「円安」「物価高」は
これからどうなる?
価格
方法
分かりやすく
保険
理由・原因
インフレ
上がらない
いつ
制度
いつ
集計期間:2022年6月(Yahoo!検索)
オレンジの円のワード:「円安」「物価上昇」「電気料金」「ガソリン価格」「消費税」といった主要テーマ
白い円のワード:主要テーマと一緒に検索されたワード(類似意図は合算)
白い円の大きさ:検索ボリューム
専門家が解説
6月前半に
「円安」の検索が急増
有権者は賢い。「物価上昇」を主体的に捉えています。6月前半に急増した検索ワードは「円安」でした。輸入物価を押し上げ、ガソリンや電気代を高騰させる“犯人”です。多くの人は、えたいの知れない円安の理由を探り、いつまで続きそうかに強い関心を示しました。
しかし、特に野党は経済分野が不得意で、有権者の心をつかむ政策提案ができずにいます。多くの野党が掲げた消費税減税も、選挙期間中の検索数は伸びませんでした。有権者は、本当に野党が消費税を下げられるとは思っていなかったのでしょう。政治が、有権者の不満に応えられない姿がもどかしく見えます。
打つ手なく難しい
経済運営
円安は参院選後もいちだんと進みました。年内に1ドル145円まで行きそうです。米国の物価の上昇は勢いを増し、年後半の大幅利上げはほぼ間違いありません。ユーロ売り圧力も円安に飛び火しています。
そうなると、政府は打つ手がありません。為替介入も長期金利の引き上げを日銀に促すのも難しい状況です。岸田首相が選挙後に打ち出した物価対策は十分ではなく、困難な経済運営を強いられることになるでしょう。
くまの・ひでお
第一生命経済研究所主席エコノミスト。1990年横浜国立大学経済学部卒、日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年に第一生命経済研究所入社、2011年より現職。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事を兼任。
対ドル円相場と
消費者物価指数(全国)の推移
出典:日銀(東京市場 午後5時時点)、総務省(2020年基準、生鮮食品を除く総合指数)
物価上昇の原因の一つはロシアによるウクライナ侵攻。原油や原材料、穀物などの価格が高騰し、物流の不安定化につながっている。
さらに急速に進行する円安によって輸入品が値上がりし、物価高に追い打ちをかけている。円安の背景にあるのは日米の金利差。米FRB(連邦準備制度理事会)はインフレ対策として利上げを進めているが、日銀は大規模な金融緩和を継続する姿勢を示している。
「防衛費」増額議論は
これからどうなる?
集計期間:2022年6月(Yahoo!検索)
青いの円のワード:「ウクライナ」「NATO」「防衛費」「自衛隊」「核兵器」「北朝鮮」といった主要テーマ
白い円のワード:主要テーマと一緒に検索されたワード(類似意図は合算)
白い円の大きさ:検索ボリューム
専門家が解説
安全保障に関心が集まった異例の選挙
外交・安全保障に高い関心が集まった異例の国政選挙でした。ウクライナ情勢への高い関心が継続し、6月下旬のG7サミットやNATO(北大西洋条約機構)首脳会議、北朝鮮の核実験をめぐる動向にも注目が集まりました。
北朝鮮など日本周辺の安全保障環境を脅かしかねない事象への関心は、ウクライナ侵攻のさなかで「より近くの脅威」に関心が集まったということかもしれません。
「入り口」で終わった議論
自民党が防衛費のGDP(国内総生産)比2%目標を明記するなど、多くの政党の選挙公約で取り上げた「防衛費」も検索されました。
しかし、こうした安全保障の議論は「入り口」で終わっています。2%以上に増額するにしても現状は「数字ありき」であり、「何が必要か」とセットで議論する必要があります。具体的には、ミサイル防衛、長射程反撃能力、次世代戦闘機などの正面装備、次世代技術開発などが焦点です。年末に改定する国家安全保障戦略などに向けて、外交・安保政策の選択肢を分かりやすく示す議論が重要となるでしょう。
じんぼ・けん
慶應義塾大学総合政策学部教授。国際文化会館常務理事。『ウクライナ危機で世界はどう変わるのか』(ディスカバー21)を連載中。
防衛予算の推移と
「GDP比2%」イメージ
出典:防衛省
日本の歴代政権は、防衛費をGDP比で1%をめどに収めてきたが、自民党の安全保障調査会が4月に「2%以上」を念頭に「5年以内に必要な予算水準の達成」を目指すよう政府に提言した。NATOが掲げる「GDP比2%以上」目標を踏まえたものだ。
政府は「骨太の方針」に防衛力を5年以内に抜本的に強化する方針を盛り込み、自民党は参院選の公約でGDP比2%以上も念頭に防衛費を積み上げると明記した。
参院選1年前から関心は
どう推移したのか?
参院選の1年前から投開票前日までの間、Yahoo!検索ではどんなワードが注目を集めたのか。1年間のワードごとの検索数の推移や、選挙直前の約1カ月間の動き、政党関心層の政策別の注目度、政党名の検索数別に見ていく。
- 経済・財政保障
- 外交・安全保障
- その他
- コロナ
・集計期間:2021年6月〜2022年5月(Yahoo!検索)
・円の大きさ:検索ボリューム
・円の中のワード:関連するテーマの検索ワードを合算
コロナ関連ワードが席巻
参院選1年前の2021年夏は、「コロナ」関連のワードが突出して多かった。「デルタ」株の感染が広がる中、7月には4回目の「緊急事態宣言」が出され、東京五輪は多くが無観客で実施された。この時期、政府は「ワクチン」接種を加速させた。
コロナ収束と物価高の兆し
秋になるとコロナは収束し始め、検索量も落ち着きを見せる。10月に行われた衆院選では、コロナ対策や経済再生などが争点になった。自民党などが「防衛費」の引き上げを掲げたが、検索量に大きな変化はなかった。「物価上昇」「インフレ」などのワードが増え始めた。
再びのコロナとウクライナ侵攻
しかし年が明けた2022年1月。「オミクロン」株による第6波が始まり、再びコロナ関連が急増した。2月には「ロシア」による「ウクライナ」侵攻が勃発。背景を知りたいニーズが高まったとみられ、「プーチン」「NATO」といったワードとともに急激に検索量が増えた。
ウクライナ関連ワードが
跳ね上がる
ウクライナとロシアの戦闘は激化し、3月には関連ワードの多くがこの1年でもっとも多く検索された。これらは戦闘の長期化につれて検索数が減ったが、「防衛費」は少ないながらも増え続けた。さらに「円安」が進行し「物価上昇」も深刻化。これらのワードが急増し、「電気代」「日銀」なども検索された。
選挙直前はどんなワードが
検索されたのか?
争点別注目度の日別推移
(2022年)6月1日〜7月9日
選挙期間を含む6月1日から7月9日までの間で、検索ワードの動きを日別で追った。
経済・財政政策
集計期間:2022年6月1日〜7月9日(Yahoo!検索)
参院選の公約で、各党は円安・物価高対策を掲げた。検索ワードの推移を見ると、「円安」と「電気代」の動きが目立つ。月後半には電力需給ひっ迫注意報を受けて「節電」も増加した。「消費税」は野党が減税や廃止を訴えたが、公示後も大きな変化はなかった。
外交・安全保障
集計期間:2022年6月1日〜7月9日(Yahoo!検索)
同じく争点の一つとなった外交・安全保障では、岸田首相の欧州外遊がニュースになった「G7」や「NATO」が急増した。月前半にはミサイル発射をした「北朝鮮」の検索数が跳ね上がった。一方、安全保障政策に直接的に関連する「反撃能力」や「専守防衛」などの検索ボリューム自体は大きくはなかった。
各政党の関心層は
どの政策テーマに
関心が
あったのか?
まずは選挙結果をおさらい
※時事通信の情報を基にYahoo!ニュースが制作
自民が大勝、
改憲勢力が3分の2を維持
今回の参院選では、自民党が63議席を獲得し、今回争われた125議席(欠員補充含む)の過半数を確保した。また、自民・公明の与党と憲法改正に前向きな日本維新の会、国民民主党の4党で、改憲発議に必要な総議員の3分の2(166議席)以上を維持した。主要政党で議席を伸ばしたのは自民と維新。れいわ新選組とNHK党も議席を増やし、2年前に設立された参政党も初議席を獲得した。
各政党への「関心層」が
注目した政策ワード
個別の政党名について検索した人をその政党への「関心層」と見なし、経済・財政と外交・安全保障について、政策に関するワードへの注目度をうかがった。政策ワードは、選挙で大きな争点となったものを3つずつピックアップした。
集計期間:2022年6月1日〜7月9日(Yahoo!検索)
政党別の関心層を基に作成
経済・財政では、ほとんどの政党の関心層で「円安」の注目度がトップだった。「物価上昇・インフレ」については、自民党、立憲民主党、社民党の関心層の注目度が目立った。社民党の関心層では「電気料金」が最も多く、「円安」は3位だった。「消費税」に関して注目度の高さが最も見られたのが、消費税廃止を訴えていたれいわ新選組の関心層だった。自民党、社民党の関心層でも高めの傾向を示したが、立憲民主党などの関心層ではそれほど高くないようだった。
集計期間:2022年6月1日〜7月9日(Yahoo!検索)
政党別の関心層を基に作成
外交・安全保障に対して、突出して注目していたのは、共産党、社民党の関心層だった。両党の関心層がこの分野を重視していたとみられる。政策ワードとしては、すべての主要政党の関心層で「ウクライナ」がトップ。「自衛隊」については、自民党、共産党、社民党の関心層で、他の政党の関心層よりも高い傾向を示した。「憲法9条」に対しては、護憲政党の共産党、社民党の関心層で高く、この両党の関心層では「北朝鮮」というワードの検索も多く見られた。
政党名検索
「参政党」と「ごぼうの党」が突出
政党名別の検索数では、新しく議席を獲得した「参政党」と、突如として現れた「ごぼうの党」が主要な既成政党をはるかに上回った。
集計期間:2022年6月1日〜7月9日(Yahoo!検索)
政党別の関心層を基に作成
「参政党」と「ごぼうの党」は、6月22日の公示日に急激に伸び、「参政党」は7月10日の投票日直前まで高い関心を保った。投票日直前は各党とも検索数が伸びたが、7月8日に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の所属する「自民党」の伸びが特に高かった。
人々の関心と
政治の訴えにズレ
人々のある物事への関心の程度は世論調査で調べることができますが、それは一時点の状態にすぎません。対して「検索」という個々人の関心が高まった瞬間の痕跡を集計すれば、在来のやり方では捉えることができなかった社会の関心の「動き」を可視化できます。
もちろん、検索数が投票に直結するわけではありません。関心は人々の投票を直接左右するわけではないからです。しかし今の政治は、人々の関心を汲むことを苦手としています。社会と政治をつなぐ手掛かりは多いに越したことはないでしょう。
選挙までの関心事の浮き沈み、前回選挙時との関心項目の違い、人々の関心事と政党、政治家の訴えとのズレ……。こうした変化やギャップも、データとして観測してこそ把握できるものです。今回の企画でも、参院選で多くの野党が横並びで訴えた消費税減税は、人々の関心を動かさなかったことが見て取れます。
監修者としては、ますます捉えにくくなっている世論を探るための一つの方法として、今後の活用にも期待したいと思います。
すがわら・たく
政治学者。専門は政治過程論。戦後の衆参両院議員の国会での活動履歴や発言を一覧にしたウェブサイト「国会議員白書」を運営。著書に『データ分析読解の技術』、『世論の曲解』など。
監修者コメント