」や「トランプ大統領」が知りたい――Yahoo!きっずはなぜ小学生新聞の配信を始めたのか

 「Yahoo!きっず」は2016年12月から小学生新聞のニュース記事の配信を始めました。トップページには米軍基地移設問題や選挙の話題など、大人でも難しいと感じる硬派なニュースが並んでいます。

 なぜ今、Yahoo!きっずは子どもたちにニュースを伝えようと考えたのでしょうか。そもそも今の小学生とニュースを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。Yahoo!きっずに記事を配信いただいている朝日小学生新聞と毎日小学生新聞、家庭で小学生新聞を購読しているヤフー社員にも話を聞きました。

いまどきの小学生は「社会問題に関心がある」?

 2016年9月に発表された文部科学省の調査によると、「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がある」小学生は経年で増加している傾向にあります。関心があると答えた小学生は3年間で57.6%から70.8%にまで上昇しています。※参考:子供たちはどこまで社会に関心を持ち、新聞を読んでいるのだろうか(不破雷蔵)

 Yahoo!きっずがニュース配信を始めたのは、「子どもの視野を広げられる新鮮なコンテンツをたくさん提供したい」との担当者の考えはもちろん、利用している子どもたちから「Yahoo!きっずで情報収集がしたい」との声もあったためでした。また朝のニュースや夕方のワイドショーの話題が学校で上がることも多く、子ども向けニュースの需要を感じたそう。「将来的にはYahoo!ニュースを使ってもらいたい」といった中長期的な狙いもあるといいます。

 「Yahoo!きっずボイス」(=テーマに沿って意見を投稿するサービス)でも、「国会でどんなことを議論してほしいか」「環境のためにやっていることは」など社会性のあるテーマを取り入れ始めたところ、ユーザーが活発に投稿する様子が見られました。


小学生新聞の記事に合わせてテーマを決めることも


 そもそもYahoo!きっずは、主に学習のシーンで使われるサービス。全国7割の小学校で調べ学習をするときに利用されているとの調査結果も出ています。調べ学習の際に、トップページにニュースが出ていると学習の切り口も探しやすくなるとのこと。ニュース配信は、小学校での使われ方の向上にも一役買っているようです。

 紙の小学生新聞は大人向けの新聞よりカラフルでイラストが多く使われ、そして何より「小学生に伝えるプロ」が日々記事を作っています。とはいえ、少子化やニュースに触れる方法が変化するなか、媒体を維持していくことは簡単ではありません。小学生新聞がYahoo!きっずで配信を始めた背景には、「小学生新聞を知る」場所を増やせたらとの願いも込められています。では、紙面を作るみなさんは、今どんな考えを元に記事を作っているのでしょうか。

 Yahoo!きっずに記事を配信いただいている朝日小学生新聞と毎日小学生新聞の2紙に、ネタ選定や編成方針を聞いてみました。

「幅広く学習に役立つものに」――朝日小学生新聞の場合


朝日学生新聞社 出版・新コンテンツ部の担当者


――朝日小学生新聞はどんな新聞ですか。編成方針は

朝日小学生新聞
朝日小学生新聞は4月に創刊50周年を迎えます。現在は小学4~6年生をメインに、低学年からも購読いただいています。基本的な編成方針は、幅広く学習に役立つものとすること。受験に重きを置いているわけではなく、毎日届き、勉強に役立つツールと考えていただければと思います。

トランプ政権の話題も1面で大きく報じる


――どういった部分が学習に役立つのでしょうか

朝日小学生新聞
多様な連載企画で、自分の興味関心を考えられるつくりになっています。「天声人語」の子ども版コラム「天声こども語」や歴史解説、理科の実験などの記事が人気を集めていますね。学習に使える問題や特集なども多いです。一面のニュースはなるべく子どもたちが関心を持ちそうなニュース、話題を常に意識して新聞づくりを進めています。まんがや連載小説など子どもが楽しく読めるコーナーや、作文や便りの投稿欄など参加できるコーナーもあります。

社会のいまを切り取る「天声こども語」。書き写しや音読でよく使われるそう


――購読する小学生にはどうなってもらいたいですか

朝日小学生新聞
できるだけ自分で考えること、世間に目を向けていくことを身に付けてほしいですね。学年が上がるにつれて、身の回りから地域、日本、世界へと視野が広がっていきます。そのとき、新聞を通して「身の回りだけじゃない社会の流れ」に敏感でいてほしいです。敏感になるだけじゃなく、「こんなことをやってみたい」「こういう風にできたらいいのに」と自分で考えられるようになってほしいですね。

「子ども扱いはしない、本気でぶつかる」――毎日小学生新聞の場合


毎日新聞 学生新聞編集部 竹花さん(左)西村さん(右)


――毎日小学生新聞はどんな新聞ですか。編成方針は

西村さん
創刊80周年を迎えました。中心となる対象学年は5~6年生ですが、実際の購読者は学年がばらけており、1~3年生までで3割超にもなります。 僕らの編成方針は「読者を子ども扱いしない」。本紙(=“大人向け”毎日新聞)と変わらない深さで作りますし、小学校6年生以上で習う常用漢字も使います。ただしもちろん小学生向けの国語辞典を用いる、全ての漢字にふりがなを振るなど、伝え方にはこだわります。

――「子ども扱いしない」と、読者はどうなりますか

西村さん
本気でぶつかってきますね。毎日小学生新聞はよく「キミの考えは」と投書を募るんです。メールやFAX、はがきで全国から子どもの意見が寄せられます。例えば本紙の投書欄に載った「母親が働くことはよくない」といったものを引用し、実際に読者に意見を募ったんです。そうしたら「母が働いていることを誇りに思う。私もああなりたい」「兄がいるから正直全然さみしくない」といった本音が届きました。

1面に大きく「キミの考えは」と読者に投げかけ

集まった意見を紙面で紹介。新聞を通して子どもたちとコミュニケーションをする


――購読する小学生にはどうなってもらいたいですか

西村さん
僕らは子どもに「考える力」を養ってほしいと思っています。もちろん紙面では、日々のニュースや興味関心を引く連載も作っています。それにプラスして紙面上でコミュニケーションを取ったり、たくさんの見方や意見を紹介することで、正解のない問いにも自分なりに考えられる力が付けられると思っています。

ー ー ー

 お話を伺った結果、朝日小学生新聞と毎日小学生新聞の共通点は主に3つ。

 1つ目はネタ選定。大人でも難しいと感じるニュースであっても、大切なことであれば本紙と変わらずしっかりと伝えることを重視していました。例えば3月5日週のニュースであれば「北朝鮮の弾道ミサイル発射」や「自民党総裁裁任期の延長」など。もちろん8月は戦争や原爆の特集、3月は東日本大震災の特集も掲載しています。小学生新聞に掲載する記事と、Yahoo!きっずに配信している記事に違いはほとんどないとのこと。

 2つ目は「速報より解説」。子どもに伝えるために文章を検討したり、専門家にわかりやすく解説してもらったりするため、初報から数日過ぎていても記事にするそうです。

 3つ目は、創刊当初から社会性のある硬いニュースを掲載していたわけではないということ。最初はもっと軟らかい記事が多く、漫画やイラストがほとんどを占め、数少ない「子どもの娯楽」だったといいます。変化していったのは、子どもの教育で読解力や表現力が問われるようになってから。知識だけでなく、その知識をどのように応用し、伝えていくかが重要視され出したことで、小学生新聞の役割も変わっていきました。

「子どもには紙とインターネット、どちらにも触れてほしい」小学生新聞を購読する家庭の声

 冒頭で触れた通り「子どもは社会課題に関心がある」傾向があったとしても、小学生新聞を取っている家庭のほとんどは大人(親)の考えを元に購読を始めています。インターネット企業であるヤフーですが、「紙」の小学生新聞を子どもに読ませる社員もいました。


イメージ:アフロ

 今回は6家庭にそれぞれヒアリングを実施。インターネット企業に勤めるからこそ、「紙」の重要性がよくわかったと口を揃えました。

 「全体的にニュースに目を通せる新聞は子どもにとっていいと思う。記事を見るか見ないか取捨選択をできるインターネットのニュースだけだと偏りが出る」と話すのは教育熱心なパパ社員。「受験を見据えて、(子どもの)文章力をあげたくて」と購読を始めました。一緒に紙を広げて読む、音読をさせて語彙力を伸ばす、新聞の表現をインプットさせることが目的――と話します。

 「本当はインターネットだけで十分だと思っていたけれど、おばあちゃんに勧められて」と控えめな姿勢のママ・パパ社員もいました。今回ヒアリングして最も多かった購読きっかけのひとつ、「祖父母に勧められたから」。朝日・毎日が設けている祖父母が小学生新聞をプレゼントする制度を使っているそうです。実際に購読をし始めると「調べものが好きになって、自分で新聞を作るようになった」といった子どもの変化も。

 普段から子どもにインターネットを触らせているパパ社員は、「子どもの興味がYouTubeばかりになっていた」との心配から購読を開始。子どもが「このニュースすごい!」と感じたら新聞を持って報告しに来るようになったといいます。

大人になっても、ぜひニュースに関心を持って

 「小学生」と「ニュース」。なんだか距離のある2つのようですが、実は紙・インターネットを通して密接に関わり合っていました。Yahoo!きっずや小学生新聞を通して、ぜひニュースに関心を持つ大人になってほしいと、Yahoo!ニュースの中の人として願っています。いまを知ることの面白さ、社会について考えることの奥深さは、計り知れないものです。

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