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労働保険の電子申請 メリット多く簡単、今年こそ利用開始を

提供:厚生労働省

最終更新:

TOMA社会保険労務士法人の坂本彩氏

今年度の労働保険の年度更新期間は、6月1日(水)から7月11日(月)。政府全体で行政手続コストを削減する取組の一環として、2020年4月から資本金1億円以上などの特定の法人では、労働保険・社会保険に関する一部の手続を行う場合には、電子申請が義務化されている。しかし、義務化の要件に該当しない事業場では、まだ従来の紙の書類による手続が多いのが現状だ。

電子申請を利用するメリットや、申請に必要な準備、方法について、特定社会保険労務士の坂本彩氏(TOMA社会保険労務士法人)に聞いた。まだ電子申請に取り組んでいない企業の経営者、総務担当者の読者には、ぜひ参考にしていただきたい。

入力漏れ防止、自動計算など電子申請はメリット多数

――電子申請に取り組むのにハードルを感じる。中小企業だから、まだ紙の手続で大丈夫?

 現在、労働保険・社会保険に関する一部手続の電子申請が義務化されているのは、資本金1億円を超える、いわゆる大企業です(資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金が1億円を超える法人など)。
 これまで、行政での手続は書面による対面といったアナログな手段が中心でしたが、現在は、行政手続のオンライン利用の促進が政府全体の重要な課題となっており、電子申請が推進されています。加えて、新型コロナウイルス感染症の流行によって、書面を用いた対面でのやり取りの見直しが社会的に進んでいるのは、みなさんご存知のところです。
 現在はまだ義務化に該当しない中小企業にも、電子申請への移行が促され、いずれは義務化されることも予測されます。今年度の年度更新申告手続については、中小企業は紙の手続でも電子申請でもどちらも可能ですが、将来を見据えて電子申請を始めるよい機会だともいえます。
 当法人にご相談いただく企業の方々からも、電子申請を始めるのに手間を感じてなかなか踏み出せないというお声が多数届いています。日々ご多忙のなか新しい取り組みを行うことにハードルを感じられるのは当然のことなのですが、「いつかは必ずしなくちゃいけないこと、かもしれませんよ」とお声がけしています。

――紙の手続でも不便は感じていない。電子申請のメリットって?

 電子申請ではフォームに必要事項を入力するので、入力漏れがあった場合申請する前の段階でその旨が示されます。
 例えば、企業概要や財務情報など過去の申請などで入力した情報は自動転記されて入力の手間が省けるのも、電子申請ならではですね。
 また、フォームには計算機能が備わっていて、給料を入力すれば保険料が自動で算出されます。電卓をはじいて計算する必要がなく、計算間違いのリスクを減らせます。
 本社と支社間など、申請までに遠隔地での確認が必要な場合も、電子申請が便利です。後ほどご説明するgBizIDプライムは複数メンバーで登録し、同じデータを閲覧・編集できるので、本社や支社間で書類を郵送する必要なくWeb上で内容の確認が行えます。
 フォームの種類によっては書面とほぼ同じフォーマットのものがあり、毎年申請されている方であれば戸惑うことも少ないのではと思います。なかには、質問形式になっていて回答していくと申請内容の入力が完成しているというものもあり、より簡便になっているともいえます。
 24時間申請できるので閉庁時間中でも申請が可能ですし、書類の印刷や提出のための費用的、時間的コストの削減にもつながります。
 難しい操作は必要なく、非常にわかりやすく簡単ですので、初めての方でも約1時間あれば入力から申請まで行えると思います。

事前のgBizIDプライム登録でスムーズに申請可能

――電子申請するには、どんな準備が必要?

 労働保険の電子申請をするには、事前に電子証明書の取得が必要ですが、無料で取得可能なGビズIDを利用して手続もできますので(一部手続を除く)、まずはGビズIDに登録することをおすすめします。GビズID には3種類のアカウントがあるのですが、そのうちgBizIDプライムに登録してください。
 gBizIDプライムは、複数の行政サービスにアクセスできるアカウントで、登録自体は無料です。一度登録すれば、有効期限や更新はありません。
 労働保険の手続のほかに、経済産業省による補助金の申請など各省庁、地方自治体の行政サービスにも利用できるので、まだの場合はとりあえず登録しておくのがよいでしょう。
 gBizIDプライムに登録するには、法人代表者や個人事業主であることを証明する必要があるので、登録申請書に加えて印鑑証明書の郵送が求められます。申請から約2週間でアカウントの利用が可能となるので、年度更新の申告期限ぎりぎりにならないように注意してください。

――gBizIDプライムアカウントでの電子申請の方法は?

 労働保険に関する電子申請は、e-Gov(イーガブ)で行います。
e-Govのサイトにアクセスし、「電子申請」のボタンをクリック。「利用準備」の項目を参考にe-Gov電子申請アプリケーションをインストールしてください。
 アプリケーションをインストールしたら、ログイン画面下部にある「GビズIDでログイン」ボタンからgBizIDプライムのアカウントでログインします。ログインすると、アカウント作成の際に登録したスマートフォンまたは携帯電話のショートメール(SMS)にワンタイムパスワードが届きます。パスワードを入力したら、ログイン完了です。
 あとは、「手続検索」ボタンをクリックし、「労働保険年度更新申告」など手続きしたい項目を検索のうえ、フォームの入力などを行います。

5月中旬には登録作業を

――初期設定が不安なとき、困ったときはどうしたらいい?

 電子申請の初期設定が不安な場合、厚生労働省の電子申請未利用事業場アドバイザー事業の利用をご検討ください。アドバイザーが実際に企業など事業場を訪問等することで、初期設定をお手伝いします。
 または、フォームやお電話でe-Gov利用者サポートデスクにお問い合わせいただくことも可能です。パソコンの環境設定や申請前までの操作方法について相談することができます。

――労働保険の電子申請、いつ頃から準備を始めるべき?

 今年度の労働保険の年度更新期間は6月1日(水)からですので、それまでにgBizIDプライムの登録をしておきたいところです。ご説明した通り、登録には約2週間かかるので、5月中旬には登録作業を開始することをおすすめします。
 中小企業においては今年度はまだ紙の手続でも可能ですが、さまざまな手続のデジタル化が進む今、5年後10年後にはすべての法人に電子申請が求められる可能性もあります。どうせするなら今年しておく!のつもりで、ぜひ電子申請をご検討ください。