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ミドルエイジを主人公に、小谷陽子率いる製作委員会が"褒めコメディ"に込めた思い

提供:演劇ユニット製作委員会

最終更新:

左から木村もえ、コハル、小谷陽子、西山雅之、松崎眞二

小谷陽子が代表を務める演劇ユニット・製作委員会の最新作「永遠とかではないのだけれど」が、11月12日から14日まで東京の新宿シアター・ミラクルで上演される。コメディ演劇ユニット・GORE GORE GIRLSの西山雅之が書き下ろした「永遠とかではないのだけれど」は、"褒める会"という団体を舞台にした"褒めコメディ(ホメディ)"。演出の小谷、作劇を手がけた西山、キャストの木村もえ、コハル、松崎眞二に、本作に懸ける思いを聞いた。

ミドルエイジを主人公に

製作委員会は、劇作・演出家・女優の小谷陽子が2010年に立ち上げた演劇ユニット。三十代以上の俳優たちと共に、壮年期の男女に焦点を当てたコメディを発表している。製作委員会がミドルエイジを主人公にする理由について、小谷は「三十代以上の俳優にもっとスポットが当たってもいいんじゃないかと思っているんです。昨今、二十代の若者を主人公にした作品が増えていますが、三十代を過ぎてからのほうがいろいろな出来事が起きるんじゃないかと思っていて。二十代の人が物語の中心だと、年齢が高い俳優は必然的に両親や祖父母、先生のような役を演じることが多くなりますが、誰かのお母さんでもなく、誰かのお父さんでもない、"その人自身"を主人公にした物語を製作委員会では描きたいと思っているんです」と話す。

小谷陽子

客観的かつ冷静な視点でコメディを捉える

近年、自ら作・演出を手がけることが多い小谷だが、今回は自身が信頼を寄せる西山雅之に「GORE GORE GIRLSのような良質なコメディを」と脚本を依頼した。「永遠とかではないのだけれど」で西山は、褒める会の会長を務める"カリスマ褒め屋"の女性や、彼女に弟子入りしたプロの褒め屋たちが褒められなくなり苦しむ様子を、コメディタッチで描き出す。今回の作品について西山は「自分の作品ではいつも、誰かしらが揉めていることが多いんです。みんな真剣に揉めているけど、外から見ると彼らがなぜ揉めているのかわからない。そんなふうに、切実な思いがぶつかり合う構造が面白いと思っていて。今回はそこに"褒める"という要素を付け足して、褒められたいが故に争う人たちの物語を書きました。誰しも褒められたい欲求を持っていると思うんですが、他者から必死に褒められたがっている人たちの姿というのは、外側から見たときにとても滑稽だと感じたんです」と明かした。

コメディについては、演出の小谷にも一家言ある。小谷は、客観的かつ冷静な視点でコメディを捉えており、「物語に入り込まずに、離れたところから俯瞰することで浮かび上がってくる面白さがあると思っていて。なので、製作委員会のコメディは、ストーリーにあまり入り込まず観てほしいという気持ちがあります」と話す。また、西山がチョイスした"褒める"というキーワードも、ミドルエイジを主人公に据える製作委員会の作品にとって大きなスパイスになった。「三十代以上になると、いろいろな事情で演劇を辞める人が増えてきます。売れないから辞めるのかもしれないし、褒められないから辞める人もいるのかもしれない。年齢と演劇活動の関係について考えていたところだったので、今回このタイミングで"褒めコメディ(ホメディ)"を題材にしてくださったのは、すごくありがたいことです」と小谷は思いを口にした。

小谷陽子

言霊として残るものがある

今回、出演者を代表して話を聞いた木村もえ、コハル、松崎眞二は、いずれも製作委員会の作品に出演経験のある3人。そんな彼らは、本作をどのように捉えているのだろうか。褒める会の会長・日高弥生役の木村は「日高弥生のセリフに『人から褒められたことは永遠に忘れないだろう』というような言葉があるんですが、私は逆に、『人から嫌な言葉をかけられたことを永遠に忘れないだろう』と感じた経験があるんです。褒められたことであっても、けなされたことであっても、言霊としてずっと残るものがあるんだなと、今回の作品を通して改めて考えました」と自身の人生と重ね合わせながら、本作の根底にあるテーマと向き合う。

褒める会のNo.2会員・黒坂由美役のコハルは「台本を読んで何箇所かグッときて泣きそうになった場面があって。そういうシーンがあることで、逆にバカバカしさが際立ったら面白いなと思っています」と、コメディ劇団出身者ならでは見解を示す。また、褒める会唯一の男性会員・桜川洋一役の松崎は「改めて考えてみると、二十代までって褒められることが多かった気がするんですけど、30歳を過ぎるとどんどん少なくなっていくと思うんですね。『永遠とかではないのだけれど』は、人を褒める行為や言葉が持つ意味について、再度考えるきっかけになる作品になるのではないかと思っています」と見どころを語った。

製作委員会 第12回公演「永遠とかではないのだけれど」ビジュアル

人生はポーカー

酸いも甘いもかみ分けた、ミドルエイジならではの魅力を再発見すべく、作品を制作し続けてきた小谷。「バイトでずっとポーカーディーラーをやっているのですが、人生ってポーカーみたいところがあると思うんです。何が出るかわからないからこそ楽しいというか、最後の1枚で逆転勝利することも大いにあり得るというか。未来が見えなかったり、やれる役、やりたい役がなくなったりして俳優を辞めてしまう二十代の人たちもいると思うのですが、製作委員会のように、三十代以上の活躍の場を模索している団体もあるんです。いくつになっても舞台に立ち続けている人がいるということを知って、今後の人生に少しでも希望を持ってもらえたらと思います」と、演劇界の未来を担う若者たちに、小谷は笑顔で呼びかけた。

左から木村もえ、コハル、小谷陽子、西山雅之、松崎眞二